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運動アドヒアランスの新しい評価方法『ATEMPT』


📖 文献情報 と 抄録和訳

運動アドヒアランスの新しい測定法:ATEMPT(筋骨格痛のための運動アドヒアランス・ツール)

📕Bailey, Daniel Leslie, et al. "A new measure of exercise adherence: the ATEMPT (Adherence To Exercise for Musculoskeletal Pain Tool)." British Journal of Sports Medicine 58.2 (2024): 73-80. https://doi.org/10.1136/bjsports-2022-106347
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✅ 前提知識:運動アドヒアランスとは?
・アドヒアランスとは,人が何かに対して愛着を感じ,それを継続するということを表す概念であり,運動アドヒアランスとは運動を継続するという強い意志を示す概念である。
・運動への積極的な関与の維持。運動の継続性が高い人は、運動中止の機会やプレッシャーがあるにもかかわらず、身体活動への参加を継続する。

📕大工谷新一, 他. 理学療法学 30.2 (2003): 48-54. >>> doi.
🌍 参考サイト >>> site.

[背景・目的] 本研究の目的は、(1)これまでに概念化された運動アドヒアランスの領域に基づいて、筋骨格系(MSK)疼痛に対する運動アドヒアランスの新しい尺度(Adherence To Exercise for Musculoskeletal Pain Tool:ATEMPT)を開発すること、(2)MSK疼痛に対して運動療法を行う患者におけるATEMPTアウトカム尺度の内容的・構造的妥当性、内的一貫性、テスト-リテスト信頼性、測定誤差を報告することである。

[方法] ATEMPTは、患者、理学療法士、研究者により作成されたアドヒアランスに関する記述を用いて作成され、内容の妥当性が確立されている。ベースラインおよび再試験の質問票は、11の国民保健サービスの理学療法クリニックでMSK疼痛に対して運動を勧められた患者に配布された。回答のばらつきが少ない項目は削除され、構造的妥当性、内的一貫性、テスト再試験信頼性、測定誤差といった測定特性が評価された。

[結果] 6項目のATEMPTが、運動アドヒアランスの6つの領域から開発された。

MSK疼痛患者382名と112名からそれぞれベースラインと再試験データを収集した。確認的因子分析により、ベイズ情報量規準によれば、単一因子解が最も適合していることが確認された。6項目の測定値(6~30点)は、最適な内的一貫性(クロンバックのアルファ0.86、95%CI 0.83~0.88)を示し、テスト-再テスト信頼性(クラス内相関係数0.84、95%CI 0.78~0.88)および測定誤差(検出可能な最小変化量3.77、95%CI 3.27~4.42)(測定のSE 2.67、95%CI 2.31~3.16)も許容可能なレベルであった。

[結論] 6項目のATEMPTは、運動アドヒアランスの6つの領域から開発された。MSK疼痛患者において、内容的妥当性、構造的妥当性、内的一貫性、テスト-レテスト信頼性、測定誤差は十分であるが、構成概念妥当性と反応性を確立するために追加テストを受ける必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

人間社会においては、測定される対象のほうも、測定のために取り出され注目されるという事実のために、新たな価値が加えられる。いかに科学的に処理しても、管理のために特定の現象を抽出するという行為そのものが、現象の重視を表明したと同じ効果を持つ。管理のための測定を行うとき、測定される対象も測定する者も変化する。測定の対象いは新たな意味と新たな価値を賦与される。したがって管理に関わる根本の問題は、いかに管理するかではなく何を測定するかにある。
ドラッガー「マネジメント」

さて、今回のテーマである『運動アドヒアランス』
そもそも、その定義や意味するところを知っていただろうか。
僕は、恥ずかしながらぼんやりとイメージできる程度のものだった。
しかしながら、『ATEMPT』の6項目を見ることで、その構成要素をしっかり把握できた。

「測ることは、育むこと」

ホーソン効果なるものがある。
「モニターされていることを意識すると行動が変わる」という効果だ。
身体活動量計を用いたRCTにおいて、介入群、非介入群ともに身体活動量が増した(📕Turunen, 2020 >>> doi.)。
これは、まさにホーソン効果である。
すなわち、身体活動量計を装着→「身体活動量がモニターされるのだ」と意識することで、身体活動量の増大に向けた行動が促進されたわけだ。
今回のATEMPTは、運動アドヒアランスにおいて、同様の効果をもたらすだろうか。
そして、医療従事者や健康関連職種の人々の意識に、明確に運動アドヒアランスという引き出しをつくるだろうか。
楽しみだ。

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