ボクと義妹は万死の先に何を見るか?

ぼうっとする頭。霞む目。むせかえるような酷い臭い。状況が飲み込めない。
腕の中にはまだ暖かく、そして急速に冷えていく感触。これは、ボクの義妹だ。ふわふわだった金髪が、今日買ったばかりの流行りの洋服が、ぐちゃぐちゃに汚れて、ぼろぼろで、赤黒く染まって。
「……お兄……ちゃん……」
掠れた声でかろうじて一言だけつぶやくと、すべての動きを止めた。
「オニイサン」「オニイサン」「オニイサン」
凶器を手にした少女の集団が迫ってくる。義妹を突き殺し、刺し殺し、殴り殺した連中がうつろな目で緩慢とボクたちを取り囲んでいく。
「しっかりしてください、お兄さん。逃げるのですよ」
突如頭上から明瞭な声が響いた。見上げると、夜闇に紛れるような真っ黒い鳥がボクを見下ろして語りかけていた。
「でも、義妹が、キララが」
置いていけない、と言おうとして、腕の中の感触が軽くなったことに気づく。
見ると、義妹のキララの姿は粒子状に次々と分解していって、やがて七色の小さな結晶体へと収束した。
ボクは咄嗟にそれをつかむと、一目散に駆け出した。並行するように黒い鳥がボクの隣を飛ぶ。
「良いですね。判断能力は正しいです」
「お前は、何だ?キララはどうなったんだ?死んだのとは、違うのか?」
「いえ、死にました。でも何とかします。あなたは。水神カナタさん」
黒い鳥はボクのフルネームを呼ぶと、ちらりと後ろを振り返った。
キララを殺した連中は、うなり声を上げながら追いかけてきていた。その足取りは鈍いが段々速くなってきているようにも見えた。
「なんとかって」
「チュートリアルです、カナタさん。キララ様であった石をもう一度見てください」
ボクは右手の中の結晶を見る。脈打つように、何かを訴えるように光っている。
「あなたは助けられます。でもおひとりでは無理です。別の人間の情報が必要です」
導くように黒い鳥が先行する。この先はうちの近くのテナガ商店街だ。
【続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?