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外国人技能実習制度改正に向けた最終報告書を読む【11】

つい昨日(2024年3月29日)、特定技能に関して4分野が追加される閣議決定が行われたと報道があった。

来年度は、明後日から始まる年度を指していると思われるため令和6年度(2024年度)からの5年間で最大82万人程度の外国人の受入れが想定されることとなる。

4月からは、「登録日本語教員」の国家資格が新設される。それだけ外国人労働者への期待値と依存度が高まっていると言える。このように急速に様々な国内事業において外国人シフトの波が起きている。

外国人技能実習制度・特定技能制度の改革は、私たち多くの国民にとって無視できない話になっており、理解から逃れるのは困難になっている。だからこそ、本noteでは、2024年1月より本連載を実施している。

誰もが無視できない制度になりつつある外国人技能実習制度・特定技能制度改革において重要な意味を持つ最終報告書を読む連載も気付けば11回目を迎えている。

前回は提言3の8について読み、その内容にふれた。今回は、日本語能力向上施策に関する提言を行っている提言3の8について読んでいく。外国人技能実習制度・特定技能制度においては、ある種主テーマと言える点である。


提言3「9 日本語能力の向上方策」

外国人技能実習制度の新制度である「育成就労制度」のみならず、特定技能制度においても日本語能力の向上は大きく取り上げられている。外国人が日本で生活する上でも、より高度な仕事に対応していく上でも、日本語能力は重要である以上、自然と言える。

日本人の外国語能力は決して高くない。というより絶望的なまでに低い。また日本語は英語等に比べて使える国が極めて少ない。その点に鑑みれば、寧ろ日本人の外国語能力を上げる方が適切でないかと思わなくもないが、それはまた別の話に違いない。

提言①について

① 新たな制度及び特定技能制度においては、以下の試験の合格等を就労開始や特定技能1号、2号への移行の要件とすることで、継続的な学習に
よる段階的な日本語能力の向上を図る(注)。
○ 就労開始前(新たな制度):日本語能力A1相当以上の試験(日本語
能力試験N5等)の合格又は入国直後の認定日本語教育機関等におけ
る相当の日本語講習の受講
○ 特定技能1号移行時:日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試
験N4等)の合格(ただし、当分の間は、当該試験合格に代えて、認定
日本語教育機関等における相当の日本語講習の受講をした場合も、そ
の要件を満たすものとする。)
○ 特定技能2号移行時:日本語能力B1相当以上の試験(日本語能力試
験N3等)の合格

最終報告書

結論としては、以下の提言がなされている。

  • 特定技能1号への移行時の日本語能力要件として試験の合格を基本とする

  • 他方、日本語教育機関認定法による新制度運用が浸透するまでの期間、試験合格に代わり、相当レベル・時間の日本語教育の受講等を許容する

当初、外国人技能実習生の受入れにあたる日本語能力要件も議論されたようだが、日本に来ようと思う意欲の低減やそもそも試験頻度の確保、日本語教育環境の整備度合いの問題から、そこまで厳格なものを提言しない方向になったようである。

なお、今後については、必ずしも日本語能力試験の合格のみを要件としない方向も検討され得るといった話もなされているようで、今後の趨勢に注視したいところである。

先述した「登録日本語教員」の国家資格新設が、日本語教師増加に繋がるのか、厳格化による減少に繋がるのかは定かでない。一方で、外国人労働者の増加を見込む以上は、日本語を教える人々や環境の充実化を果たす必要性が高いため、日本語教師が減少するような事態は避けるべきと言える。

提言②について

② 受入れ機関による支援のインセンティブとなるよう、受け入れた外国
人の日本語能力試験等の合格率など日本語教育支援に積極的に取り組ん
でいること等を確認するような要件を、優良な受入れ機関の認定要件と
する。

最終報告書

受入れ機関による外国人技能実習生の日本語能力向上に向けた取り組みを評価する仕組み作りに関する提言である。日本語能力向上が課題となる以上、必要な提言と言える。

提言③について

③ 政府は、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機
関の認定等に関する法律の施行状況を踏まえつつ、同法の仕組み(認定日
本語教育機関や登録日本語教員)を活用し、外国人に対する日本語教育の
質の向上を図る。また、政府は、外国人に十分な日本語能力試験等の受験
機会を確保するなどの方策を検討する。
(注)上記2の提言③の(注2)のとおり、現行の技能実習制度における取扱いを踏まえ、各受入れ対象分野でより高い水準の試験の合格を要件とすることを可能とする。

最終報告書

日本語能力の教育費用は、受入れ機関が負担する形となる。しかし、肝心の日本語能力を向上させる機関の整備といった環境面を充実させる施策は、受入れ機関にて行うのが難しい。そうした点は、国(政府)が適切に実施すべきとする提言である。

日本語能力の向上を図る上で、その進捗を客観的に評価する必要があり、専ら試験の合格を基準にする方策が検討される。しかしながら、日本語能力を評価するための試験は回数が少ない。この点は改善する必要がある。本提言では、その点について書かれている。


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