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マーケティングと広報の違い #3~日常業務の内容とその誤解

「広報」と「マーケティング」― この2つの機能の違いが何なのか?今回はこの違いを日常業務でどういうことをやるのかということと、陥りがちな状況とあるべき姿についても見ていきます。

前回の記事:

マーケティングの日常的なお仕事

マーケティングの職種

「顧客と繰り返し長く関係を持つ」マーケティングの仕事については、ある程度以上大きなマーケティング組織では分業が進んでいます。よく「マーケティング4P」というフレームワークが使われますが、大まかにはこの分類に従って分かれていることが多いです。すなわち製品・サービス系 (Product + Price)、チャネル系 (Place)、プロモーション手法・分野 (Promotion)の3つに大別されます。

一番目の職種はブランドマネージャーカテゴリマネージャー (主にB2C)、またはプロダクトマネージャーなどと呼ばれます。二番目の職種はチャネルマーケティングマネージャーパートナーマーケティングマネージャーなどと呼ばれます。

三番目の職種は「~マーケティングマネージャー」のように手法名で呼ばれることが多いですが、会社により様々な名前で呼ばれています。日本語だと「販売推進 (販推)※」「販売促進 (販促)」「営業支援」などと呼ばれていることもあるようです。分野についてはコーポレートブランドの訴求であればコーポレートマーケティングマネージャー、業種・企業規模・世代のセグメントに特化したマーケティングマネージャーがいる場合もあります。コーポレートマーケティングはその目的から広報とも距離が近い仕事です。

また、プロモーション手法・分野の他に、市場調査に特化したマーケット・インテリジェンスアナリスト・リレーションズの部隊、CRMシステム等のマーケティングテクノロジーや予算、KPIの管理といったオペレーションを管理しているマーケティング・オペレーションズの部隊がいることもあります。

※ 富士通用語では、販推というとProduct+Price (+Promotion)の職種のことを指します。

プロモーション実施は業務のほんの一部

さて、マーケティングというと華々しく広告を打ったり、イベントやセミナーを実施したり、ウェブページでキャンペーンを実施したり、というプロモーション業務が目立つかもしれません。製品・サービス系のマーケッターの人は担当製品・サービスについてプレゼンテーションやデモを行う場合もあるため取材でも取り上げられ華々しく映ることもあります。他の部門の人たちから見ると、マーケティング部門ではこれらのプロモーション実施を日常業務としてやっているのだと映るかもしれません。

しかし、マーケティング業務全体で見ると、プロモーション実施というのは業務のほんの一部でしかありません。マーケティング業務は大きく分けて戦略の作成戦略の実行に分かれており、プロモーション実施は、作成したプロモーション戦略を実行する「プロモーション戦略実行」(以下の図だと右下の部分)として見えているわけです。年度の終わりから始めにかけては主に戦略作成に集中し、営業の刈り取りから逆算して適切な時期にプロモーションを集中的に実行するといった季節性もマーケティング業務にはあります。

マーケティング業務の全体像

参考記事:

発注屋になるのは避けよう

さて、大手企業のマーケティング部門にありがちなのですが、プロモーション実施業務を中心に業務の大部分を外注しており、担当者は発注業務しかしていないというケースです。

マーケティング業務は、たとえばイベント会場の準備や装飾、ロジをまわしたり、ウェブサイトのインフラ構築をしたりと、結構専門的で職人的なスキルが要求されるものが多くあります。これらを全て内製で賄うことは効率が悪く事実上不可能なため、どの企業でもある程度の外注を行っており、いわゆる「ゼネコン構造」の性格があります。元請けから代理店に発注すると、ディレクション業務を残して専門的な下請け業者にそれぞれ再発注するといったことが結構行われています。

しかし、近年主流になりつつあるデジタルマーケティングでは、施策の設置から実施まで自分たちだけで内製で出来ることが増えています。ブログ作成、メールマーケティング、動画やSNSの投稿など、いまやちょっと投資すればYouTuberなどの個人でも立派なモノを作成して稼げる時代になっています。このデジタルマーケティングまでも従来の施策と同様に丸投げ外注してしまっていては、そのスキルが社内に貯まらないばかりかとても高コストな体質になってしまいます。

