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人員配置の不安定性。離職率とケアの質低下に影響


📖 文献情報 と 抄録和訳

介護施設における人員配置パターンの新たな側面と介護施設の質:人員配置の不安定性と離職率の比較

📕Sinha, Soham, et al. "New Dimensions of Staffing Patterns in Nursing Homes and Nursing Home Quality: Comparing Staffing Instability to Staffing Turnover." Journal of the American Medical Directors Association (2023). https://doi.org/10.1016/j.jamda.2023.04.009
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[背景・目的] この研究では、人員配置の指標である離職率と不安定性が互いにどのように関連しているのか、また、それらが独立してどのようにナーシングホームのケアの質に寄与しているのかを検討する。

[方法] デザイン:2021-2022年の管理データの横断的分析。データには、ナーシングホームケア比較(NHCC)のナーシングホームの特徴、総人員回転率、およびナーシングホームの質に関するデータとマージされた、日々の人員配置情報のためのPayroll Based Journalを含む。設定と参加者:1日の人員配置と離職率に関するデータを報告している全国11,840のナーシングホーム。方法:人員配置の指標間の相関を調査し、ロバスト標準誤差を用いて施設レベルの回帰モデルを推定した。従属変数はNHCCの5つ星評価に含まれるナーシングホームの質の指標とした。独立変数は、入居者1日あたりの平均総職員配置時間、総職員配置回転率、および人員配置の不安定性であった。

✅人員配置の不安定性の定義
・入居者の1日あたりの人員配置時間が施設の年間平均を20%以上下回った日の年間の割合

[結果] 調査対象となった11,840のナーシングホームについて、離職率と人員配置の不安定性の間には弱い正の相関 (𝑟=0.55, 𝑝=0.00)があり、不安定性の高いナーシングホームと離職率の高いナーシングホームは重複していた。

回帰分析により、人員配置の不安定性と離職率はそれぞれ独立してナーシングホームの質に寄与していることが明らかになった。人員配置の不安定さは、長期入所者の日常生活動作レベルの低下や抗精神病薬の投与、短期入所者の退院時機能と正の強い関連を示した。離職率は、長期入所者の褥瘡の有病率および運動機能の悪化、および短期入所者の入院と、より強く正の相関を示した。

[結論] ナーシングホームの総人員配置における不安定性と離職率は、それぞれ独立してナーシングホームの質に寄与している。このことは、NHCCの平均職員数と職員離職率の既存の測定に職員配置の不安定性の測定を加えることで、質の改善に取り組むプロバイダーや質の高いナーシングホームを探す消費者にとって、レポートカードの価値が高まる可能性があることを示唆している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前、ケアの質と離職率が関連する、という結論の文献抄読を行った。

今回の論文は、さらに『人員配置の不安定性』という概念とそれらの関連を調査している。
これは、臨床現場で働く人間であれば、おそらく感じたことのある、重要な概念である。
例えば、極端に示すが「今日は担当患者さんが5人か、臨床外業務に着手できそう」という日もあれば、
「今日は担当患者さんが10人か、臨床業務でカツカツだな」という日もある。
その波が大きければ大きいほど、心理的な負担感は大きくなり、かつ業務のリズムも作りにくくなる。

絶対的な業務量も大事かもしれないが、ここで重要なのはその『波の大きさ』である。
その人員配置の不安定性を数値化し、調査した今回の研究。
結論としては、離職率とも、ケアの質とも関連していた。
やはり、なるべく業務量の波というのは小さいものにして行った方が望ましいようだ。
毎日がジェットコースターのような業務量の上下があったならば、それは疲弊してしまうことだろうと思う。
重要なことは、それが職員だけの問題にとどまらず、ケアの質にも影響するということ。
よくよく考えれば、ケアの質を提供するのは職員なのだから、当たり前の話なのだけれど。
とにかくも、人員配置の不安定性にどう向き合うか、ここは重要な課題だ。

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