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円背と転倒は関連する?1220人の2年間前向きコホート研究

Super Human | 理学療法士/保健学博士 Ph.D.

📖 文献情報 と 抄録和訳

地域在住高齢者における円背と転倒発生率の関連性

Koelé, Marije C., et al. "The association between hyperkyphosis and fall incidence among community-dwelling older adults." Osteoporosis International 33.2 (2022): 403-411.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

🔑 Key points
- 胸椎の後弯角度が大きくなる円背(脊椎後弯変形)は、地域在住の高齢者の大規模な前向きコホートの高齢者四分位群における高い転倒発生率と関連していた。
- 円背は、治療可能な疾患であると同時に、転倒リスク増加の指標となる可能性がある。

[背景・目的] はじめに円背は65歳以上の成人にしばしばみられ、転倒と関連している可能性がある。我々は、地域在住の高齢者を対象に、円背または後弯角の変化が転倒発生率と関連するかどうかを前向きに調査することを目的とした。

[方法] 地域在住の高齢者(n=1220、平均年齢72.9±5.7歳)が2年間にわたり毎週転倒を報告していた。DXAに基づく椎体骨折評価において、第4胸椎と第12胸椎の間のコブ角を通じて胸椎後彎を測定し、コブ角≧50°を円背と定義した。追跡期間中のコブ角(下図)の変化を二値化した(<5°または≧5°)。多因子回帰分析により、後弯角と転倒の関連性を検討した。

[結果] 円背は15%に認められた。追跡期間中、48%の参加者が少なくとも1回転倒した。全調査対象者において、円背は転倒回数と関連していなかった(調整後IRR 1.12、95%CI 0.91-1.39)年齢による効果の修飾が観察された(p = 0.002)。77歳以上の最も高齢の四分位群では、円背はより高い転倒回数と前向きに関連していた(調整後IRR 1.67、95%CI 1.14-2.45)。後弯角度の変化は転倒の発生率と関連していなかった。

[結論] 地域在住の高齢者を対象とした大規模な前向きコホートにおいて、円背と高い転倒発生率は関連していた。円背は部分的に可逆的な疾患であるため、高血圧が転倒の原因の一つであるかどうか、また、後弯角の減少が転倒予防に寄与するかどうかを調査することが推奨される。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

海外は、やっぱりユーモラスである。
円背のことを猫背、亀背、あげく『?マーク変形』、などと呼んでいる。
炎上ものである。
ただ、「逆境を笑い飛ばしていこうぜ」「笑ったら、その時点で勝ちである」みたいなスタンスは、好きだ。

さて、今回の論文の結果はどうだろうか。
僕は正直、パッとしない結果だと思った。
1220名の全被験者では関連を認めず、77歳以上の高齢者で結果が出たという、P-hacking(p値が有意になるまで解析を頑張って見つけ出す)的な雰囲気を感じた。
アブストの結論も、多少飛躍している印象を受けた。

「円背」の解像度をあげると、違った結果に辿り着くのではないかと感じた。
脊椎の矢状面における変形を扱うのに、少なくとも4つのパラメータを知っている。

✅ 脊椎の矢状面における変形を示す4つのパラメータ
- Thoracic kyphosis angle: TKA
- Lumber lordosis angle: LLA
- Trunk inclination angle: INC
- Sacral inclination angle: SIA
● Yanagisawa, Shinya, et al. Asia-Pacific Journal of Sports Medicine, Arthroscopy, Rehabilitation and Technology 2.2 (2015): 68-71. >>> doi.

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その中で、特に転倒との関わりが大きいのが、『INC』である。
INCのカットオフ値として6度(感度=52%、特異性=87%)が転倒リスクに対するOR=4.3(p<.01)と報告されており、危険度は大きい(📕 Muramoto, 2016 >>> doi.)。

スライド3

今回抄読の研究ではコブ角(TKA)のみをアウトカムとしているが、コブ角は先行研究でも転倒との関連が少ないことがわかっている。
脊椎アライメントの解析解像度をもう少し上げて、同様な前向き調査を4つのパラメータで行なったならば、より真実に迫った結果が得られるのではないだろうか。

「4つも測ってられんわ、面倒くさいし!」
ぼくも、そう思う。
なんといっても、評価指標が臨床に動員されにくい重大な理由の1つは『手間(時間がかかること)』なのである(📕Jette, 2009 >>> doi.)。
だが、時代は進んでいる。前へ、前へ。
いま、ウェアラブルセンサーやスマホで「パシャ!」で自動計測、など測定-分析ツールの発展が著しい。
一瞬で、これら4つのパラメータが算出できる日は近いと思う、もしかしたら、僕が知らないだけで、今でもあるかもしれない(どなたか知っていたら教えて欲しい!!!)。
だから、その方面での心配はいらない。
大事なのは、どのパラメータに「着眼すべき」かを知っておくことだ。

「円背がありますよね。猫背気味ですよね」
よりも、
「円背のなかでもINCが大きくなっていて、転倒リスクが大きいですね。座位や立位で骨盤後傾位を取れるように、練習してみましょう!」
の方が、かっこいいPTだと思わないか。
介入へのシナプスをもった知識を身につけ、観察・分析技術を磨きたい。

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Super Human | 理学療法士/保健学博士 Ph.D.
臨床研究・野球・バイオメカニクスが大好きです。認定PT(運動器)/高校野球部トレーナー/論文執筆15本以上(IF: 8.1)。リハ医学全般について、毎日全力で英文抄読🌱フォローすると最新のエビデンスが毎日届きます📕✨ 🔗https://linktr.ee/yoichi_kaizu