夏祭りが開かれると、私は夏祭りブルーになる。
幼い頃の夏祭りは、いつもひとりで行っていた。
お小遣いは十分もらったけれど、とてもとても寂しかった。
周りの友達は、「夜から◯◯ちゃんと一緒に行くんだよ」なんて自慢げに話す。
私を誘っても、行かないことはわかっているから誘わない。
昼間の祭り会場は、人が少ない。ひとりでいると、なおのこと。そして、ひとりでいることが恥ずかしくて、クラスメイトがいると、そっと隠れた。
・・・
屋台を見ても、つまらない。
クジなんか引いても、またくだらないものにお金使ってると怒られるからできない。
焼き鳥は5本で500円で高いし、お肉は硬いし、美味しくない。
辛くて悲しい気持ちを、アイスと共に流し込んだ。
そして、300円のたこ焼きを買って、お腹を満たした。
人が多くなってきた頃、私は門限があるから帰る。人並みに逆らって歩く私の心を、ひどく締め付けた。
会場を出る間際、金魚すくいの看板を見つけた。
どうせ1匹も取れやしない。コツなんてわからないし。でも、ずっとやってみたかった。
私は初めて金魚すくいをした。
タモを使ってオレンジ色をすくう。
水辺を彩るお魚を必死で目で追う。
破れる。敗れる。
結局、1匹も取れなかった。
それを見かねたおじさんが、私に「参加賞だよ」と言って金魚が2匹入った袋を渡してくれた。
とても嬉しかった。ただただ嬉しくて、新しい友達ができたようだった。
帰り道も金魚と一緒だから、寂しくなくなった。
少しだけ、お祭りが好きになった。
でも帰宅して、案の定怒られた。
けれど「持ってきてしまったのは仕方ない」と、怒りながらも小さな瓶に入れてくれた。私は自分の勉強机の近くへ運んで、ずっと眺めていた。
・・・
そして、家族で食卓を囲む頃、遠くで花火の音が聞こえる。
また私は今年も花火が見れなかったなぁと落ち込む。
何年も何年も。私は花火が観たいと憧れることになる。
翌日、もらった金魚が水の上に浮いていた。悲しくて悲しくて、私は家の近くを流れている川へ行き、金魚たちを解放した。
夏祭りの命は短くて、脆くて、寂しい。そんなイメージをずっと持つことになる。
・・・
そういえば、私は今でも友人と花火を見た思い出がない。
今年も無理みたいだけれど、明日彼とお祭りと花火を見に行くのだ。
幼い頃から描いていた浴衣デートの夢が、叶えられいく嬉しさは、どう表現したらいいのかわからない。
初めて着るから、キチンと着れるかどうかもわからない。それでも、見せたい人がいるから頑張って着たいと思う乙女心。
夏祭り、今年は好きになれそうな気がする。
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