見出し画像

映画『マリア・ラーション 永遠の瞬間』

2008年/製作国:スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、ドイツ/上映時間:131分
原題
 Maria Larssons eviga ogonblick 英題 Everlasting Moments
監督 ヤン・トロエル



予告編(海外版)


STORY

 女性蔑視は当たり前の、20世紀初頭。物語の舞台はスウェーデン南部の港街マルメと、その近郊の街リムハムン。
 裕福ではないフィンランド移民の女性、マリア・ラーションは、くじの当選により偶然手に入れたカメラで写真を撮り始める。するとマリアの豊かな感性は翼を得て解き放たれ、観る者を魅了する永遠の瞬間ときを生み出してゆく……
 
 実在した女性写真家の人生を、その長女マヤの目を通して描く、心に残る物語り。
 

●もう少し詳しくSTORY等を知りたい方はこちら ⇩ の記事をどうぞ



レビュー

 20世紀前半のスウェーデンを舞台に主に低所得階級の人々を描く本作は、実話(マリア・ラーションの長女の回想)を起点として制作された、歴史ドラマであり、芸術賛歌であり、女性の社会進出を描いた物語であり、そしてひとりの女性の「愛」と「戦い」、「恋」と「友情」の物語でもあります。

 
 主人公の主婦マリア・ラーションは、「日雇い肉体労働者」+「アル中」+「DV」+「浮気」夫(優しい面もあり)との間に7人の子を持つ母親で、当然ながら生活は苦しく、家庭内暴力は「日常茶飯事」という状況。完全に人生が詰んでいます……
 しかしその「完詰かんつみ」状態のマリアの元に、ある日突然、救世主セバスティアンが舞い降り、救い出してくれるのです。セバスティアンはマリアに写真を撮ることを勧め、そして丁寧にサポートしてくれる優しいデンマーク人の写真館店主。
 その出会いが、マリアの人生を大きく変えてゆくこととなります。
 
 光、人々、風景、そして様々な命の煌めきを、丁寧で愛おしい眼差しを通して写しとってゆく主人公。
 全編に渡りセピアブラウンに統一された画面の色調が、その姿を温かく包み込み、マリアがセバスティアンに教えてもらった写真を撮るときの掛け声、「ピフ・パフ・ポフ」を優しく発する姿が、観る者の心を癒します。
 感情に静寂の風を齎し、情熱の炎をも灯してくれる、珠玉の一本。

 ※写真好きな方には、特におすすめです
 あとヤン・トロエル監督は、猫、犬、植物等を魅力的に撮る名手でもあります


余談

 ヤン・トロエル監督の素晴らしい作品達が、もっと日本にて紹介されますよう、心から祈っております。
 ちなみに本作は、クライテリオンのBlu-rayを個人輸入し鑑賞しました。特典映像も充実しており、全編英語の字幕付きで、メイキング、ヤン・トロエル監督の人生を追ったドキュメンタリー、そして(下にリンクをぺタリンコした)マリア・ラーションに関するドキュメンタリー、予告編、が収録されており、「流石クライテリオン!」という仕様でした(当然「解説書」の出来も文句なし)。

 


マリア・ラーション等の写真を少し見ることの出来る(本作に関する)ミニドキュメンタリー

 どの写真も魅力的ですけれども、とりわけ0:50~家族写真、1:04~のマリアと夫(娘のマヤが撮影したもの)、4:35~男の子と犬(光の美しさ、男の子の表情)、の3枚に強く惹かれております。
 ※他にもとても惹かれるものが数枚。
 

この記事が参加している募集

#映画感想文

67,494件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?