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短いおはなし

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原稿用紙10枚ほどのおはなしがメインです。長くなったら連載にします。 【短編小説】10枚〜100枚 【短め短編小説】3枚〜10枚 【脚本】10枚前後
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#超短編小説

【短め短編小説】2126年、永遠の平和 #シロクマ文芸部 #平和とは

【短め短編小説】2126年、永遠の平和 #シロクマ文芸部 #平和とは

 黒髪の美女、リリはそう言って私の部屋で微笑むと、オレンジ色のタブレットを口に放り込んだ。

 とはいうものの、彼女は空間に映し出されたCMの三次元イメージだ。地球人口が2億人まで急減し、人類が絶滅の危機に晒される2126年、視聴者は、動くイメージをいつでもどこでも好きなように映し出すことができる。

 リリは完美生活製薬のイメージキャラクター。完美生活製薬は、何があろうと日々、至福感で満たされる

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【短め短編小説】〈存在〉の物語 #シロクマ文芸部 #書く時間 #SF

【短め短編小説】〈存在〉の物語 #シロクマ文芸部 #書く時間 #SF

「書く時間ですよ〜!」
ジュールの声が真っ白な部屋に響き渡る。

 すると、青く光り輝くウニート達は、数え切れないほど並ぶ机に一斉に着く。机の上にはレモン色の優しい光を放つ角の丸い正方形のタイルが置かれている。私達ウニートは、レモン色に光るタイルに向かって思い切り物語を綴る。

 私達が書くのは、この世に存在するすべての〈存在〉の物語だ。有機物も無機物も――つまり、生きているものも、そうでないもの

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【短め短編小説】A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 3 徹君の場合 (2790字)

【短め短編小説】A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 3 徹君の場合 (2790字)

【これまでのお話】
A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 1 私の場合
A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 2 泉先生の場合

 こんにちは。竜崎蓮の12年来の友人、藤澤蘭子です。今日も蓮の話をしたいと思いますが、特異体質を持つ蓮のことを分かっていただくためにデータシートを作成しました。初めて蓮の話を聞かれる方はぜひ目を通してください。蓮のことをすでにご存じの

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【短め短編小説】『A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 2 泉先生の場合』《A bit Painful but Heart-warmingなお話》(2418字)

【短め短編小説】『A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 2 泉先生の場合』《A bit Painful but Heart-warmingなお話》(2418字)

蓮の不思議な体質 (前のエピソード「私の場合」をお読みくださった方は「泉先生の場合」へどうぞ。

 前回、私こと藤澤蘭子は、竜崎蓮と自分の一風変わった友達関係について話しました。そして蓮の不思議な体質のことも……。
 蓮は他人に触れた途端、その一触れでその人の苦しみを一瞬にして体に取り込み理解します。そして、その苦しみの度合いに合わせてその人に寄り添い、癒やすという運命を背負っています。やがて取り

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【短め短編小説】『A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 1 私の場合』《A bit painful but Heart-warmingなお話》(3455字)

【短め短編小説】『A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 1 私の場合』《A bit painful but Heart-warmingなお話》(3455字)

 英語で”a brush”は、「一触れ」……ちょっと触れることという意味がある。
 そして、私の元彼、竜崎蓮は、この一触れに纏わる不思議な体質のおかげで大変な人生を送っている。蓮と私が別れたのも、その体質が原因だ。
 でも私は、蓮と別れることにはなったけれど、その特殊な体質のおかげで救われた。

 蓮と私が出会ったのは、私達が大学4年の夏だった。
 私は涙で顔をぐちゃぐちゃにして、清水公園の噴水の

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