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関節唇の解剖学。血管面積と前駆細胞の分布

📖 文献情報 と 抄録和訳

ヒト関節窩における再生特性の組織学的解析

📕Hoang, Le Q., et al. "Histological Analysis of Regenerative Properties in Human Glenoid Labral Regions." The American Journal of Sports Medicine (2023): 03635465231171680. https://doi.org/10.1177/03635465231171680
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[背景・目的] ヒトの関節唇の治癒能力は断裂部位によって異なる。現在のところ、半月板や軟骨損傷の治癒能は、細胞組成と血管性に関連することが示唆されている。しかし、関節唇の組織学的特徴や、それらが特定の解剖学的領域における治癒能にどのように影響するかについては、ほとんど知られていない。
●仮説:関節唇の再生特性は解剖学的部位によって異なる。

[方法] 研究デザイン:記述的実験室研究。新鮮で保存されていない屍体から採取したヒトの関節唇を、解剖学的に異なる部位で横断切開した。マッソン・トリクローム染色を用いて、細胞外マトリックスの密な部分と緩い部分、および血管の密度を測定した。ヘマトキシリン・エオジン染色、Ki-67+染色、CD90+/CD105+染色を行い、それぞれ全細胞密度、増殖細胞密度、前駆細胞密度を決定した。回帰モデルにより、血管面積、前駆細胞量、手術成功確率の関係が示された。

[結果] すべての臼蓋側面の中で、上関節唇は細胞外マトリックスまたは無血管組織が密集している割合が最も高かった(56.8%±6.9%)(P < 0.1)。上側臼蓋の血管領域は、総細胞数(321±135cells/mm2;P < 0.01)と前駆細胞数(20±4cells/mm2;P < 0.001)が最も少なかった。血管面積は前駆細胞の量と直接相関していた(P = 0.006002)。手術成功確率の増加は血管面積の直線的増加(R2 = 0.765)と前駆細胞量の指数関数的増加(R2 = 0.795)と関連していた。続いて、相対的な治癒可能性を評価するために、関節唇時計周囲の血管量と前駆細胞量の2次モデルが用いられた。関節唇時計周りの血管面積の割合(P = 6.35e-07)と前駆細胞密度の重み付け(P = 3.03e-05)の二次モデルでは、関節唇組織が下面に近づくにつれて血管面積の割合と前駆細胞量が増加し、上面に近づくにつれて減少することが示された。

📕 図の引用文献
Modarresi et al. "Superior labral anteroposterior lesions of the shoulder: part 1, anatomy and anatomic variants." American Journal of Roentgenology 197.3 (2011): 596-603. >>> doi.

[結論] 関節唇の解剖学的領域は、細胞外マトリックス組成、脈管性、細胞組成が異なる。上側の関節唇は血管と前駆細胞が不足しており、この部位での修復の失敗率が高いのはこのためかもしれない。臨床的意義異なる位置にある関節唇の構成について理解を深めることは、関節唇病変に対する治療戦略の改善に役立つであろう。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

血流というのは、『治癒可能性』を考える上でとても重要だ。
それが途絶えてしまっては、水が与えられない植物のように、自然に朽ちてしまう。
その点で、大腿骨頸部内側骨折におけるGarden分類はその後の治療方針にとって大変重要なものだ。
その分類は、大腿骨頭への残存血流と関連するものだから。

だからこそ、あらゆる組織において、血流特性を把握しておくことが大切だ。

🔹 血流が保たれている→自然治癒が望める
🔸 血流が途絶えている→自然治癒が見込めない

今回、肩関節の関節唇において血管面積と前駆細胞の分布が、とても見やすい図とともに示された。
これによれば、SLAP lesionとして知られる上方関節唇は血管面積、前駆細胞分布ともに不足していた。
すなわち、一旦傷害を受けた場合に自然治癒を見込める可能性が低い箇所ということ。
関節唇における急所なわけで、そりゃ傷害やオペ適応も多くなるわけだと感じた。

力学的負荷が高まりやすい、という外的要因だけではなく、治癒可能性がどうか、という内的要因にも思いを馳せたい。

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