筆者も見積書の内容を見ていて、突き詰めれば1/10の費用で出来たり、ゼロ円で出来てしまうものを多く見つけることがあります。大手代理店や下請け先も最新のマーケティングテクノロジーに追いついていないことも多く、無駄なリスク費用を載せていることもあります。

デジタルマーケティングについては、外注でなく内製でやりきる「ゼロ円マーケティング」の精神で、常に最新のテクノロジーをキャッチアップして自分で使ってみることが、これからの時代は求められます。いろいろ調べてみると、デジタルマーケティングはお金をかけなくても出来ることが本当に多いのです!

広報の日常的なお仕事

専門分野による役割分担

さて、「世の中における組織の価値 (=ブランド価値) を向上させる」広報にの仕事ついても見ていきましょう。広報についても、周りから見ると分かりやすいのはプレスリリースの発行を担当していたり、プレス発表会で司会をして仕切っていたりといった「会社の発表事項を管理している」業務でしょう。

広報担当者が数人以上いる場合には、専門分野別に役割分担をしている場合が多いです。専門分野は会社によって分け方が違い、「コーポレート系」「社会貢献活動系」「IR系」「業種別」「製品・サービス別」などによって分けられている場合があります。

業務内容としては、プレスリリース・プレス発表会対応の他に、メディアとの関係構築 (Media Relations)の中での取材対応や事件発生時の危機対応が求められます。その他に、会社によってはSNS・ブログの投稿やイベントの企画、社内コミュニケーションを担当している場合もあります。これらはマーケティング部門の業務との境界線上にあり、会社の方針によりどちらの部門で実施しているかが異なっています。

マーケティングとの連携がより密接になりつつある

前の記事で書いた通り、インターネットの時代になってからメディアを通さないで直接公衆に訴えかけることができるようになったため、マーケティングとの垣根が低くなってきました。

そのため、プレスリリースの出し方や日時の調整、プレスリリースの内容での連携、マーケティング戦略を考慮した製品・サービス発表プランの準備、ブログ・SNSの投稿連携など、広報とマーケティングで連携できるポイントがより多くなってきており、今までにも増して両部門の連携が求められるようになってきています。

参考記事:

戦略の重要性

広報業務もまた、大まかには戦略の作成と実行に業務が分かれています。普段周りから見えているのは「戦略の実行」になりますが、年度の終わりから始まりにかけては、過去一年間の広報活動をしっかり見返してレビューを行い、新しい一年の戦略に反映していきましょう。

リリース記事でもマーケティングの要素を取り入れ、雰囲気の形成、価値観の提供、第三者による拡散を狙った「戦略PR」の手法を取り入れたり、ストーリーやナラティブを意識したメッセージ発信の構造を意識したりと、広報活動によって何をどのように達成したいのか、社会の中での組織のポジションをどのように取って、どのように組織やブランドの価値向上につなげるのかの戦略を作成し、KPIの計測をしていくことが広報部門にも求められます。

リリース作業屋になるのは避けよう

広報業務で一番避けたいパターンは、各事業部から送られてくるリリース原稿をひたすら処理するリリース作業屋に終始することです。プレスリリースは数を出せばいいというわけではなく、前に述べた通り会社全体としての戦略とストーリーやナラティブが必要になります。

ボトムアップで出てくるリリースをひたすら出していても、記者からは「全体の戦略がよく分からない」「会社として考えていることがよく分からない」というフィードバックを貰ってしまうでしょう。これは労多くして実りがない状態であり、避けるべき状況です。

このような時は一度立ち戻って全体の広報戦略を見直し、事業部から上がってくるリリースを一度突き返してリリースする数を絞って選択と集中を行うことが迫られます。広報部門は事業部とくらべて立場が弱いことがしばしばありますが、ここは踏ん張りどころです。

いかがでしたでしょうか。マーケティングと広報、それぞれの日常業務や注意点などをご理解いただけたと思います。

最後までお読み頂きありがとうございました。それでは、また!

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