見出し画像

鍼治療×脳疾患

📖 文献情報 と 抄録和訳

脳疾患に対する鍼治療:発想、応用、探求

📕Gao, Xingzhou, et al. "Acupuncture for brain diseases: Conception, application, and exploration." The Anatomical Record 306.12 (2023): 2958-2973. https://doi.org/10.1002/ar.24884
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.

[レビュー概要] 脳はおそらく人体で最も複雑な器官である。様々な脳疾患の病態を深く研究し、効果的な治療法を見つけるために、世界中で脳科学研究のホットスポットであり、方向性となっている。鍼治療は、古代の臨床に由来する伝統的な中国医学の非薬物療法である。鍼灸による脳疾患の治療に関する研究は,学際的な研究の推進によって常に充実し,更新されてきた。本稿では,脳疾患に対する鍼灸治療の現在の成果を説明するために,発想,応用,探求の観点から鍼灸治療を概説する。文献レビューによると,過去数十年間,鍼治療は世界中で広く注目され,多くの文献が脳疾患治療における鍼治療の臨床的有効性と基礎的メカニズムを報告している。現在、脳疾患治療における鍼灸の概念、応用、探求は、経験医学からエビデンスに基づく医学、精密医学へと発展し、学際的な研究に基づいて脳機能を調節する鍼灸に関する情報の理解が深まっている。

■ 鍼治療 × 脳疾患?, 最近の治療根拠と背景
・鍼治療は、ツボや末梢神経を刺激して脳内の生体情報を処理・統合し、脳領域の機能を調整して脳疾患を治療することができる(📕Lee, et al., 2019 >>> doi.)
・黄帝内経には総督脈(Governor Vessel, GV)と脳との関連についての記録がある。
・GVと脳のつながりに関する近年の論文は、臨床家や研究者が脳疾患に対する鍼治療の重要性を認識するのに役立つ。例えば、銀牙(GV 29)、神庭(GV 24)、白妃(GV 20)、豊府(GV 16)、大嘴(GV 14)といったGVのツボへの鍼刺激は脳に影響を与える可能性がある(📕Yang et al., 2012 >>> doi.)

■ 鍼治療 × 脳疾患?:最近の出版論文数-全般
・ビッグデータ解析ソフト(Stork software)を用いて、検索された8,468件の結果を解析し、ビジュアルグラフィックスを出力したところ、以下のことがわかった
脳疾患に対する鍼灸治療の論文数は年々増加している
・1959年にChin Med Jに掲載されたてんかんの鍼灸治療に関する研究が、脳疾患に対する鍼灸治療に関する最初の報告である可能性がある(📕Feng et al., 1959 >>> pubmed.)

■ 最近の出版論文数 - 国別
🥇フランス🇫🇷
🥈アメリカ🇺🇸
🥉中国🇨🇳
・世界の脳疾患に対する鍼治療のマッピング。
・黄色から赤への色の変化は、発表された論文数が最小7件から最大2,552件であることを示す。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

鍼治療が脳疾患への介入!?

鍼治療について、ほとんど何も知らないこともあり、はじめはとても突飛なタイトルに映った。
だが、調べていくと、最近報告数が増えていて、さらに報告国をみると、しっかり目を見張っておく必要がある領域かもしれないと姿勢を正した。
まだまだ分からない部分は多いのだが、次第に科学的な根拠や背景も明らかにされつつあるらしい。

鍼治療は、例えば理学療法の徒手的な介入に比べれば、間違いなく身体の深部に刺激を与えることのできる手法だ。
そこにはやはり、適応する症状や疾患があるのだろうと思う。
ただし、侵襲が深く及ぶ分、リスクも大きくなることは肝に銘じる必要はあろう。

さらに、仮に万病に鍼治療が効くとしても、そこに終始してはいけないと感じる。
なぜなら、その治療は、どこまでも『受動的』であることを避けられないから。
以前の文献抄読の中で、『生命力パラメータ』というものを提案した。

✅ 生命力パラメータとは?
・全効果量に対する内発的効果の割合(%)。
・この数値が高いほど、当事者の内発的な努力によって得られた効果と解釈できる。
■ 内発的効果とは?
・自分自身の自発的な行動や努力によって得られた効果のこと。
・負荷に打ち勝って筋力を得ることに代表される。
■ 外発的効果とは?
・外的な操作によって得られた効果のこと。
・投薬や外科手術による効果に代表される。

この中で考えると、鍼治療による治療効果は、ほぼ外発的効果であり、その効果によって『その人自身の変化』は少ない
すなわち、風がやめば飛ぶのをやめてしまう凧よろしく、その治療が終了されれば、また元に戻ってしまう可能性が高い。
即時的な、対症療法的な、その時目の前の症状をストップさせること、には強そうである。
だが、そのあとには、やはり自分の力で空を飛べる『翼』を、その人自身に授ける必要があると信じる。

⬇︎ 関連 note✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集