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胸腰移行椎。それは胸椎か,腰椎か…


📖 文献情報 と 抄録和訳

胸腰椎移行椎:骨格遺物を用いた椎体の定量的分化とそれに伴う数値変異

📕Poolman, Anneli M., et al. "Thoracolumbar transitional vertebrae: Quantitative differentiation and associated numeric variation in the vertebral column using skeletal remains." Journal of Anatomy (2023). https://doi.org/10.1111/joa.13865
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✅ 前提知識:胸腰移行椎とは?
・移行椎は、頭側と尾側の境界が移動する際に、発育中の体節が重なり合ったために生じた異常椎骨である。
・罹患した椎骨は、隣接する2つの椎骨領域の解剖学的形態を併せ持つ。
胸腰椎移行椎(TLTV, ThoracoLumbar Transitional Vertebrae)とは、胸腰椎接合部における移行椎である。
・これにより、胸椎(T1-T11またはT1-T13)または腰椎(L1-L4またはL1-L6)に存在する椎骨の数が変化する可能性がある。

📕Du Plessis et al. Journal of Anatomy 232.5 (2018): 850-856. >>> doi.

[背景・目的] 胸腰部の移行椎は胸腰椎移行椎(TLTV)と呼ばれ、胸部と腰部の物理的特徴を保持している。TLTVは40年前に初めて分類されて以来、その特徴、同定、臨床的関連性に関して多くの相違がある。椎体レベルは、医療分野において、特定の臓器、血管、神経、またはランドマークを見つけるための参照枠として使用される。椎体の数値的なばらつきや逸脱は、臨床上の誤りにつながる可能性がある。これまでの知見では、数値のばらつきとTLTVの存在との間に高い関連性があることが示唆されている。したがって、本研究の目的は、観察されたTLTVの種類を同定し、関連する可能性のある椎体における数値のばらつきを特定することである。

[方法] 本研究はまた、南アフリカの集団から得られた骨格遺骨を用いて、胸腰椎接合部のT12とL1からTLTVを定量的に鑑別する確立された技術を検証することも目的とした。プレトリア骨コレクションからの骨格遺体(n = 187)を評価した。最終胸椎(T12)、第1腰椎(L1)の上頬骨突起の角度を測定し、TLTVを同定した。

[結果] TLTVの有病率は35%(n=66/187)であった。その結果、各椎体型(T12、L1、TLTV)は独立した信頼区間に入ることがわかった: T12は188°±9.22(CI:187°<μ<189.6°)、L1は110°±7.52(CI:109.2°<μ<111.3°)、TLTVは135°±24.51(CI:130.4°<μ<139.1°)であった。

[結論] 本研究では、TLTVを有する症例の70%が、脊柱のホメオティックおよびメリスティックな数値的変異と関連しており、TLTVの有病率は35%であることが観察された。この結果は、定量的形態分析が、骨格遺体において胸腰部接合部のTLTVと他の椎体タイプを効果的に鑑別できることを明確に示している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「胸椎は椎間関節が前額面に近く、腰椎は椎間関節が矢状面を向く。だから、胸椎では回旋可動域が大きく、腰椎では小さい。機能は形態に従うのだよ。面白いだろ」

解剖学の授業において、こんな説明を受けた学生は少なくないだろう。
僕も、その1人だ。
とても興味深く、解剖学×運動学のリンクの強さを感じたものだ。
そして、臨床においては、体幹回旋してもらっている最中において、胸椎、腰椎部の椎間関節を頭の中でイメージしながら、症状との兼ね合いを考えている。

だが、頭の中のペルソナ(典型的な像)を大幅に改変せねばならない。
改変というか、自由度を持たせなければならない。
腰椎といっても、胸椎のような形をしたものがある。
逆もまた然り。
さらに、1つの椎骨の中にも非対称性があるだと!?

こと椎体の関節面においては、頭の中の骨構造を固定化することなく、自由度を持ちたい。
そうすれば、不可解な関節可動域や症状の一部が説明されうるかもしれない。

Form follows Function
(形態は機能に従う)

ルイス・ヘンリー・サリヴァン

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