オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その23
23. おっさんという名の時間
まずは飲むとするか。
お店の暖簾とドアを開けて
入っていく二人の後ろをついて行く私。
お店の中に入った。
一軒家の一階部分をお店にしている
ちょっとした飲み屋さんだ。
天ぷらを揚げている匂いがする。
「らっしゃい」
カウンターの中で大将が一人忙しくしていた。
カウンターには5人くらい座れる席がある。
椅子はあるのに座れなさそうな席が2つある。
おしぼりが入っている機械やら新聞やらが置いてあるので。
他に4人掛けのテーブルが3つほど。
2つは埋まっていた。
空いていた一番奥のテーブル席に向かい合わせに座った
先輩とおっさん。
どちらの隣に座ろうか。
ここはやはり先輩の隣か。
「いらっしゃいませー!」
お店の奥さんが奥から出てきて
おしぼりとお水を持ってきてくれた。
「とりあえず生3つ!」
チョッパー大野がいきなり注文した。
何を飲むかを選ぶ暇を与えられなかった。
これくらい強引だとかえって楽チンである。
おっさんが話し始めた。
「君は新人さん?」
「ええ。新人ですねー。」
おしぼりで顔を拭きながら
おっさんとチョッパー大野の二人が話をしている。
私は一言も話してない。
「出身どこなの?」
「大阪ですって大阪。」
顔を終えて今度は首を拭きながら話している二人。
「大阪かー。都会じゃん。何でわざわざ東京になんか来たの?」
「福岡も都会ですよー。内藤さん!」
チョッパー大野の出身地とおっさんの名前の
両方を一気に手に入れた私。
「失礼しまーす!」
生ビールが来た。
一杯目が最高にうまい。
これを飲んだら、もう帰りたい。
「何か食べたいものあったら、じゃんじゃん頼んでいいよ。」
おっさんの、いや内藤さんの顔を見ながら私に話すチョッパー大野。
ビールのジョッキを置きながらウンウンとうなずく内藤さん。
「でも大阪も結構、都会でしょ?
何で東京になんか来たの?」
内藤さんの質問に答えずにビールを飲んでいるチョッパー大野。
ついに私の話す番が来てしまった。
「たまたまというか。
音楽の専門学校が東京か神戸にしかなくて、
どうせなら遠い方がいいかなって思って。」
「遠い方がいいだって?さては失恋したな?
なあ、大野くん。失恋だって失恋。」
「何で俺に言うんです?どうせ俺は振られましたよ!」
チョッパーが白いヒゲをたくわえながら言った。
「失恋しようぜ。じゃんじゃんしまっくたほうがいいんじゃないの?
なあ真田丸!店に可愛い女の子がいっぱい居るじゃないかよ!
ところで誰がタイプなの?」
またその話がやって来た。
そっくりそのまま返してやろう。
「先輩は誰がタイプなんですか?って言うか
彼女いないんですか?」
なぜか内藤のおっさんが答えた。
「ゆりさんという奥方様が・・・」
「わーーー!」
おっさんが何か言おうとしたのを
「わー」でさえぎったチョッパー大野。
「いねえよ!彼女なんて!」
「・・・・・確かに。彼女ではないな。」
「もうその話はやめて下さいよ。俺は完全にフリー!」
誰だ?ゆりさんって?
新聞屋さんにそんな名前の人は居ない。
「おっ! 真田っちは飲むの早いね!さては強いな?
すいませーん!おかわりー!」
おっさんの時間が流れていく・・・
この日を境にチョッパー大野が
やたらと飲みに誘ってくるようになった。
ここから先は
真田の真田による真田のための直樹。 人生を真剣に生きることが出来ない そんな真田直樹《さなだなおき》の「なにやってんねん!」な物語。
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