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脳卒中患者の靴と足の問題


📖 文献情報 と 抄録和訳

地域在住の脳卒中患者における靴の特徴と足の問題:横断観察研究

📕Kunkel, Dorit, et al. "Footwear characteristics and foot problems in community dwelling people with stroke: a cross-sectional observational study." Disability and Rehabilitation (2022): 1-8. https://doi.org/10.1080/09638288.2022.2102679
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[背景・目的] これまでの研究のほとんどが一般高齢者を対象としていたため、地域住民の脳卒中患者の靴の特徴と足の問題を調査すること。

[方法] 軽度~中等度の脳卒中患者30名(男性9名、平均年齢68歳、発症からの平均月日67ヶ月)を対象に、足病医学で確立されている足(履物)と足首の評価を用いて、履物と足の問題を評価するセッションを1回行った。

✅ 靴の評価
【Process 1:ツールを用いた評価】

・Footwear Assessment Tool を用いて評価(📕Barton, 2009 >>> doi.)
・靴は「屋内用」または「屋外用」に分類され、靴の特徴によって「適切」または「不適切」に分類
・例❶. 適切な靴:小ぶりで襟が高く、踵が広く、ミッドソールが薄くしっかりしており、適切な固定・調整手段があり、質感のある滑りにくいアウターソールを備えていた
・例❷. 不適切な靴:足の骨隆起の周り、つま先のつぶれ、外反母趾など、足の側面で靴のフィット感が窮屈な場合は、幅が狭いか小さすぎると見なされた
【Process 2:3名の足病医による判断】
・靴の特徴に関する情報と写真を3名の足病医(評価する足病医と、評価に関与せず参加者と評価結果について盲検化された2名の足病医)が評価した。
・彼らは、適切な靴の特徴に関する既存のガイドライン(📕Vernon, 2007 >>> pdf.)に基づき、靴の適切性について判断を下した。

✅ 足の状態の評価
・評価❶:Gatesらが推奨している国際的なコンセンサスによる足部・足関節評価(IMFAA)の一部を構成するすべての指標を含めた(📕Gates, 2015 >>> site.)。IMFAAには、腫脹/圧痛関節の観察、足部および足関節の可動域評価、筋力、足の姿勢が含まれる。第1中足指節関節の足底面の感覚触覚感度は、10gの収縮式モノフィラメント(Bailey Instruments社、英国マンチェスター)を用いて評価した。フィラメントを10部位に屈曲するまで当て、現行の推奨事項に従い、2種類の強制選択プロトコルを用いて感度を測定した。
・評価❷:足の状態は、Manchester Foot Pain and Disability Index (MFPDI) を用いて評価した(📕Garrow, 2000 >>> doi.)。本研究では、参加者のスコアが1以上であれば、足の痛みを経験しているとみなして所見を示した。
・評価❸:足病学的評価については、用具の定義に従い、臨床医による評価中に追加で観察された事項を記載した。

[結果]
■ 靴の問題
・多くの参加者は室内ではスリッパを履き(n=17、57%)、屋外ではウォーキングシューズを履いていた(n=11、37%)。
・半数以上が屋内ではサポート力のない足に合わない靴を、屋外では47%が足に合わない靴を履いていた。

■ 足の問題
・参加者全員が足に問題を抱えており(平均6.5(3.1)、95%信頼区間:5.4-7.7)、片足でのかかと上げの障害(93%)、可動域の減少(77%)、感覚の低下(47%)、筋力の低下(43%)がみられた。
・足の痛み、外反母趾(ともに50%)、足のむくみ(40%)を持つ者も多かった。
・足の問題は、バランス感覚、活動性、地域社会への参加の低下と関連していた(すべてp<0.05)。
・転倒者(13/16人)は非転倒者(4/14人)よりも足の問題を報告する割合が高かった(p=0.029)。

[結論] 多くの地域在住脳卒中患者が足に合わない靴を履いており、全員が足の問題を抱えていた。足の問題は運動能力の低下に関連していた。脳卒中患者の屋内外での靴選びをサポートする、より効果的な方法を見つけることが必要である。

[臨床意義] 脳卒中患者は、サポート力のない足に合わない靴を履いていることが多く、足の問題を経験している。脳卒中のリハビリテーションにおいて、特に転倒予防やバランス能力、運動能力の向上を目的とした介入を行う際には、足の問題の評価と靴に関するアドバイスを考慮すべきである。適切な靴に関する情報を提供し、新しい靴を購入する際には、フィット感を確認するために足の計測を行うべきであると案内することが推奨される。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

これまでも、靴の種類や靴と足の問題についての文献抄読を複数してきた。

「で、実際にどのくらいの人が問題を抱えているんですか?」
という素朴な質問を、今回の抄読研究は明らかにしてくれた。
問題を抱えている人がいないならば、そもそも靴と足の問題に触れる意味も意義もないから。

その結果、大部分の地域在住の脳卒中患者が屋内でも屋外でも靴の問題、足の問題を抱えていることが明らかとなった。
足の評価がしっかりできること、そして適切なシューフィットの技術があること。
歩行を主戦場とする理学療法士にとっては、学習マストな領域かもしれない。

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