美少女戦士・天狗仮面

しんと静まりかえった。星々は瞬きをやめ、田中であったはずの怪異は手を止め、俺は息をのんだ。
月明かりの下、新たな人影が現れていた。場には不釣り合い、だがどうしようもなく似合ってるとしか言いようのない美麗なドレスをまとい、顔は真紅の天狗面で奥ゆかしく隠された、ああ、そのお姿は。
「今宵、狼藉を働いているというのはあなた方にございますか」
彼女は、低く変色されてなお凛と響くバリトーン声で問いかける。
「お、お助けを、お助けを天狗仮面様ぁ!」
俺は当初の目的も恥も忘れてとにかく叫んだ。
顔をなくした田中は、スライム状の表面が裂け化け物めいた大口がにやりと開く。
「これはこれは。かような場においでなすとは、勇敢であるのか命知らずか。花は花らしく諍い事には関わらなければよいものを」
「これがわたくしの宿命ゆえ。人を解放して住処に帰ってくだされば命までは取りません」
「笑止。敗れるのはあなたの方だ、天狗仮面!」

【続く】

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