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見られてるから頑張る。歩行変動におけるホーソン効果

📖 文献情報 と 抄録和訳

トレッドミル歩行時の時空間的な歩行運動量の変動性: ホーソン効果はあるのか?

📕Farhan, Saaniya, Marco A. Avalos, and Noah J. Rosenblatt. "Variability of Spatiotemporal Gait Kinematics During Treadmill Walking: Is There a Hawthorne Effect?." Journal of Applied Biomechanics 1.aop (2023): 1-6. https://doi.org/10.1123/jab.2022-0185
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✅ 前提知識:ホーソン効果とは?
・「ホーソン効果」とは、注目を浴びることで、その期待に応えたいという心理が働き、良い結果をもたらす効果があること。
・米国シカゴにある電機メーカーのホーソン工場で、1924年から8年間にわたり行われた「ホーソン実験」によって発見された効果。
・照明を明るくするなどの物理的な労働条件よりも、注目されている意識や親密な人間関係が生産性の向上につながることが判明し、現代の組織研究のきっかけにもなった。

🌍 参考サイト >>> site.

[背景・目的] 臨床や実験室では、転倒リスクを定量化するために、時空間的な歩行運動量とその変動性を評価することが一般的である。ホーソン効果(観察されていることを知ることによる参加者の行動の変化)は、このような評価に影響を与える可能性があるが、歩行(特に歩行変動)の研究ではほとんど注目されていない。本研究の目的は、転倒に関連した時空間的な歩行パラメータの変動と中心傾向の測定におけるホーソン効果を定量化することである。

[方法] 17名の健康な若年成人を対象に、トレッドミル上を自己選択した速度で、隠密測定期(すなわち、評価されていることを意識しない)で2分間明示評価期(評価されていることを知らされる)で2分間歩いた。動作はモーションキャプチャ技術で記録し、そこから歩幅、歩隔、二重支持率、立脚相率、歩幅時間の平均値およびステップ間変動(標準偏差と平均絶対偏差を使用)などを算出した。

[結果] 中心傾向は評価の種類に影響されなかったが、変動性の5つの指標のうち4つは、明示測定期に有意に低くなっていた最も変化が大きかったのはストライド時間の変動で、平均24%近く減少した。

[結論] この結果は、運動制御におけるホーソン効果を示唆している。研究者は、研究計画を立てる際や歩行評価を解釈する際に、この現象に注意する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ホーソン効果関連の研究において難しいのは、「非計測意識をどのように作り出すか」という点だ。
以前、「身体活動量は測定意識だけで増大する」という、身体活動量におけるホーソン効果を明らかにした文献を抄読した。
この文献の中では、アプリと歩数計を2段階で配布することで非計測意識を作り出すことに成功していた。

かくいう僕も、身体活動量の研究に関わる1人だ。

この研究を実施したときにも強く感じたことだが、ホーソン効果は、ある!

「この機械を1日つけていただきます」
「じゃあ、頑張らなきゃね🔥」

このような会話や意識は、実際にあるのだ。
だから、もしかしたら僕たちに必要なことは、伸びてほしい部分に光を当てる。
という、それだけのことなのかもしれない。

測ることは、育むこと
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