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『骨/詩』
小柄で華奢なあの子の
細い足首と小さな足
お人形のような小さい靴を履いている
あの子がかわいいのは顔ではなくて骨
その折れそうで細い骨がかわいい
あの子に出逢ったのは春だから
棺の中には春の花を
たくさん敷き詰めてあげる
燃えて骨になったあの子を
小さなシュガーポットに入れて
月が良く見える窓辺に飾りたい
真夜中のお葬式ごっこ
すっかり紅茶が冷めてしまったわ
『花占い/詩』
死んだ花の花びらをちぎりながら
スキとキライを繰り返す
最後の一枚がスキでもキライでも
どうでもよくて
あなたがわたしをキライでも
わたしがあなたをスキだという
事実は変わらなくて
その事実がわたしにとってのお薬で
今日も息をしていられる
明日は溺れているかもしれない
だからわたしは口を噤んで
花を殺める
『エンジェルリング/詩』
砂糖をしきつめたタッパーに
輪切りのレモンを重ね
蓋をして冷蔵庫で寝かせる
天使の輪っかみたいだね
あの子の視線の先に映るものが
わたしでなくても わたしは悲しまない
永遠という言葉が好きだった
永遠を選んで
永遠の砂糖漬けとなったあの子
窓辺のサンキャッチャーが
光の粒を作り出す
きれいだね
あの時のあの子もきれいだった
わたしは永遠にあの子を赦さない
『魔法少女/詩』
あの子のようになりたくて
プラスチックの赤いペンダントが
わたしの胸元で
キラキラと光を反射させる
大丈夫だよ
わたしを呪うその言葉
混沌 破壊
でも最終回はラブ&ピース
苺パフェをぐちゃぐちゃに
かき混ぜたみたいな世界は
あの子が守ったバラ色の世界
二本目の煙草が灰になる
救うよりも救われたい
弱いわたしは魔法少女
かわいい服を着て
かわいく滅んでしまいたいの
『画面越し/詩』
ぽろぽろと
無音の悲鳴を上げながら剥がれ落ちる
ぼくを形成している極彩色のピース
今までありがとう 幸せになります
きみの幸せの外側のぼく
落ちたピースをひとつひとつ大切に拾い集め
引き裂いた枕に詰め込んだ
消えないように
忘れないように
具合の悪い枕で大粒の涙を流しながら
海の底で窒息するように眠りにつこう
歌うことを忘れてしまったきみへ
ぼくはきみが好きでした