自営と雇用。理学療法士の勤務形態と満足度
📖 文献情報 と 抄録和訳
雇用状況に応じた理学療法士の仕事の満足度;オーストリアでのオンライン調査からの結果
Latzke M, Putz P, Kulnik ST, Schlegl C, Sorge M, Mériaux-Kratochvila S. Physiotherapists' job satisfaction according to employment situation: Findings from an online survey in Austria. Physiother Res Int. 2021 Jul;26(3):e1907.
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] 理学療法士は一般的に、自営、雇用、または雇用と自営を組み合わせた勤務形態で働いている。本研究では、これら3種類の勤務形態における理学療法士の総合的な仕事満足度の側面と予測因子を調べることを目的とした。
[方法] オーストリアの理学療法士を対象に、横断的なオンライン調査を実施し、総合的な仕事の満足度、および仕事の満足度の重要性と実現度を評価した。重回帰法を用いて、総合的な仕事の満足度の予測因子、および(雇用されている療法士のみの)雇用主の変更計画の予測因子を特定した。
[結果] 対象となったのは、公共部門または民間部門で働く581名の理学療法士で、そのうち342名が自営業、100名が被雇用者、139名が被雇用者と自営業者の両方でした。理学療法士は、勤務形態によって顕著な違いはあるものの、全般的に高い仕事満足度を示しました。自営業者は、他の2つのグループと比較して、全体的な仕事の満足度、認識と自律性の面で高かった。対照的に、自営業者はメンタリングやピアサポートに対する満足度が低いことがわかった。自営業者と雇用者の両方が、ワークライフバランスの重要性と実現性の間に最も大きなギャップがあると報告した(r = -0.50, p < 0.001)。認知度は、雇用されている理学療法士の仕事の満足度(ß = 0.52, p < 0.001)と離職意向(ß = -0.54, p < 0.001)の最も重要な予測因子とされた。
[考察] ワークアレンジメントによる仕事満足度の分析は、高い仕事満足度を高めたり維持したりするためのいくつかのアプローチを示唆しており、雇用者や理学療法専門組織が取り組むことができる。雇われている理学療法士にとっては、認知度や自律性を高める方法が有望であり、自営の理学療法士にとっては、同僚との交流やネットワークを広げる機会を増やすことが有効である。また、雇用者と自営業者の両方を対象とした場合、個人の患者と雇用者の仕事量を統合するためには、より柔軟な勤務体系が有効であると考えられる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
『隣の芝は青い』、とはよく言ったものだ。
自営PTの満足は、雇用PTの不満足となりやすい。
雇用PTの満足は、自営PTの不満足となりやすい。
自営している理学療法士。
自律、自由には責任がつきまとう。
それは、仲間意識(ピア)やメンタル面での安定などとは両立しにくい。
雇用されている理学療法士。
安心の雇用、一定した勤務時間、一定した給料、(どちらかとえいば)与えられる仕事。
それはやはり、自律や責任とは両立しにくい。
人は、自分と逆の状態の人の感情やニーズを想像することは難しく、共感を示さない傾向にある(📕Wilson, 2003 >>> doi.)。
このような現象は「感情移入ギャップ」と呼ばれる(📕 Sayette, 2008 >>>doi.)。
どうやら、自営PTと雇用PTの間にも、このギャップがありそうだ。
自分たちの勤務形態のある面においては満足を感じながら、ある面では隣の芝は青いと感じている。
「両利きの経営」という考え方がある。
大企業という大樹に、スタートアップという萌芽を生みながら成長を続ける、という考え方。
自営と雇用、両者の強みを両立する概念の1つだろう。
そのための考え方や具体的な取り組みについて、もっと知る必要がある。
なんといっても、ぼくは、雇用されている理学療法士だ。
この大樹において、自営の心意気を保った集団でいるための科学。
これを、学び、考え続けていこう。
どんな大樹にも、萌芽はある🌱。
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