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離床時間の目標。4時間以上:嚥下機能の維持、6時間以上:筋肉量の維持

📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者における嚥下機能維持のための離床時間

Ishii, Miki, et al. "Time Spent Away from Bed to Maintain Swallowing Function in Older Adults." Gerontology (2022): 1-10.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

🔑 Key points
- 65歳以上の要介護高齢者90例を対象に離床時間と全身の筋肉量および摂食嚥下機能の関係を検討する横断研究を実施。
- その結果、離床は摂食嚥下リハビリテーション(以下、リハビリ)として有効であり、4時間以上の離床では摂食嚥下機能が保たれ、さらに6時間以上で全身の筋肉量が保たれることが示された。
🌍参考サイト >>> site.

[背景・目的] 本研究の目的は、日常生活動作(ADL)の低い高齢者において、離床時間と全身の筋肉量および嚥下機能との関連性を明らかにすることであった。

[方法 ]本研究は、東京医科歯科大学において、居住地で医療介入を受けた65歳以上の成人を対象とした横断的研究である。年齢,性別,身長・体重,活動状況,病歴,離床時間,Functional Oral Intake Scale(FOIS)に関するデータを収集した。体格指数,Charlson Comorbidity Index,全身筋肉量,Appendicular Skletal muscle mass index(ASMI),体幹筋肉量指数(TMI)を算出した.離床時間により、被験者を以下のようにグループ分けした。<4時間未満0時間以上(S)、6時間未満4時間以上(M)、6時間以上(L)。これらの変数を一元配置分散分析、Kruskal-Wallis検定、χ2検定で分析し、3群間の差異を検討した。交絡因子を調整するため,ASMIとTMIを従属変数とした重回帰分析,FOISを目的変数とした順序ロジスティック回帰分析を行った。

[結果] 90名の被験者(男性:n=42、女性:n=48、平均年齢=82.9±8.8歳、S群:n=23、M群:n=30、L群:n=37)が解析された。交絡因子を調整した結果,ASMIの有意な説明因子は,性別,活動状況,離床時間,TMIであった.TMIの要因は、活動状態、離床時間、ASMI、FOISであった。FOISの要因は、離床時間、TMIであった。ベッドを離れて過ごす時間が4時間以上であることは、付属骨格筋量およびFOISに関連し、6時間以上であることは、付属骨格筋量、体幹筋量およびFOISに関連した。

[結論] これらの結果から、嚥下機能維持のための運動が困難なADLが低い高齢者の日常生活において、嚥下機能の低下を防ぐことができる要因が明らかになった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

なるべく起きてましょう。
寝ていると筋力がどんどん落ちてしまいますから。

入院中の高齢者に対して、セラピストや看護師は必ずと言っていいほど、以上のような話を患者にしている。
だが、上記の話には、あるものが欠落している。
それは、『SMART』。

✅ 優れた目標設定を可能にするフレームワーク『SMART』
- 言わずと知れた目標設定フレームワークの鉄板である
- SMARTは、プロジェクトマネジメント、従業員の業績管理、能力開発などの領域における目標設定の基準を示す頭字語(アクロニム)である。
- ビジネスシーンでは、KPIなどの目標を効果的に設定する方法を示したフレームワークとして使われる。
- 通常、SはSpecific(具体的)、MはMeasurable(測定可能)を意味する。AはAchievableまたはAttainable(達成可能)、RはRelevant(関連性のある)、TはTime-bound(期限のある)を意味することが多い。
● 原典:Doran, G. T. (1981). Management Review 70 (11): 35–36. >>> site.

すなわち、その「起きてましょうね」には具体性、測定可能の要素が欠落しており、それがゆえに達成可能かどうかが不明となっている。
今回の研究は、そのような優れない目標となりやすい身体活動量の助言に具体性を与えるものとなりそうだ。

日中は、6時間以上起きるようにしましょう。
そうすることで、筋肉量が保たれます。
また、加齢とともに落ちやすい嚥下機能も保たれます。
目標は、各食事時間で1時間ずつは起きていますので、それに加えて午前中2時間、午後2時間は起きましょう。
(患者と共同でつくった)目標スケジュール用紙をベッドサイドに貼っておきますね。

入院時の病院生活における推奨事項の1つとして、組み入れることが推奨される(説明用シートを作ってみた✨)。

【Gerontology】Ishii, 2022:高齢者における嚥下機能維持のための離床時間_実践シート

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