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ナショナリズムとスポーツメディア

スポーツメディアによってつくられているものの見方について、これまで人種とジェンダーの話をしてきました。

今回は、ナショナリズムです。

国語辞典の定義で言うと、ナショナリズムとは、

「国家または民族の統一、独立、発展を推し進めることを強調する主義、運動」

となっています。

Lawrence Wenner博士が1998年に出した書籍「MediaSport」では、このように定義されています。

ナショナリズムとは、その国の人々の習慣を形成し、生み出し、強化する倫理的・文化的規範を意味するステレオタイプを用いることによって生まれる、一種の国家神話づくりである。

Nationalism is a type of national mythmaking that comes about by using stereotypes that signify the ethical and cultural norms that shape, generate, or reinforce habits among the nation's citizens

いずれにしても、ナショナリズムは、メディアを通じて強化されており、特にスポーツメディアの影響は大きい、と言わざるを得ません。その国の人が一つにまとまっているイメージを生み出す非常にわかりやすい方法が、スポーツであるからです。

サッカーの代表チームの試合を応援している場面が、代表的な例です。国旗がデザインされたモノを持って応援している人の姿、声を合わせて国名を叫び応援する人の姿など、スポーツ以外のイベントではなかなか見られません。4年に1度、ワールドカップという世界的に大変人気のあるコンテンツがあり、その開催地には多くのメディア関係者が集まって、競技以外のところも大量に報じられます。

もう一つ、オリンピックもナショナリズムのイメージが強く広まる機会になっています。

歴史を振り返ってみると、1936年のベルリン・オリンピックがその代表例と言われています。
アメリカにあるホロコーストミュージアムのホームページによると、「ナチスドイツは新しく強い統一されたドイツのイメージを保持する一方で、ドイツの膨張する軍国主義とともに大勢の反ユダヤ主義と人種差別主義政策を隠しました」とあります。また、「オリンピックを利用して、外国人の観衆や報道記者に平和で寛容なドイツのイメージを印象付けました」とも書かれています。

当時でも、オリンピックの注目度は高く、数多くのメディアが現地を訪れ、報じられました。その機会を国家が利用したのです。

また、スポーツメディアを通じて、ある国のステレオタイプが強調されることもあります。ブラジルと言えばサッカー、ニュージーランドと言えばラグビー、カナダと言えばアイスホッケーなど。それと同時に、なぜそうなるのかといった文化的な背景や歴史が紹介されたりします。

ワールドカップやオリンピックのようなメガスポーツイベントでは非常に多くの報道がなされ、スポーツはその国の価値や信念、特徴をつくったり、強化したりするのに使われ、それによって、その国の人々が一つにまとまる方向性を生み出すことに繋がっています。繰り返しになりますが、この点において、スポーツメディアの影響は大きいです。

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