ケアの質と離職。質が低いほど離職率が高くなる
📖 文献情報 と 抄録和訳
職員の離職率と老人ホームの質の関連性-給与明細ベースのジャーナルデータからのエビデンス
[背景・目的] 職員の離職率は、ナーシングホームの質の重要な指標と考えられている。我々は、Centers for Medicare & Medicaid Services(CMS)のPayroll-Based Journal(PBJ)システムから監査可能なスタッフデータを用いて、看護師スタッフと管理者の離職率を算出し、離職率と介護施設の質の関係を検討した。
[方法] 我々の分析は、2018年3月~2019年4月のPBJを通じて完全なスタッフ配置データを提出した13,631のナーシングホームのデータを対象とした。対象職員の勤務日数のギャップに基づいて離職率を特定し、PBJで把握できないナーシングホームが報告する解雇日に依存しない離職率指標を算出することができた。職員の離職率の指標を、2020年1月にCMSのCare Compareウェブサイトで公表されたナーシングホームの品質指標およびスターレーティングと関連付け、離職率とケアの質の関係を検証した。連続アウトカムには通常の最小二乗モデルを、カテゴリーアウトカムには順序ロジットモデルを用い、施設や郡の特徴をコントロールした。
[結果] 年間平均離職率は、看護師で約44%、看護師全体で約46%であった。平均すると、この期間に各ナーシングホームから1名の管理者が離職したが、約半数のナーシングホームでは管理者の離職はなかった。離職率はナーシングホームによって大きく異なっていた。営利施設や大規模なナーシングホームでは、離職率が高かった。離職率の高さは一貫してケアの質の低さと関連していた。
[結論] 本研究は、ナーシングホームの質との関係から、職員の離職率の重要性を浮き彫りにしている。2022年1月、CMSは、消費者がナーシングホームの質の評価にこの情報を利用できるように、またナーシングホームがスタッフを維持するための革新的な戦略を実施する動機付けとなるように、Care Compareに離職率の測定値を掲載し始めた。これらの行動は困難ではあるが、それでもナーシングホーム居住者のケアの質を向上させるために正当化されるものである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
『ワークエンゲージメント』という概念がある。
そして、離職率はワークエンエージメントと強く関連する因子である(📗坂本, 2009 >>> amazon.)。
さて、ここで考えたいのは、鶏と卵の問題である。
つまり、以下の二択である。
素直に考えると、前者になりそうだ。
やる気があるから、その仕事に熱心に取り組んで、質が上がる。
そりゃそうだろう、と思う。
その方向性も、もちろんそうだろう。
注目したいのは、後者の方だ。
ここに『ザイアンス効果(単純接触効果)』なる効果がある。
小学校の頃を思い出してほしい。
すごく高価で精巧なプラモデルより、学校で一生懸命作った、紙を何度も折りたたんで、自分のお気に入りのキャラクターのイラストを書いて、セロテープでぐるぐる巻にしたメンコを愛おしく思った、とても大切に感じた。
そんな経験、誰にでもあるだろう。
つまり、絶対的な『質』という価値に愛を感じるというより、『自分がかけた時間』が絆となり愛となる。
そう考えた時に、『医療の質が高い→ワークエンゲージメントが高い』という方向性が成り立つことに気づく。
医療の質が高いということは、それに向けて膨大な努力、労力をかけた、ということにほぼ等しい。
厳しい教育を受け、怠惰な自分を奮い立たせ、時間をかけて少しでも良いケアを提供しようとした。
そこには、事実としての『時間』がかけられている。
そのかけた『時間』の量が、患者さんとの絆となり、医療者という仕事への執着を生み、その集団への帰属感を高めるのだろうと思う。
結論として、一生懸命仕事をするほど、その仕事のことが好きになり、天職になる。
いきなり天職、ということはなくて、根が時間をかけてその土壌に足を伸ばすがごとく、かけた時間に比例して、その職業は天職となるのだろうと思う。
この効率化の時代と少し逆行してみようかな、と思った今日この頃である。
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