動物性 vs. 植物性。高齢者のタンパク質摂取はどちらがいい？
📖 文献情報 と 抄録和訳
動物性タンパク質の摂取は高齢者の死亡率と逆相関する：InCHIANTI研究
📕Meroño, Tomás, et al. "Animal protein intake is inversely associated with mortality in older adults: the InCHIANTI study." The Journals of Gerontology: Series A 77.9 (2022): 1866-1872. https://doi.org/10.1093/gerona/glab334
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[背景・目的] 一般に、中年成人を対象とした研究では、中年成人では、動物性タンパク質の摂取量が多いほど心血管死亡率が高くなり、植物性タンパク質は反比例の関係を示すことが知られている（📕Song, 2016 >>> doi.）。我々の目的は、高齢者における動物性タンパク質および植物性タンパク質の摂取と死亡率との長期的な関連性を評価することであった。
[方法] イタリアのトスカーナ地方に住む地域在住の高齢者1,139名（平均年齢75歳、女性56％）を20年間追跡した前向きコホート研究（InCHIANTI研究）を分析対象とした。食事頻度調査票による食事摂取量と臨床情報が、追跡期間中に5回評価された。タンパク質の摂取量は、総エネルギーに対する割合で表した。交絡因子で調整した時間依存のCox回帰モデルを用いて、植物性および動物性タンパク質摂取量と死亡率との関連を評価した。
[結果] 20年間（平均12年間）の追跡期間中に、811人の死亡が発生した（292人が心血管系、151人ががん関連原因）。動物性タンパク質摂取が多いほど、全死亡率（タンパク質からの総エネルギー増加1％あたりのハザード比［HR］、95％信頼区間［CI］。0.96、0.93-0.99）、心血管死亡率（タンパク質からの総エネルギー1％増加あたりのHR、95％CI：0.93、0.87-0.98）は低下した。植物性タンパク質の摂取は、いずれの死亡アウトカムとも関連を示さなかったが、全死亡および心血管死亡については、ベースラインの高血圧との相互作用が認められた（p＜0.05）。
[結論] 動物性タンパク質は、高齢者の全死因および心血管系死亡率と逆相関していた。高齢者の食事性蛋白質摂取に関する推奨事項を提供するためには、さらなる研究が必要である。
🌱 So What?：何が面白いと感じたか？
これは面白い。
何が面白いかといえば、『中年成人と高齢者で求められるタンパク質の種類が違う』、ということが。
■ 中年成人 → 植物性タンパク質 > 動物性タンパク質
■ 高齢者 → 動物性タンパク質 > 植物性タンパク質
経時的に必要とされるタンパク質の種類が変わっていくことは、栄養指導において大変重要な点になる。
それにしても、野菜よりステーキか。
確かに、時々テレビ番組で超人的高齢者が朝から鉄板ステーキを食べている映像を目にする。
動物性タンパク質と植物性タンパク質、そもそも何が違うのだろうか？
✅ 動物性タンパク質と植物性タンパク質の違い
・大きな違いとしては、必須アミノ酸のバランスや体内の吸収率がある。
・動物性タンパク質の多くは、必須アミノ酸9種類を全て含んでいる、植物性タンパク質は一部不足している必須アミノ酸がある。
・体内での吸収率は、動物性タンパク質が97％に対して、植物性タンパク質は84％
🌍 参考サイト >>> site.
植物の生長に関する『リービッヒの最小律』という考え方がある。
植物の生長速度や収量は、必要とされる栄養素のうち、与えられた量のもっとも少ないものにのみ影響されるとする説のことで、桶と水漏れに例えられる（🌍 参考サイト >>> wiki.）。
高齢者にも、このような考え方が当てはまるのかもしれない。
そして、中年成人は不足というより過食が死亡リスクと関わるような気がするので、動物性タンパク質摂取と相関するのかもしれない。
つまり、死亡という最終共通路は一緒だったとしても、そこに至るストーリーは中年成人と高齢者では全然違うのだろう。
「タンパク質が大事ですよ」→「同じタンパク質でも動物性のタンパク質や、それに類似した栄養補助食品を摂取することが大事ですよ」へ。
栄養指導のレベルが「1」上がった。
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