外国人技能実習制度改正に向けた最終報告書を読む【12:最終回】
外国人技能実習制度・特定技能制度の改革が進められている。外国人労働者の規模が拡大する中、私たち多くの国民にとって無視できない話になっており、理解から逃れるのは困難になっている。だからこそ、本noteでは、2024年1月より本連載を実施している。
誰もが無視できない制度になりつつある外国人技能実習制度・特定技能制度改革において重要な意味を持つ最終報告書を読む連載も開始から3ヶ月が過ぎ、12回目となった。遂に最終回である。
前回は提言3の9について読み、その内容にふれた。今回は、日本語能力向上施策に関する提言を行っている提言3の10について読み、終わりを紡ぐ。なお、提言3の10はその他として、新しい制度に対する提言がなされている。
提言3「10 その他(新たな制度に向けて)」
本提言は、主に新制度の移行において必要となる提言が盛り込まれている。新たな制度に移行する場合、大抵何かしらの問題が出てくる。「明日から変わるからよろしく」とはいかないのが国の制度である以上、移行に関する提言は、中々重要な内容と言える。
提言①について
外国人技能実習制度は、30年以上にわたって運用されてきた制度である。多々問題があり、その問題には人権侵害行為が含まれるなど、30年以上続けたのが不思議な制度であるが、さりとて本制度を前提に多くのステークホルダーが動いてきた事実は揺るがない。
それだけ長きにわたり運用されてきた制度を大きく変えようというのが、今回の育成就労制度である。そのため、移行にあたり多くの不安を招くのはもちろんのこと、混乱が起きる可能性は極めて高い。だからこそ、移行期間の確保と広報を丁寧に行うべきとする提言である。
あって然るべき提言と言える一方で、移行期間を取りすぎては今回の制度改革の本懐を遂げられなくなる可能性もある。十分な移行期間の必要性自体はあると思うが、スピーディーな変更を行う必要性も高いと考える。
提言②について
関係者に不利益を与えないよう、制度移行時には激変緩和措置を取るべきとする提言である。とりわけ育成就労制度への転換にあたり、大きな変化となる転籍については、制度施行後ただちに転籍可能とするのではなく、転籍制限期間を延ばすなどの経過措置を設けるべきとされている。
転籍制限期間をどれくらい延ばすのか、それをどれだけの期間認めるかなどについては、多くの意見が交わされたと報告されている。だが、過去に発生した多くの問題を踏まえて緩和される転籍制限に対し、激変緩和措置とはいえなし崩し的にそれを否認するような施策を取るのは本末転倒でなかろうか。
本提言は受入れ機関側の意見に寄りすぎており、激変緩和措置の名の下に外国人技能実習生当人たちの利益を否定し過ぎているように思えてならない。そもそも優良な受入れ機関であれば、ただちに転籍される可能性は低い筈である。本提言のような卓袱台をひっくり返すような提言は好ましくなかろう。
提言③及び④について
制度の実効性確保と制度施行後の検証に関する提言である。外国人本人及びステークホルダーの理解増進、そして新制度(育成就労制度)が本当に目的達成に資する制度になっているかの検証と見直しを図るのは、国(政府)の責務である。極々当然の提言と言える。
おわりに
今回を以て、「外国人技能実習制度改正に向けた最終報告書を読む」連載は終わりとなる。本提言の終わりにもある通り、本提言を踏まえた新制度において、外国人本人及びステークホルダーがより良い形で共生できるようになることを願ってやまない。
また、読者の皆様にあたっては、実に3ヶ月にわたる本連載に最後までお付き合いいただいたこと、感謝してもし尽くせない。本noteにおいて、連載企画は初めてとなったが、ある種筆者本人にとって気付きを得られる機会となった。
中々に大変な面はあったが、最後までやり切れたことに感慨を覚える。なお、本連載は追って一本のnoteに纏めたものを出す予定である。そういった意味では、あと一回、お付き合いいただけると嬉しい。
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