早川忠宏/Sports PR Japan (株)代表取締役

スポーツの仕事をしている人にプラスになる情報、知見を発信します。略歴は https:/…

早川忠宏/Sports PR Japan (株)代表取締役

スポーツの仕事をしている人にプラスになる情報、知見を発信します。略歴は https://sportspr.jp/about/

マガジン

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あとがき

私は「スポーツに関わる“常識破り”の価値を広めて、常識にする」を胸に、仕事をしています。 この「スポーツPR ミニミニ講義の実況中継」は 「前例がない」「できるわけがない」「それはきれいごとだ」 などの声に負けずに挑戦している方に、ヒントになる考え方を伝えること を目的とし ・スポーツ関連事業を行っている企業・組織で働く方 ・スポーツ関連ビジネスの個人事業主 ・現役アスリート、元アスリート 向けの短い講義として、2020年9月から始めました。 コロナ禍で身動きが取

    • スポーツベッティングと法律

      スポーツベッティングとは、スポーツの試合を対象にした賭け事のことです。 どの国でも、ギャンブルは法律の下で管理されています。 日本では競馬、競輪、競艇、オートレースがありますし、スポーツくじと称される野球やサッカーの試合を対象にした賭け事もありますが、いずれも法律の下で認められた地方公共団体や法人が施行する形になっています。 海外では、イギリスでは1960年代から政府が公認したブックメーカーが知られていますし、アメリカでは2018年に各州が独自に対応できることになり、スポー

      • 女性記者がロッカールームに入る権利

        スポーツ記者をしていたとき、日本のみならず、アメリカやヨーロッパ、東アジアなど様々な国で取材をすることができました。 日本やヨーロッパの場合は、選手がロッカールームから出てきて、通路や少し広いスペースでインタビューをするというのが通例です。しかし、アメリカでは記者の権利が少し強く、ロッカールームに入って取材をすることができます。皆さんも、日本人メジャーリーガーのインタビュー映像でロッカールームで撮られているものを見たことがあるかもしれません。 ロッカールームは選手が着替え

        • 試合に関する法律

          ここまでは、主に選手に関わる法律の話をしてきましたが、今回は試合に関する法律の話をしていきます。 まず、試合そのものに著作権はあるのでしょうか? 著作物とは、日本の法律では「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています。スポーツは身体活動であって、著作物とは言えません。 また、アメリカでは、1976年の著作権法において、スポーツイベントは著作権が発生するイベントではない、とされています。法律に列挙されている例に

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        • サクッと聞けるビジネスティップス【3本セット】
          早川忠宏/Sports PR Japan (株)代表取締役
          ¥2,600
        • 初心者歓迎! スポーツPR 入門編
          早川忠宏/Sports PR Japan (株)代表取締役
          ¥300

        記事

          スポーツ選手とパブリシティ権

          皆さんの周りには、スポーツ選手の顔が描かれたグッズがあったり、スポーツ選手が起用されている広告があったりするでしょう。これらはもちろん、スポーツビジネスの一環で、そこに関わってくる法律がパブリシティ権というものです。 これとよく間違えられるものに、肖像権というのがあるので、この二つの違いを先に説明しておきます。 肖像権というのは、みだりに容貌や姿を撮影、公表されない権利のことです。端的に言うと、無断撮影に関わることです。 スポーツ選手や有名人ではなくても、誰にでも当てはま

          スポーツビジネスは商標が大事

          商標という言葉に馴染みがないかもしれませんが、スポーツが大好きな人なら、必ず目にしているものです。例えば、スポーツチーム名、チームのロゴ、マスコットキャラクターなどがありますし、スポーツ用品メーカーのロゴも商標です。 商標とは、商品やサービスを他のものと区別するためのマークであり、商標法にそのルールが定められています。 まず、商標というのは特許庁に登録をしなければなりません。それが認められると、商標権を持つ人はその権利侵害に対して損害賠償請求や差し止め請求といった法的措置

          スポーツビジネスは商標が大事

          メディアと名誉棄損

          スポーツに関してメディアが結果や競技面から取り上げる範囲を広げていくと、名誉棄損になるケースが出てきます。例えば、有名なスポーツ選手のプライベートな部分を報じる場合などです。 また、スポーツの仕事をしていると、選手ではなくてもメディアに取り上げられる機会も出てきます。また、インターネットを通じて自らや自分の所属する組織が発信する側にも回っています。名誉起訴についてに知っておくと助けになるでしょう。 日本の法律において、名誉毀損は刑法230条に定められています。 刑法23

          報道の自由の根底にあるものは?

          前回話した「表現の自由」についてもう少し掘り下げます。少々難しい話になってしまいますが、大事なことです。 「表現の自由」とは、すべての見解を検閲されたり、規制されたりすることなく、表明できる権利のことです。個人が表現したり、発表したりする自由だけでなく、報道、出版、放送などの組織による自由も含まれます。 歴史を振り返ると、「表現の自由」の重要性については、主に三人の識者が主張し、社会に浸透するのに大きな役割を果たしたと見られています。 1600年代に活躍したイギリスの思

          報道の自由の根底にあるものは?

