小早川マドカの遺言

おっぱいが重てえ。
俺はそう毒づきながら、ろくに筋肉もない華奢な足でがむしゃらに走った。
奴らが追ってくる。
息があっという間に上がるが、それでも走る。丸腰で他に選択肢がない。
くそ、何がどうなったってんだ。
俺は戦場でいつものように、ただちょっとだけヘマをして、気がついたら心臓に風穴開けられてぶっ倒れた…はずだ。よく覚えていないし思い出したくない。どう考えても俺は死んだと思うのだ。

あっ。

余計なことを考えている内に足がもつれて地面にダイビング。店の割れ落ちたガラスに自分の顔が一瞬映る。
俺の記憶には全くない、まだ年端もいかない女の顔。一方でその姿にこの脳みそはちりちりと焦げ付くような反応を返す。
ニューロンが強引に叩き起こされる。

別の女の姿が脳裏にわき上がる。眼鏡をかけた、気弱そうな、私と同年代の女。俺の記憶にないもの。
名前は、確か、ミキ。友だち。
(助けて!)
私が俺に叫び。私は消えた。

【続く】

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