『ホーソン効果』。身体活動量は測定意識だけで増大する
📖 文献情報 と 抄録和訳
ウェアラブル活動量計の有無が歩数に与える影響について
[背景・目的] 本研究では、ウェアラブル活動量計とトラッキングが身体活動に及ぼす影響を2週間にわたり検証した。
[方法] 90名の若年成人が参加した。研究開始前に、各参加者は身体活動レベル(歩数)をトラッキングするiPhoneアプリをダウンロードするよう求められたが、アプリの目的は告げられなかった。次に、参加者を次の3つのグループにランダムに割り付けた。
測定意識群と測定意識+記録群の参加者には歩数計が配布され、2週間装着してもらった。さらに、測定意識+記録群の参加者には、毎日の歩数を記録し、2週間後にその記録を提出するように指示した。対照群では、歩数計は配布されず、歩数の記録も求められなかった。
[結果] 測定意識+記録群は、1日の歩数を増やしたが、測定意識群でも、1日の歩数を平均して388歩(SE=-186.9)増やした(p<.05)。
[結論] ウェアラブルモニターは1日の歩数を緩やかに増加させる。多くの人は、自分の行動が測定され監視されていると感じると、それに反応する傾向がある。測定されていることを重要と感じやすいからである。しかし、本研究では、毎日の歩数を記録することを追加しても、さらなる利点は得られないようである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
これまでにも、身体活動量を計測することの威力は報告されてきた。
それは、ホーソン効果、という理論に裏打ちされる。
ホーソン効果とは、「モニターされていることを意識すると行動が変わる」という効果だ。
先行研究では、身体活動量計を用いたRCTにおいて、介入群、非介入群ともに身体活動量が増した(📕Turunen, 2020 >>> doi.)。
すなわち、身体活動量計を装着→「身体活動量がモニターされるのだ」と意識することで、身体活動量の増大に向けた行動が促進されたわけだ。
だが、この身体活動量計を装着することの効果を、真に明らかにすることはできないだろうと思っていた。
なぜなら、非計測意識をつくり出すことができないからだ。
「自分はいま歩数を計測されている」と思っていない状態をつくることは、歩数計を渡した段階で不可能になる。どこまでいってもバレてしまうのだ。
驚いたことに、今回の研究では、携帯アプリと歩数計を2段階配布することで、うまいこと非計測意識を持たせることに成功していた。
目的に対する方法が秀逸な研究だ。
その結果は、やはり測定意識をもつことが、身体活動量の増大にとって重要であることが示唆された。
やはり、「測ることは育むこと」である。
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