          スポーツメディアと法律

          今回から「スポーツメディアと法律」をテーマに話していきます。 選手を取材して、メディアが報じるという関係において、常にどこまで話すか、どこまで報じるかという緊張関係があり、それが法律の問題になることも珍しくありません。歴史を振り返っても、メディアが訴えられたケースがいくつもあります。 法律では、メディアの側には、「表現の自由」という憲法で保障をされた規定があります。 過去の最高裁判例において、事実の報道の自由については、表現の自由を規定した日本国憲法第21条の保障の下にあ

          ドーピング問題とスポーツメディア

          スポーツの負の側面として、ドーピング問題は切っても切り離すことのできないこととなってしまっています。 選手が好成績を挙げたいと思い、違反薬物を使用して運動能力を高める不正行為です。もちろん、オリンピックをはじめとしたあらゆる大会、競技で禁止されています。1970年代には顕在化して、今日まで続いています。 大きな衝撃があった例を挙げます。 1988年ソウルオリンピックの男子100mに出場したベン・ジョンソン選手が、競技後の検査で違反が発覚し失格。陸上界ではアメリカ女子のスタ

          ドーピング問題とスポーツメディア

          障害者とスポーツメディア

          スポーツメディアによってつくられているものの見方についての話は、まだ続きます。 これまで話してきたように、スポーツは社会を反映していますし、スポーツは社会に変化を起こすこともあります。 このことは、障害者が描かれたり、融合したりする点でスポーツにも当てはまります。 Howard L. Nixon, IIが2000年に書いている「Sport and Disablity」によると、その前の20年で、メディアは健常者と共に、もしくは対してプレーする障害者アスリートの姿を、以前よ

          ナショナリズムとスポーツメディア

          スポーツメディアによってつくられているものの見方について、これまで人種とジェンダーの話をしてきました。 今回は、ナショナリズムです。 国語辞典の定義で言うと、ナショナリズムとは、 「国家または民族の統一、独立、発展を推し進めることを強調する主義、運動」 となっています。 Lawrence Wenner博士が1998年に出した書籍「MediaSport」では、このように定義されています。 ナショナリズムとは、その国の人々の習慣を形成し、生み出し、強化する倫理的・文化

          ナショナリズムとスポーツメディア

          スポーツメディアと女性に対する見方

          前回は、人種に関してスポーツメディアによって、ものの見方がつくられているという話をしました。 もう一つ大きな分野で、女性に対する見方も、スポーツメディアが影響しています。 Dr. Pedersenの2002年の論文(Investigating interscholastic equity on the sports page)やその他の論文が明らかにしたように、まず女性アスリートがメディアに取り上げられる量が男性アスリートに比べて少ないです。 メディアに取り上げられる量が少

          スポーツメディアと女性に対する見方

          なぜ「黒人選手は身体能力に優れる」と思ってしまうのか?

          前回、メディアが本当につくっているものは、ものの見方であるという話をしました。 そして、取材した人であっても報道を見た人であっても、自分のステレオタイプな価値観で判断してしまい、それは避けられないということも話しました。 ちょっと難しい話でもあるので、今回は、メディアによってつくられたものの見方で、スポーツ界の代表的な例を一つ紹介し、理解を深めてもらいたいと思います。 それは、いわゆる黒人選手、アフリカ系選手にまつわるものです。こう言っただけで、ピンとくる人もいるでしょう

          なぜ「黒人選手は身体能力に優れる」と思ってしまうのか?

          「メディアがつくっているもの=記事・番組」じゃない

          皆さんも、日常生活の中でテレビを見たり、ネットの記事を見たりしている時間が、毎日いくらかあると思います。 最近は家にテレビがないという人も結構いますが、だからといってメディアに触れることが一切ないという人は稀でしょう。ニュースサイトやニュースアプリを直接見ないという人でも、SNSを通じてニュースを知っているはずです。 これらのニュースがどうやってつくられるのかというのを、元スポーツ記者の経験に基づいて言います。まず最初に、どれをニュースとして取り上げるのかというのが来ます。

          「メディアがつくっているもの=記事・番組」じゃない

          よく使われるリサーチ方法~デプスインタビュー

          リサーチ方法について、もう一つだけ、非常によく使われている方法に触れておきます。  デプスインタビューと言います。  対象者と聞き手による一対一の調査方法です。  「インタビュー」は意味がわかると思いますが、「デプス」とは、英語で「ディープ」の名詞形で「深いところ」の意味。つまり、深いところまで掘り下げて話を聞くということです。 心理や行動の背景を探る時 仮説を立てる段階で方向性やアイデアを集める時 大規模なサーベイ調査を行う前に設問の内容や項目を精査する時 このような

          よく使われるリサーチ方法~デプスインタビュー