見出し画像

ミニマルシューズ:進化のミスマッチを解消する最強のシューズ

▼ 文献情報 と 抄録和訳

Stepping Back to Minimal Footwear: ライフスパンを超えたアプリケーション

Davis, Irene S., et al. "Stepping Back to Minimal Footwear: Applications Across the Lifespan." Exercise and Sport Sciences Reviews 49.4 (2021): 228-243.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ 前提知識
■ ミニマルシューズとは?:伝統的なランニングシューズに付属している余分な「物」を削ぎ落としたシンプルな靴のことです。ベアフット、ときにミニマリストシューズとも呼ばれるこれらの靴は、単純に天候や悪路から足を保護するだけの靴
■ 構造上の特徴:①踵とつま先の高低差がゼロ、②スタックハイト(靴底の厚み)が極限まで薄い、③前足部が広い、④軽量、⑤クッション素材などのサポートはほぼなし >>> 参考サイト(下記図もサイトから引用)

画像1

[背景・目的] ミニマルフットウェアは何万年も前から存在し、元々は足の裏を保護するためにデザインされました。しかし、過去50年の間に、ほとんどの靴はますますクッション性とサポート性を増してきました。ここでは、ミニマル・シューズが足に合っており、その結果、筋骨格系の傷害のリスクが低くなる可能性があるという証拠を検証する。

[レビュー概要;ミニマルシューズの強みを示すいくつかの図とエビデンス]

スクリーンショット 2021-10-11 4.41.48

✅ フットウェアの使用が走法に濃厚に関連している:ケニア人ランナーにおけるフットウェアの使用歴とフットストライクの角度との関係。フットウェアの使用量が減ると、ランナーはよりフォアフットストライクのパターンを取るようになる。
Lieberman, Daniel E., et al. PloS one10.7 (2015): e0131354. >>> doi

スクリーンショット 2021-10-11 4.44.53

✅ フォアフットストライカー(ミニマルシューズが促すことができる走法)の衝撃力はなだらか:リアフットストライカー(RFS)とフォアフットストライカー(FFS)のランニング時の垂直方向の地面反力の比較。フォアフットストライカーでは見られないリアフットストライカーの急激な衝撃力に注目。
Samaan, et al. Journal of Sport and Health Science 3.2 (2014): 143-151. >>> doi

スクリーンショット 2021-10-11 4.54.05

✅ ミニマルシューズを履いたフォアフットストライカーのみが負荷率低下:標準的な靴を履いた後足部ストライカー(RFS)(SRFS)、標準的な靴を履いた前足部ストライカー(FFS)(SFFS)、ミニマルシューズを履いたFFS(MFFS)の負荷率の比較。結果的に負荷率はミニマムシューズのFFSでのみ低くなる。
Rice, et al. Medicine and Science in Sports and Exercise (2016). >>> doi

スクリーンショット 2021-10-11 4.54.31

✅ 変形性膝関節症(OA)の女性を対象としたミニマルシューズ(Moleca shoe)による介入の結果:標準的な靴による介入と比較して、WOMAC、鎮痛剤の摂取量、EKAM(External Knee Adduction Moment)、スティフネス、疼痛の改善に注目。
✅レビューのキーポイント
- 現代の靴と私たちの足が適応した機能との間には、進化上のミスマッチがある。
- 現代のフットウェアは、外反母趾や扁平足などの足の変形の発生と関連している。
- ミニマルフットウェアは、内在性と外在性の両方の足の筋肉の強化を促す。
- ミニマルフットウェアは、人間の自然な裸足に近い歩き方や走り方を促進する。
- ミニマルフットウェアは、健康な高齢者だけでなく、変形性膝関節症などの病的な状態の方にも有効。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

私たちが建物をつくる。その後は建物が私たちをつくる。
チャーチル

進化論は、自然環境と生き物の関係を示すもの、そう思ってきた。
だが、それだけではなかった。
僕たちが良かれと思って作ったものが、僕たちをある方向へ進化(変化)させるということがある。その好例が、フットウェアと人間の歩き方・走り方だ。
たしかに、家の中など裸足の環境で踵接地走法をしようとしたら、衝撃力が強すぎてやる気にならない。
それを可能にしたのが、人間が作り出したクッション素材だったと。

こうなってくると、現在『標準・正常』と捉えられている、歩行や走行の関節運動や関節トルクを疑ってかからないといけない。
なぜなら、これらはフットウェアが出現した『後』の人々の歩き方や走り方を、平均したものに他ならないから。
運動学的に、力学的に、関節病態学的に、真に妥当な歩き方・走り方を選別できる『眼』を!

そして、盛ることに注意しなければならない。
僕たちは、つい色々やり過ぎてしまうのだ。アーチサポート、ヒールパッド・・・諸々。
それらの盛られた環境に適応するようにして、歩き方や走り方が、思わぬ方向にいっていないか、それを監視しておく必要がある。

良い建物を建て、良い私たちをつくろう!

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

【あり】最後のイラスト

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○