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碧(あお)のハッカー、猛き樹海を行く
かつて49階立てだった廃ビルの窓という窓から生い茂る七色の枝葉を見上げながら、メイド姿の彼女は言った。
「ここが目的地ということでしょうか?」
「ええ、これまでの情報を総合するとその可能性が高いわ」
答えたのは彼女が押す車椅子に乗った少女。車椅子のグリップと一体化した画面を睨みながらキーボードを細かく叩く。それから車椅子の脇に釣り下げたバッグに手を突っ込むと、ピックにケーブルの繋がった道具を数
ウロボロスの滾(たぎ)り
予想通りに【奴】が来たことを、俺はゆるキャラ着ぐるみの中からそっと確認した。
折しも繁華街に正午のチャイムの音が響く。
人出はそれなりにあるが身動きが取れぬ程ではなく、これなら
「わー、『へびさぶろー』だー!」
ゆるキャラ目当てで子供が一人近づいてきた。
俺は平静を装うと、普通のバイトのように風船を一つ手渡し、ついでに頭を撫でてやった。
【奴】がすぐ脇を通り過ぎる。両側二人の女の肩に手
ボクと義妹は万死の先に何を見るか?
ぼうっとする頭。霞む目。むせかえるような酷い臭い。状況が飲み込めない。
腕の中にはまだ暖かく、そして急速に冷えていく感触。これは、ボクの義妹だ。ふわふわだった金髪が、今日買ったばかりの流行りの洋服が、ぐちゃぐちゃに汚れて、ぼろぼろで、赤黒く染まって。
「……お兄……ちゃん……」
掠れた声でかろうじて一言だけつぶやくと、すべての動きを止めた。
「オニイサン」「オニイサン」「オニイサン」
凶器を手にし
極楽大脱走! ~ネオ・リヴァイヴァーズ~
それは、生前見たこともないような大河だった。色彩はなく、底は知れず、速い流れと緩やかな流れが物理法則を無視して交錯し、茫として得体が知れない。
それでも来るときはすんなりと渡ってきたそこを、僕は強奪したイカダに乗って櫂を必死に漕いでいた。
「先輩、こんなんで本当にうまくいくんですか!?」
隣で同じく漕ぎまくっているレイイチ先輩に大声で問う。
「うまくいくに決まってるだろう、なぜなら今回は俺とハジメ
インターネッツラジオの時間 ~マサヤとユーリの異世界珍道中記~
♪オープニングBGM♪(ズッチャッズッチャッ)
「みなさーん、こーんばーんわー!あ、それともおはようかな?サーヤでーす!」
「現代地球のリスナーのみなさんいつもお世話になっております。今日から初めましての方は初めまして。ユーリです」
「さてさてさてさて、昨日の放送で残忍非道の誘惑だらけのお猫様帝国をよーやく脱出した我々は、」
「あ、サーヤさん。今身を乗り出すとあぶな」
「ぎゃああああああっ」
「
殺し屋乱麻と人為の神 1-1(完全版)
無造作にテーブルに積まれた焦げた袋の山。中には煤まみれの金貨と幾ばくかの宝石類。
俺はそれらを一瞥する。それから向かいに座るぼろぼろに傷だらけの老人を睨んだ。今一度。
「これが前金だと?」
老人はゆっくりと頷く。手足に震えが見て取れる。
「…今の私に用意できる、精一杯のものに御座います…どうか、どうかあやつめを」
額は問題ない。むしろ多すぎる。
「俺が前金だけ頂いて持ち逃げするとは思わないのか?」
殺し屋乱麻と人為の神
無造作にテーブルに積まれた焦げた袋の山。中には煤まみれの金貨と幾ばくかの宝石類。
俺はそれらを一瞥する。それから向かいに座るぼろぼろに傷だらけの老人を睨んだ。今一度。
「これが前金だと?」
老人はゆっくりと頷く。手足に震えが見て取れる。
「…今の私に用意できる、精一杯のものに御座います…どうか、どうかあやつめを」
額は問題ない。むしろ多すぎる。
「俺が前金だけ頂いて持ち逃げするとは思わないのか?」
断世結姫(だんぜいけっき)のスノー・ホワイト
車椅子に座した乙女は目視で状況を確認する。
世界の狭間、水晶じみた超常の根で編まれし迷宮回廊の彼方より迫り来るは、黒い影の子鬼共、通称《ゴブリン》。レーダー反応も考慮に入れれば二百は下らぬと見えた。
「ご命令を、シロ様」
傍らに控える内の一人、眼鏡メイドが彼女に請う。
「私が対処します。ホヅミとランマルは時間稼ぎを、90、いや100秒」
「御意!」
命が下るや、メイドは二刀を構えて鉄砲玉の如く飛び
魔弾の殺し屋と魔女の末裔
上からガキが殺意丸出しで飛び降りてきた。
咄嗟に俺は後ろに跳び下がりながら右手の引き金を引く。
咄嗟の反撃のため急所は狙えず。左上腕部を削る。血が一瞬噴き出し、だが傷口周囲の肉が歪に形を変えると止血してしまう。
「ふむ、お前が『魔女』か」
俺は標的と思しきそいつに話しかける。依頼内容から想像していたものとだいぶ違う。殺す前に情報収集が必要と判断。
俺の胸板くらいの身長、腰まで伸びた金髪、一番の特徴
ヒマワリ・リインカネーション
その日、俺は妹と心中した。
許されぬ関係という奴だ。その上妹が不治の病で余命幾許もなしとなれば他に選択肢もなく、俺たちは自らの意志でそれを選んだ。
そう目の前の神様だか死神だか閻魔大王だか判然としない奴に告げると、では機会を与えましょうとそいつは言った。活かせるかは俺たち次第だと。
◇
その日、ヒト族の空軍研究施設を、一人のオーガ族が強襲した。
ただの無謀は、しかしセキュリティの大半がヒトへ
美少女戦士・天狗仮面
しんと静まりかえった。星々は瞬きをやめ、田中であったはずの怪異は手を止め、俺は息をのんだ。
月明かりの下、新たな人影が現れていた。場には不釣り合い、だがどうしようもなく似合ってるとしか言いようのない美麗なドレスをまとい、顔は真紅の天狗面で奥ゆかしく隠された、ああ、そのお姿は。
「今宵、狼藉を働いているというのはあなた方にございますか」
彼女は、低く変色されてなお凛と響くバリトーン声で問いかける。