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外国人技能実習制度改正に向けた最終報告書を読む【10】

外国人技能実習制度・特定技能制度の抜本的な改正を前に、改正内容を考える上で重要となる最終報告書を読む連載を実施している。その間も外国人技能実習制度・特定技能制度の見直しは進んでいる。

この1週間、特定技能制度についての動きが起きている。たとえば自動車運送業や鉄道といったいわゆる人手不足分野の追加案が、3月18日に了承されたことが伝わった。

また、3月22日には、特定技能者にこれまで認められて来なかった訪問介護業務を解禁することが伝わっている。国内の人手不足を外国人で補おうという話以外の何物でもない。

急速に様々な国内事業において外国人シフトの波が起きており、だからこそ外国人技能実習制度・特定技能制度の改革は、私たち多くの国民にとって無視できない話になっていると言える。

本noteでは、もはや誰もが無視できない制度になりつつある外国人技能実習制度・特定技能制度改革において重要な意味を持つ最終報告書を読む連載を実施している。前回は提言3の7について読み、その内容にふれた。今回は、国および自治体の役割に関する提言を行っている提言3の8について読んでいく。


提言3 「8 送出機関及び送出しの在り方」

提言3の8では、送出機関と送出しの在り方を問う内容である。ちなみに送出機関とは、外国人技能実習生になろうとする人々から求職申込みを受け、監理団体に取り次ぐ機関である。

監理団体同様、悪質なブローカーになり得る立場であり、厳しく制限されて然るべき機関と言える。本提言では、そうした送出し機関についての提言に加えて、そもそも送出しの在り方について提言されている。

提言①②③について

① 政府は、送出国政府との間での二国間取決め(MOC)を新たに作成し、
これにより、不当に高額な手数料等の徴収、監理団体・受入れ機関への供応やキックバック等を行う送出機関の取締りを強化するなどして、悪質な送出機関の排除の実効性を高める。

② 政府は、各送出機関が徴収する手数料等の情報の公開を求めるなどし
て送出機関に係る情報の透明性を高め、監理団体等がより質の高い送出
機関を選択できるようにするとともに、来日後のミスマッチや労働条件
等に係る外国人と受入れ機関等の認識のそごを防止するため、受入れ機
関に係る情報の透明性も高め、外国人が安心して働ける受入れ機関をよ
り直接的に選択できるようにする(注)。

③ 政府は、MOCに基づく協議等の際に、相手国に対して他国の送出制度
の実情等に関する情報提供を行うなどして、送出国間の競争を促進する。

最終報告書

悪質な送出し機関排除に向け、国家間での連携強化及び情報提供の強化を提言しているものである。異論が出ようはずもなく、会議内で異論は見られていないようだ。

そもそも悪質な送出し機関排除は現行制度下でも行われているが、現実問題として多額の手数料により借金を抱え、外国人技能実習生として受け入れられるも失踪してしまう事案が少なくない。

つまり、現行の対策では不十分であるのが明白で、より強力な対策を講じるのは急務と言える。そのために国家間で取り締まりを強化する妥当性は高く、制度改正を待たずに実行しても何ら異論が出るものでないと考えられる。

提案においては、送出し機関に関する情報のみならず、監理団体や受入れ機関の情報提供も提案されており、今後より包括的な情報連携の下で外国人技能実習制度に代わる育成就労制度を運用していきたい考えが窺える。

なお、文中のMOCとは、国家間の協力覚書である。現在数多くの国々と特定技能に関する二国間の協力覚書を作成している。

提言④について

④ 上記②の情報公開等の手段と併せ、外国人が送出機関に支払う手数料
等が不当に高額とならないようにするとともに当該手数料等を受入れ機
関と外国人が適切に分担するための仕組みを導入し、外国人の負担の軽
減を図る。
(注)外国人が受入れ機関に係る情報を直接的に把握できる仕組みとしては、例えば、独立行政法人国際協力機構(JICA)が 2023 年8月からベトナム政府に対する技術協力プロジェクト「ベトナム人海外就労希望者の求人情報へのアクセス支援プロジェクト」(ベトナムの労働当局と協働の下、新たな求人システムを構築し、正しい求人情報の提供、直接応募の推進により、高額な手数料や搾取、ミスマッチ等をなくす仕組みを構築するもの)を開始した

最終報告書

外国人が送出し機関に対して支払う費用の負担軽減に関する議論である。悪質な送出し機関排除の観点から高額な費用負担を生じさせないための検討が実施されている。

手数料自体の廃止ができない方向で議論が行われた印象を受けるが、個々の負担を軽減する方策について議論されている点には好感を持てる。手数料を受入れ機関と外国人で分担する方向性で作られた枠組みがどれ程の機能を見せるのか定かでないが、育成就労制度施行後の動向を窺うよりないのだと想われる。

また、悪質な仲介人の存在を念頭に置きながら、対策が情報の透明化とするならば、妙に弱い。どこか本質的な議論を避けたような印象を受けさえする。さりとて、この点についても今後の動向を窺うよりないと思われる。


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