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「生きていくあなたへ」 日野原重明


「病が大きかっただけに、感謝の気持ちを、絶大な感謝の気持ちを持ちますね。」



「生きていくあなたへ」 日野原重明



日野原重明先生は、2017年7月18日、105歳の長寿を全うされました。


その前年の暮れから自宅のリビングルームにおいて、ひと月にわたるインタビュー形式での「対話」が行われ、それがこの本になりました。


あらゆる問にこたえられています。


それは


人生の艱難辛苦に立ち向かった上で感得した、この世で一番優しい回答(言葉)であります。


また


渇いた土の上にゆっくりゆっくり沁み込んでゆく、「慈雨」のように感じられました。


いきなり


105歳になられた日野原先生、死ぬのはこわくないのですか?


どのように、この問にこたえられるのだろうか?


僕はふと何気ない瞬間に、隙間を襲う殴打のように、「死」が襲ってくることがあります。


その瞬間に苦しめられます。


日野原先生はこうこたえます。


恐ろしい・・・・・・。あなたにそう聞かれるだけで恐ろしい・・・・・・。

(中略)

あなたに聞かれただけでも足がすくむような思いがします。僕は医者ですから、自分の身体が病によって弱っていること、その時が近づいてきている現実も感じます。

だからこそ、朝起きて自分が生きているということが、心から嬉しいのです。

(中略)

僕達は死ぬことから逃れられないし、逃れなくてもいい。死だけを凝視するのではなく、目を背けるのでもなく、ただただ今生きている自分の命を輝かせていくこと。

それこそが死と一つになった生を生きるということなのです。どうか、僕に残されたこのかけがえのない時間を無駄にせず、与えられた使命をまっとうできますようにと、毎日祈りながら暮らしています。


日野原先生でさえ、怖いと言われる。


死を恐れるのはみんな同じだと、それはあたりまえのことであり、自然な感情なのだと。


そうおっしゃられた上で、今生きている命に感謝すること。祈ること。そして、新しい命を内包しているという希望を持つこと。


日野原先生は死から逃れられない苦しみを、「今、この瞬間生かせてもらっている」という感謝の念に変えてきました。


また


日野原先生は長い人生を歩んで来られた中で、たびたび病気で苦しみました。


そのことを悪く考えるのではなく、苦しいときや、逆境のときにこそ、「自分の根源と出会う」ことができると考えを変えてきたのです。


しぶとく、重い病を持っているからこそ、その病を克服して、よく今日この時を持つことができたなぁっていう、感謝の気持ちがいちばん強い。

そう思えたのは、病のおかげ。それが大きいですよ。病が大きかっただけに、感謝の気持ちを、絶大な感謝の気持ちを持ちますね。


人生は、苦しいこと、辛いことの方が多いと感じます。


でも、そこで考え、気づくのです。


振り返ったときに、本当に辛かった痛みが「優しさ」に変わっていることに気づくことがあります。


時間がかかるかもしれませんが


希望を持ちましょう!


希望とともに生きましょう!


この本には、光輝く言葉がたくさん詰まっています。


今は辛い苦しい状況が続いていても、明けない夜はありません。


胸に降り続く雨は、いつしか優しさになります。希望の光が射してくるまで、ゆっくり心解(ほど)いて待ちましょう。


そのときが来るまで。



【出典】

「生きていくあなたへ」 日野原重明 幻冬舎


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