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槙島驟
2023年3月31日 21:32
大した遠出でもないが、大きなリュックにやれ懐中電灯だの、水筒だの、ついには頑張って貯めた小遣いなんかをつめる。それはまるで、ちょっとした冒険のつもりでいて詰め込んだガラクタは、何かの期待や、夢だったんだと今では思う。昔懐かしい、なんてことないビー玉やおもちゃの双眼鏡、お菓子のおまけなんかは、部屋の隅で埃をかぶりながらもまるで宝物のように部屋の隅で埃を被っている。いつのまにか埃
2023年3月10日 20:15
「おやいや、何だか肌寒いですね」「なんだい。みない顔だ……ここにくるのは初めてかい」「ええ、まあ」「そうか。そうか。あ、女将。熱燗くれ」 そこは古くからある旅館でしたが、あまり名の知れたところではなかったと思います。 私がここへ辿り着いたのは、越後までの旅路、脚を休めるための休憩にすぎませんでした。 表は小さな古民家のようでしたが、内へ入ってみるとそれはそれは、中庭を囲む見事な回廊と
2023年2月18日 21:12
何故か夜が特別になって温い気温が恋しくて用もないのに出歩いて人ではないものと出会う事に少し夢を見るカンより綺麗なビンクーラーじゃなくて廃れた扇風機都会じゃなくてしょっぱい田舎賑わいを遠くに聞く静寂の駅花火もいいけど朧げな月明かり海外? いやいや、古い古い日本いつもはなんとも思わないはずの黄昏時の電車にどこか遠くに連れて行かそうな雰囲気を感じるちょっと冒険をして無敵な
2022年10月7日 18:12
夜は嫌いだ。夜が明けるから。ひとりになりたくて、海に出かけた。寂しくなんてないのに、寂しくなる。知らない温もりを求めて、誰かに会いたくなるのは星が私を見下ろしているから。空を見上げると暗闇の中にいくつか星が瞬いているというのにそっちは遠く、遠くの世界に見える。何も映さない夜の暗闇を見渡す限りどこまでも広げた海にはなんだか吸い込まれそうになるというのに。この矛盾が嫌いだ
2022年8月23日 21:04
「君は、誰」あるとき見つけたバーゲンセール「人間性」の大安売り。同じペルソナを被ったマネキンが我が物顔で買って行った。人間性?僕は首を傾げたんだ。いくら吹き払ってもどこにでもいる君に見慣れてしまった。「ああ、また君か」もう強く吹かなくても飛んでいくほど薄っぺらい。おかしいな、さっきも吹いたのに。そうか、またニセモノか。当たり障りないマジョリティ無難であんぱい「ま