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Self-Leadership。先ず隗より始めよ

📖 文献情報 と 抄録和訳

すべての理学療法士に必要なセルフリーダーシップ

📕Green-Wilson, Jennifer, et al. "Self-Leadership Is Critical for All Physical Therapists." Physical Therapy 102.6 (2022): pzac029. https://doi.org/10.1093/ptj/pzac029
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> not applicable
✅ Self-Leadershipとは何か?
- セルフリーダーシップとは、目標に対する思考、感情、行動に意図的に影響を与える実践(📗Bryant and Kazan 2012 >>> amazon.)
- チャールズ・マンツは、1983年に「自己リーダーシップ」という用語を最初に使用し、それを次のように定義した。「自分を導くことに関する包括的な自己影響の視点」
- セルフリーダーになることは、自分の人生の最高経営責任者、キャプテン、またはCEOを務めることである(ピーター・ドラッカー)
- 他人をマスターすることは強さです。自分自身をマスターすることは真の力です。(老子)

[レビュー概要]
- 臨床実践のあらゆるレベルでリーダーシップスキルを開発する明確な必要性を支持する証拠が広まっているが、医療、特に理学療法における「セルフリーダーシップ」の意図的な開発は、依然として遅く、断片的で、一貫性に欠ける。リーダーシップの定義の明確化と標準化、および医療従事者のリーダーシップ能力開発へのアプローチについては、いくつかの重要なジレンマが生じ、議論が続いている。

- さらに、リーダーシップ能力の開発は、地域社会、医療組織、診療所、またはチーム内で「リーダー」としての位置づけまたは正式な役割を担う理学療法士だけのものであるという誤解が残っている。この誤解により、リーダーシップの開発は「自己を導く」よりも「他者を導く」ことに焦点が当てられる。同様に、理学療法士が個人として、またチームとして、あらゆるレベルのケアやコミュニティ内で実践し、関与する際に、立場的役割としてのリーダーのリーダーシップ開発ニーズと「導く」行為のバランスをとることが課題として存在する。この緊張は、理学療法士が臨床実践においてこの必須スキルを満たすために、いつ、どのように準備するのが最善かをさらに複雑にしている。

- この視点の目的は、非位置的セルフリーダーシップと理学療法実践におけるその重要性を説明し、一般的または現代的なリーダーシップ関連の用語を提案し、リーダーシップ開発のためのフレームワークを提案することである。これらの目的を達成することで、読者は推奨事項を変更し、採用するよう促されるかもしれない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

経験年数を重ねると、自然、人に影響を及ぼすべき立場に近づく。
そのとき、ふと気づくのだ。
「あれ、どうやって人に良い影響を及ぼせばいいのだろう・・・」と。
そして、そのとき頭に浮かぶ選択肢は、先輩にそうされてきた「影響の及ぼし方」のみ。
その多くが、他者の実践に対する働きかけや要求、だ。
それをもって、僕たちは「リーダーシップ」とイメージしたりする。

だが、今回の論文はリーダーシップには、「自己」に関わるリーダーシップ(Self-Leadership)「他者」に関わるリーダーシップがあると述べ、その両者に緊張が生まれているという。
整理すると、4象限に分かれると思う。

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4象限のうち、もっとも陥りやすいのはどれか。
『批評家タイプ』である。
このタイプのリーダーは、圧倒的に部下からの信頼を得にくい。
そんなことは、誰でもわかっているのに、なぜ、そうなってしまうのか。
自己実践は、「労力」であり「面倒臭い」からである。
そのため、自身の成長や自己実現には疎い場合、必ずこのタイプになるだろうと思う。
繰り返すが、自己実践は、「労力」であり「面倒臭い」から。
人間は、なるべくコストを減らすように動く。

では、4象限のうち、もっとも自己を変え、チームを変えるのはどれか。
予想を裏切る答えだと思うが、ぼくは、『職人タイプ』だと思っている。
口で語らず、背中で語るタイプ。
一見、どちらでも語る人間が、真のリーダーになれそうな感じがする。
だが、おそらく、違うのだ。
どうしてそう思うかというと、「そういう現実を実際に見た」から。
ぼくは高校野球部のトレーナーをしていて、たくさんのキャプテンが導く、たくさんのチームをみてきた。
その中で、もっともチームが良くなったのが、『職人タイプ』のキャプテン率いるチームだった。
彼は、本当に無口。「大丈夫かな、彼で」と当初、思っていた。
だが、彼は誰よりも練習に真摯に取り組んだ、一生懸命バットを振った、全力で走った、集中を切らさなかった。
しばらく経つと、チームメイトみんなが、彼のようになった。
みていて、不思議だった。

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そこから、仕組みを考えた。
『善い選択肢(善択肢)』を与えることだ、そう思った。
すなわち、考察の冒頭で述べたように、人間の行動は「頭に浮かんだ選択肢の中から1つを選択する」というものだとする。
その前提に立つとき、全然勉強していない人間(A君)がいた場合、その人間には「勉強する」という選択肢がないか、小さいと思われる。
それに対して、「ある1人の人間がめっちゃ勉強している姿」をA君が目の当たりにして、かつ、その姿が輝いて見えたとする。
そのとき、A君の頭の中に、「勉強する」という選択肢が生まれる。
繰り返し、そのような経験をすることで、次第に「勉強する」という善い選択肢の存在が大きくなっていく。
結果、A君は「勉強する」行動を選択するようになる。
1人の人間が、他者に影響を与える仕組みとは、こういうものではないだろうか。

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極論、チームは良くしようとする対象ではなくて、
構成員各々の自己選択によって勝手に良くなる観察の対象ではないか。
そこに対して1人ができることは、自分自身がロールモデルとなる、良い選択肢の1つを与えるということがすべて、のような気がしている。
矛盾するようだが、圧倒的な「自己実践」が、良いチームを生む効果的な手立てかもしれない。
山本五十六の、あの名言の冒頭に『やってみせ』がきていることに、強く共感した。
Self-Leadership、胸に刻もう。

世界を動かそうと思ったら、まず自分自身を動かせ
ソクラテス

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