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障害者とスポーツメディア

スポーツメディアによってつくられているものの見方についての話は、まだ続きます。

これまで話してきたように、スポーツは社会を反映していますし、スポーツは社会に変化を起こすこともあります
このことは、障害者が描かれたり、融合したりする点でスポーツにも当てはまります。

Howard L. Nixon, IIが2000年に書いている「Sport and Disablity」によると、その前の20年で、メディアは健常者と共に、もしくは対してプレーする障害者アスリートの姿を、以前よりも多く取り上げるようになった、と指摘しています。

例えば、1990年代に活躍したメジャーリーガー、ジム・アボット投手。先天性右手欠損という障害を抱えながら10年も活躍したことで、アメリカだけではなく、日本でも知られています。

また、右脚に難病を抱えて障害があり、痛みや腫れに対処しながらしていたゴルファー、ケーシー・マーティンという選手もいました。2000年にPGAツアー出場権を獲得しましたが、その名が一躍広まったのはPGAにカートを使用してのラウンドを請願し、却下されたことでした。彼はそれを不服とし、PGAを提訴。ゴルフ、スポーツを超えた議論となり、4年にわたる裁判の結果、勝訴しました。


日本では、2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まった後、つまり、2013年9月以降、障害者スポーツに関する報道が次第に増えていきました。
当時、日本ブラインドサッカー協会の広報担当を務めていた私の経験からすると、新聞社やテレビ局に障害者スポーツ担当者が設けられ、年間を通じて国内外の大きな大会をカバーするという変化がありました。それ以前は長年、パラリンピックのある年にいくらか報じられるものの、それ以外ではほとんど見られないという状態が続いていました。

そして、障害者スポーツや、パラアスリートについて多く報じられることで、より多くの人が障害について理解を深め、また障害者が置かれている状況についての知識も増やしたことでしょう。

日本財団パラリンピックサポートセンター パラリンピック研究会紀要にある中村真博氏の「パラスポーツが共生意識に及ぼす影響に関する一考察(2)」には、大会後に、パラスポーツ、共生社会、ダイバーシティ・多様性、インクルーシブ・インクルージョンなどの言葉の認知が上がっていると書かれています。

他にも、2020東京オリンピック・パラリンピック前後で、人々の意識に変化が起きていることを調査した研究はあります。
障害者スポーツとそれを取り上げるスポーツメディアによって、日本に変化が起きたと言えるでしょう。

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