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Dogeza(土下座):下肢血流はどうなってる?

▼ 文献情報 と 抄録和訳

土下座によるふくらはぎの虚血:一見健康なヨーロッパの若者を対象とした試験的研究

Ramondou, Pierre, et al. "Kneeling-induced calf ischemia: a pilot study in apparently healthy European young subjects." European Journal of Applied Physiology 121.11 (2021): 3031-3040.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 多くの作業、スポーツ、レジャー活動では、膝を最大限に屈曲させる必要がある。我々は、ヨーロッパの若い被験者において、この姿勢がふくらはぎの血流低下につながるのではないかという仮説を立てた。

[方法] 経皮的酸素圧(TcpO2)センサーを用いて、膝の屈伸によるふくらはぎの虚血を定量化し、TcpO2の安静時からの低下(DROP)を、四肢の変化から胸部の変化を引いた値で評価した。DROPmが15mmHg以下であれば、虚血の存在を示す。参加者は這い上がった状態から、伏臥位/礼拝位(P)のように体を曲げながら3分間膝をついた。35名の参加者はこの動作を2回目に繰り返し、7名の参加者は胴体を垂直にした状態で踵をつけて座り、鼠径部を大きく曲げることなく膝を曲げることも要求された(S)

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✅ 図. 安静時、「P」ポジション、「S」ポジションでのプロトコルの模式図。右下は、患者が「P」の位置にいるときのプローブの位置に焦点を当てたもの。

[結果] 25 [20-31]歳の健康な若いボランティア41名(男性30名)において、37名が片方(n=4)または両方(n=33)のふくらはぎで「R」から「P」へのDROPm<-15mmHgを示した(90.2%;95%CI 76.9-97.3)。DROPmを後方回帰した結果、脇腹、体重、収縮期血圧との有意な関連はなかった。しかし、年齢はDROPmと強く関連しており(OR 5.34 [2.45-8.69])、DROPmは年齢が高いほど有意に高く、相関ρ=0.31(p=0.003)となった。

[結論] 膝をついていると、ふくらはぎの血流が劇的に低下する。これは、膝窩動脈の屈曲によるものと思われるが、筋肉の圧迫によるものかもしれない。東洋のライフスタイルでは、子供の頃から日常的に屈伸運動が行われている。このような慢性的なトレーニングが、大人になってからの膝関節誘発性虚血のリスクを低減するかどうかは、これまでのところ不明である。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

面白いのは、この研究を行っているのが日本人ではないということだ。
そして、なぜ土下座?、正座だけでよくない?、土下座は長時間やらないしと思った。

退院支援において、「正座をするか?」は、しばしば槍玉に上がる課題だ。
その中で問題となりやすいのは、膝関節屈曲の関節可動域制限、であり、血流に着眼している人は少ないのではないか。
しかし、よく考えれば血流が長時間の正座による「足の痺れ」を規定しているかも知れず、それが転倒リスクにつながる可能性は大いに考えられる。
すなわち、関節可動域制限は「正座ができる or できない」を、下肢血流は「良い正座 or 危険な正座」を規定しているかも知れない。

次のリサーチクエッションとして、以下のようなものが考えられた。

✅ Next Research Questions
- 正座を常用している人 vs. 常用していない人で、下肢血流はどう異なる?
- 長時間の正座後の下肢血流量の低下度合いと足の痺れ、立位バランス・歩行能力の関連性は?

これらの研究は、日本人が担いたい。
相撲で海外に負けるわけにはいかないように、正座・土下座の研究で欧米にリードされているわけにはいかない。

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