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脳卒中後、運転できる? 時間が解決してくれるかも

📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中後の運転体力の回復。時間の問題か?

📕Schulz, Philipp, et al. "Recovery of driving fitness after stroke: A matter of time?." Journal of the American Geriatrics Society (2022). https://doi.org/10.1111/jgs.17681
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
🔑 Key points
- 運転に関連する認知、感覚、および運動機能が時間の経過とともに回復し、脳卒中後の運転休憩の適切性をサポートすることが示唆された
- ただし、障害のあるドライバーの割合は時間の経過とともに減少しているように見えるが、長い運転休止の後でも、関連する数の脳卒中生存者が路上運転評価に失敗しているまま。
- さらに、図(下記)は、おそらく脳卒中の重症度、病因、および局在の違いのために、同様の時間枠でさえ合格率に関する研究間のかなりの差異を示している。

[レター概要]

▶︎脳卒中後の運転を制限しうる2つの要因
- 脳卒中後、運転をやめた方がいい理由として①再発リスク、②身体機能としての運転能力不足がある。
- 再発リスク:再梗塞のリスクが高まるため、脳卒中後の運転の安全性は大幅に低下することがよくある。脳卒中後の3か月と6か月の時間間隔の後、再発性脳卒中の割合が大幅に減少するため、1人の医師は通常、それぞれ3か月または6か月の休憩をとることを推奨する。
- 身体機能としての運転能力不足:脳卒中によって引き起こされる機能障害のために、運転の安全性が低下する。
▶︎2011年のDavosらによるメタアナリシス
- 2011年、Devosらは、系統的レビューとメタアナリシスを発表した。
- この研究には、脳卒中後の患者の運転の適性を評価する路上研究が含まれていた。
- いくつかの研究で脳卒中生存者の46%が路上運転評価に合格していないことを示している。
- 運転に戻った人の13%だけが事前に正式な運転評価を受けていることを考えると、 これらの結果は、運転の適性が損なわれているにもかかわらず、あまりにも早く運転を再開する脳卒中生存者が多い可能性があることを示唆している。
- この論文では、運転休止期間の長さと路上運転性能との関係に関するデータは提示されていなかった。
📕 Devos H, et al. Screening for fitness to drive after stroke: a systematic review and meta-analysis. Neurology. 2011;76:747-756. >>> doi.
▶︎運転休止期間の長さと路上運転性能との関係
- 運転再開率と脳卒中発症からの時間との関係を再分析した。
- 17の研究が分析に含まれました。これらの研究の平均年齢は約60歳で、年齢範囲は16〜85歳。
- 研究ごとの合格率を計算し、それらを脳卒中発症と路上運転評価の間の月数と相関させた。
- 図は、脳卒中発症からの月数と、路上運転評価に確実に合格した脳卒中生存者の観察率との間に中程度の正の相関(ピアソン相関)を示す相関分析の結果を示している(r = 0.40、p = 0.11、n = 17)。研究の方法論的品質を管理した後、効果量はr p = 0.50(p = 0.05)に増加しました。
- 予想通り、これらの調査結果は、脳卒中の発症から路上での運転評価までの時間が長くなるにつれて、脳卒中生存者の路上通過率が高くなることを示唆している。

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✅ 図. 脳卒中発症から路上走行試験までの期間(月単位)と路上走行試験合格率との関係(n=17試験)。各点は1つの研究を表す。各研究について,筆頭著者,発表年,サンプルサイズ,Newcastle-Ottawa Scale(NOS)に基づく研究の質を表示した.点の大きさは研究の質の評価(NOS-Scores)を表し、点が大きいほど質が高いことを示している。NOSは3領域8項目で構成されている。総スコアは0点(最低品質)から9点(最高品質)。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

高齢者の移動にとって、運転は甚だ重要だ。
さらに、これは僕の居住環境にとって特に重要な点なのだが、群馬県は運転免許保有率が長らく首位なのだ。
東京など首都圏に在住の方には分かりにくいだろうが、群馬県において、徒歩で生活を何とかするというのは「武士になれ」ということに等しい。

そのため、脳卒中者のリハビリテーションにおいて、必ず槍玉に上がるのが「車の運転をどうするか?」である。
入院期間は、せいぜい3ヶ月とかそのくらいである。
今回の図を見ると、発症3ヶ月くらいというのは運転評価をパスした人の割合が低いタイムポイントだ。
「まあ、退院後、おいおいね。段々ですよ。」
このコミュニケーションは、逃げではなく、適切な話だったのだ。
今回の論文の情報を得て、図を見せながら、
「発症して1年くらいで車の運転を再開することが、運転技能や試験パスの点から見て、最も妥当とは思われます。それでも、早急に必要な場合には適性検査を受けることを検討していきましょう」
運転に関するコミュニケーションが、1段階グレードアップした❗️

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