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歩数測定の適応

📖 文献情報 と 抄録和訳

病院における消費者向け身体活動モニターの使用に関する患者選択の改善

📕Hiser, Stephanie, et al. "Improving patient selection for use of consumer grade physical activity monitors in the hospital." Brazilian Journal of Physical Therapy 26.5 (2022): 100447. https://doi.org/10.1016/j.bjpt.2022.100447
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🔑 Key points
🔹ほとんどの病院では、臨床医による定期的な観察によって入院患者の移動状況を記録している。
🔹ウェアラブル技術により、患者の移動能力をより完全に測定できる可能性がある。
🔹ウェアラブル技術は、すべての入院患者に使用することができないかもしれない。
🔹この技術に適した患者を特定するためのスクリーニング・ツールが必要である。
🔹身体能力評価は、実現可能なスクリーニング方法として臨床医を支援する可能性がある。

[背景・目的] 入院患者にとってベッドレストは有害であり、消費者グレードの身体活動モニターは患者の歩行をモニターするための経済的なソリューションである。しかし、これらの機器は、頻繁に非常にゆっくりと歩行する衰弱した入院患者では正確でない可能性がある。目的:身体能力を測定することで、ウェアラブル身体活動モニターが歩数を正確に測定できる入院患者を特定できるかどうかを判断すること。

[方法] 急性神経症を有する成人入院患者54名を対象とした前向き観察研究。患者は2つの身体能力評価(Activity Measure for Post-Acute Care Inpatient Mobility Short Form [AM-PAC IMSF] およびKatz Activities of Daily Living [ADL] scale)を用いて評価された。また、消費者グレードの身体活動モニターを装着して2分間歩行テスト(2-minute walk test, 2MWT)を実施した。

✅ AM-PACとは?
・AM-PAC(Activity Measure for Post-Acute Care)「6-Clicks」Inpatient Short Formsは、急性期後の患者の機能的アウトカムを評価するための6つの質問を使用した多次元的な測定法。
・AM-PACは、様々な診断名や患者層で使用され、基本的な移動能力(階段昇降のオプションあり・なし)、日常生活動作、応用認知機能などを測定する。
・AM-PACは、日常生活動作の困難さ、介助、制限などの側面を測定する。
・「6-Clicks」ショートフォームは、電子カルテに入力できる急性期病院の退院先を予測するためのデータを医療従事者に提供するために、迅速に実施することが可能。
・入院患者用ショートフォームの6つの質問は、オリジナルのAM-PACの質問から選ばれたもの。

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✅ Katz indexとは?
・カッツインデックス(Katz Index)は、入浴、更衣、トイレの使用、移動、排尿・排便、食事の6つの領域のADLに関して自立・介助の関係より、AからGまでの7段階の自立指標という総合判定を行う評価方法。

🌍 参考サイト >>> site.

[結果] ウェアラブル活動量計は、33名(61%)の入院患者の歩数(開始)を記録し、歩行速度が0.43m/s以上の入院患者の94%で記録された。身体能力評価は歩行速度と良好な相関があり、AM-PAC IMSF r = 0.7、Katz ADL r = 0.6, p < 0.05. 身体活動モニターを開始したとき、装置で計算した歩数と観察した歩数を比較した平均絶対誤差率(SD)は10%であった(13)。AM-PAC IMSF(Tスコア>45)およびKatz ADL(>5)のカットオフスコアは、それぞれ94%と91%の感度で身体活動モニターが開始される入院患者を特定した

[結論] AM-PACやKatz ADLなどの身体能力評価は、ウェアラブル身体活動モニターで移動能力を測定できる入院患者を特定するための有用かつ実現可能なスクリーニング戦略である可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

何かを測ろうとするとき、『天井効果』『床効果』というものを考慮する必要がある。
たとえば、健常中学生/高校生に対してFIMを測ろうとすることは、適切だろうか?
多くの場合、答えは『No』だろうと思う。
全員が満点となるから。
一方で、入院中の高齢者に対して100m走のタイムを測ろうとすることは、適切だろうか?
これも多くの場合、答えは『No』だ。
それは、全員が非計測(not applicable)となるから。
前者が天井効果、後者が床効果だ。

上記の例ほど極端であれば、判断は簡単だ。
だが、現実の世界は極度に二極化された世界ではない。
緩やかなグラデーション、その中のどこで線引きするか、それが問われる。
入院中の高齢者の中で、歩数測定の適応となる患者を選定することもその1つのお題だ。
我々が以前報告した研究では、『歩行自立』をその線引きにした。

今回は、AM-PACとKatz Indexを用いて高精度のスクリーニングツールを開発していた。
このツールも有用だろうが、もしかしたら日本にもっと馴染み深い評価尺度(FIMやBIなど)を用いて新たなツールを開発した方が有用かもしれない。
なんにせよ、「全員が全員、歩数を測ればいいというものではなく、適応者を明らかにする仕組みが必要」という視点を学べたことが収穫だと思っている。

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