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高齢ドライバーのリスク層別化ツール


📖 文献情報 と 抄録和訳

Candrive-高齢ドライバーのリスク層別化ツールの開発

📕Marshall, Shawn, et al. "Candrive—Development of a Risk Stratification Tool for Older Drivers." The Journals of Gerontology: Series A (2023): glad044. https://doi.org/10.1093/gerona/glad044
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[背景・目的] 高齢者の運転適性を評価することは、臨床的意思決定の重要な部分である。しかし、既存のリスク予測ツールの多くは二項対立型のデザインしか有しておらず、複雑な病状を有する患者のリスク状態の微妙な違いや経時的な変化を考慮していない。我々の目的は、高齢者の運転適性をスクリーニングするための高齢者運転リスク層別化ツール(risk stratification tool, RST)を開発することである。

[方法] 参加者はカナダ4州7施設の70歳以上の現役ドライバーであった。参加者は4ヵ月ごとに対面評価を受け、年に1回総合評価を受けた。参加者の車両は、車両および受動的全地球測位システム(Global Positioning System, GPS)データを提供するために計測された。主要評価項目は、警察が報告し、専門家が検証した、年間走行キロメートルあたりの過失衝突の補正値であった。予測変数には、身体的、認知的、健康評価指標が含まれた。

[結果] 2009年に開始された本研究には、合計928人の高齢ドライバーが登録された。登録時の平均年齢は76.2歳(標準偏差[SD]=4.8)で、62.1%が男性であった。平均参加期間は4.9年(SD=1.6)であった。導き出されたCandrive RSTには4つの予測因子が含まれていた。

✅ Candrive RSTに含まれた4つの予測因子
1. 道路標識の認識問題
2. MOCA:想起問題
3. MOCA:抽象問題
4. 歩行補助具(杖・歩行器)を使っているか?

4,483人年の運転年数のうち、74.8%が最低リスクカテゴリーに該当した。人年のうち2.9%のみが最高リスクカテゴリーに属し、そこでの過失衝突の相対リスクは最低リスクグループと比較して5.26(95%信頼区間=2.81-9.84)であった。

[結論] 高齢ドライバーの運転適性に不確実性をもたらす病状がある場合、Candrive RSTは、プライマリ・ヘルスケア・プロバイダーが運転について話を始めたり、さらなる評価を行う際に役立つ可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「運転できなくなったら、もう何もできないよ」
「なんとか運転ができるようにと思っているんだ」
「買い物に行くためには、運転できなきゃ」

入院患者さんに接していると、いかに車の運転というものが生活を構築する上で重要なものかを知る。
そして、特に脳血管疾患の方の運転再開が、いかに難しいかも同時に知ることになる。
エビデンスとしても、自分で車の運転ができるか否かは、IADL低下リスクに関わる重要な因子だ。

そんな中で、リハビリテーションに求められるのは、明確な運転再開可否についての評価、判断だと思う。
身体機能、動作能力については、僕たちが専門家の1人だ。
客観的な指標と、予後予測ツールに基づいて、明らかな判断を下していきたい。
今回の抄読論文は、まさにその部分をサポートしてくれる論文だ。

4つの予測因子から、過失衝突のリスク度を把握できる。
そして、その予測スコアが高いことは、確かに過失衝突リスクの増大と関わっていた。
ただし日本では、認知機能の評価にMoCAよりHDS-R、MMSEがメインで使われていることがネックかと思われる。
日本には、日本の高齢ドライバーのための予測ツールの開発が必要かもしれないと感じた。

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