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峰庭梟
2021年11月25日 00:31
誰でも思い出したくない過去というのがあるでしょう。あるところに、一人の旅人がいました。その旅人もそうでした。心に深い傷を負っていました。そして彼は、その辛い過去から逃げるように旅を続けていたのです。ある日、そんな彼にこう言う者がいました。「そんなに辛いことがあるのなら、酒でも飲んで忘れるがいいさ」すると、旅人は答えました。「でも、酒を飲むとつい、辛いことを思い出してしまいます」
2021年11月23日 05:48
仲睦まじい夫婦がいました。恋人時代からずっと仲が良く、結婚してからもそう。互いの友人はこの二人のことをよく話題にしたものでした。ところが、近頃妻の方が塞ぎ込んでいる様子です。夫がどれだけ理由を尋ねても、妻は頑なに答えようとしないのです。たまりかねた夫は言いました。「もし、何か、僕が君を不愉快にさせているのなら、どうか教えてくれ。そうしたらちゃんと謝るし、直せるところは直すようにするから
2021年11月20日 13:54
絵を描くのが大好きな少女がいました。少女はいつも外に出ては、お気に入りのクレヨンで風景を描いていたのです。 その日も少女は公園で絵を描いていました。朝からとてもいい天気だったのです。 少女が画用紙に絵を描いていると、画用紙の上にちょこんと何か白いものが乗りました。どうやら、空から落ちてきたようです。 それは少女の手の甲くらいの大きさで、綿の塊のようにも、なにかの繭のようにも見えました
2021年11月19日 00:29
自分のことが嫌いな男がいました。男はこれまで自分がしてきた選択は、どれもすべて間違っていたような、そんな気がしていました。ああ、あのときこんなことをしなきゃよかった。が、男の口癖でした。朝、起きると男はあくび混じりに呟きます。「もう朝か。あんまり寝れなかったな。昨日もっと早く寝たらよかった」昼間、会社で男はこう呟きます。「ああ、つまらない。もっと別な仕事ができたらいいのに。若い
2021年11月16日 00:31
ある日、神様が天使に言いました。「世の中には、優しい人間もいれば、そうでない人間もいる。それはそれで仕方のないことだが、優しい人間には、そうでない人間よりも、何かよいことがあってほしいものだ。そこでお前に頼みがある。ここに、見えるようで見えない粉がある。とても美しく輝いている粉だ。お前はこれから天の下に降りていって、誰か優しい人を見かけたら、頭の上からこの粉を振りかけてやりなさい。
2021年11月13日 12:06
蜘蛛という生き物について、君はどう思うだろうか。あんまりいい印象は持たないかもしれない。そうだよね、僕だってそうだ。まあ、そもそも僕が、その蜘蛛なんだけどさ。ある日のこと、仕掛けた罠に一匹の蝶がかかっていたんだ。それはそれは美しい羽を持った蝶だった。そのとき、不思議な気がした。僕は自分の糸がその蝶の羽に絡まっているのが許せなくてね。せっかく仕掛けた罠だったけど、自分で糸を切ったんだ。
2020年11月7日 13:50
飛ぶことなどできるわけがない。かつて世界の果てで、そう呟いた魔女がいました。 その言葉は力を持ち、呪いとなって世界を覆ったのです。そう、それは今よりも、ずっとずっと昔のこと。 それからというもの、この世界から空を飛べるものはいなくなってしまったのでした。 鳥も、蝶も、空を飛ぶものはすべて、この世界から消え失せてしまったのです。 しかし、老人たちは過去を覚えていました。かつてはこの