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猫背の支持機構。受動的張力発生のメカニズム

📖 文献情報 と 抄録和訳

胸腰椎への後方介入が受動的に安定した屈曲姿勢に及ぼす生体力学的影響について

📕Haupt, Samuel, et al. "The biomechanical consequence of posterior interventions at the thoracolumbar spine on the passively stabilized flexed posture." Journal of Biomechanics (2023): 111599. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2023.111599
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[背景・目的] 前かがみの座位(slumped sitting)では、体幹は受動的に安定化される。受動的安定化に対する後方アプローチによる生体力学的な影響については、ほとんど知られていない。本研究の目的は、後方からの外科的介入が局所および遠くの脊椎領域に及ぼす影響を調査することである。

[方法] 骨盤を固定した状態で、5人のヒトの胴体を受動的に屈曲させた。胸腰筋膜、傍脊柱筋のレベルワイズ縦切開、棘間-上棘靭帯(ISL/SSL)の水平切開、胸腰筋膜、傍脊柱筋の水平切開後、Th4、Th12、L4、S1における脊椎角の変化を測定した。

[結果]
■ 腰部切開の介入(Th12-S1)が腰椎角度に及ぼす影響
・胸腰筋膜:腰椎角度を1.9°±1.2°(腰椎レベルごとに平均0.3°±0.1°)増加させた
・傍脊柱筋:腰椎角度を2.7°±0.9°増加した(腰椎1レベルあたり平均0.5°±0.2°増加した)
・棘間-上棘靭帯:腰椎の角度は4.8°±2.1°増加した(腰椎1レベルあたり平均0.8±0.2°)
・腰部筋膜、傍脊柱筋、棘間-上棘靭帯を合計すると、腰部角度は平均9.4°±2.0°増加した。
・寄与率:胸腰筋膜20%、傍脊柱筋29%、棘間-上棘靭帯51%であった。

■ 腰部および胸部切開介入(Th4-S1)が脊柱全体の角度に与える影響
・腰部筋膜:腰椎角度(Th12-S1)を0.9°±0.3°(腰部脊椎レベルあたり平均0.2±0.1°)
・胸部筋膜:胸椎角度(Th4-12)0.9°±0.4°(胸部レベルあたり約0.1°)増加した
 →1レベルあたりの効果は、胸椎に比べ腰椎で1.4倍大きかった
・傍脊柱筋(Th12-S1):全体の角度が3°±2.3°(腰椎レベルあたり0.5±0.1°)増加
・傍脊柱筋(Th4-12):1.2°±1.8°(胸椎レベルあたり約0.15°)の増加が認められた
 →1レベルあたりの平均効果は、胸椎と比較して腰椎で3.5倍大きかった
・棘間-上棘靭帯(Th12-S1):全体の角度が3.3°±1.8°増加(腰椎レベルあたり0.5±0.1°)
・棘間-上棘靭帯(Th4-12):すべての胸椎レベルで1.6°±0.8°増加(胸椎レベルあたり0.2°±0.04°)
 →1レベルあたりの平均効果は、胸椎と比較して腰椎では2.6倍大きかった
・寄与率:胸腰筋膜16%、傍脊柱筋38%、棘間-上棘靭帯45%であった。

[結論] 胸腰筋膜、傍脊柱筋、棘間-上棘靭帯は、屈曲端位における体幹の重要な受動的安定化機構である。脊椎へのアプローチに必要な腰椎の介入は、胸椎の介入よりも脊椎の姿勢に大きな影響を与え、介入レベルでの脊椎角度の増加は、隣接する脊椎領域で部分的に補われる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「猫背って楽じゃないですか。これって “ゴムのような組織” が引っ張られて、その張力で姿勢を維持しているんですよ。ただその姿勢だと極端な関節位置になってしまうので、構造への負担が大きくなる場合があるんです」

膝のロッキング機構についても類似しているが、上記のような説明を患者にすることが時折あった。
しかし、その説明における “ゴムのような組織” とは何だろう。
この中にも、構成要素がある。
具体的には、筋膜、傍脊柱筋、靭帯である。
それら構成要素が、どのような寄与率でゴムのように機能しているのかは不明だった。

だが、今回の解剖体を用いた研究によって寄与率が明らかにされ、靭帯の寄与が一番大きいことがわかった。
今後も、似たような説明をするとは思うが、頭の中で思い描くビジョンは具体的で鮮明になった。

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