マガジンのカバー画像

本棚は段ボール

34
読んだ本の感想を述べています。 ネタバレ等ありますので気にする方は気をつけてください。
運営しているクリエイター

#読書感想文

本棚は段ボール Vol.33 『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』/岡真理

 そろそろ学ばなければ、と思っていた。そろそろ、何も知らないで済ませるのは本当に恥ずかしいと自覚し始めて、本は偏っていそうだし、と思って避けていたけれどそんな事を言っている場合ではないと思ったので兎にも角にも、読んでみました。

 本としては、とても読みやすく、内容が入ってきやすく勉強したいけれど難しい本は読めないという方にもおすすめできます。私は1時間少しで読み切ることができました。

 やはり

もっとみる

本棚は段ボール Vol.32 『水中都市 デンドロカカリヤ/安部公房』

安部公房生誕100周年ということで、書店という書店で安部公房作品を一挙に並べていて嬉しい。

頭のおかしい人間の、普通の人間から、段々思い込まされていって狂ってしまう、その過程がなんだか共感できるのに確実に頭のおかしい人間だと思わされる感覚が、自分も一歩違う方向に踏み出して気付かなければそのままおかしくなってしまうだろうという気持ちにさせられる。

また、本書は「嫌な気分になる」「イライラする」と

もっとみる
本棚は段ボール Vol.29 『なんくるない / よしもとばなな』

本棚は段ボール Vol.29 『なんくるない / よしもとばなな』

 沖縄へ旅行した、出会いのお話、そして男女のお話の短編が4篇。私は表題作の『なんくるない』が一番好きだったかなあ。

 あんなふうに恋をして人と出逢えたら素敵だなあと思った。運命的な何かに引き寄せられるように、沖縄で出会って、数字で区切られたのでない自分の時間を過ごしていく。その時間の流れの合う人と出逢える、またはお互いの時間に共感できる相手と出逢えることというのは、とても奇跡的で、大切にしたいも

もっとみる
本棚は段ボール Vol.28 『ステップファザー・ステップ/宮部みゆき』

本棚は段ボール Vol.28 『ステップファザー・ステップ/宮部みゆき』

 子供にひどいことをできない、その理由が面白かった。共感した訳ではないけど、なるほど確かに、とは思った。
 あまり読まない感じの本だったので、面白かった。
 昔は宮部みゆきさんの本、たくさん読んでいたのに読まなくなったなあ、また読もうかな、と思う。

本棚は段ボール Vol.27 『和菓子のアン/坂木司』

本棚は段ボール Vol.27 『和菓子のアン/坂木司』

読み始めたとき、ああ、将来を決められない女の子が和菓子または和菓子屋さんに出逢って和菓子屋さんで働いて幸せっていう話だなあと思った。

けれどすこし予想が裏切られた。
まず、老舗の和菓子屋さんと出会うのかと思ったら、デパ地下の和菓子屋さん。

というか、よく見たらあらすじに、「お仕事ミステリー!」と書いてあった。ミステリーだったのか。

友達におすすめされて読んだので、中身を全く知らず、あらすじす

もっとみる
本棚は段ボール Vol.26 『暗闇にレンズ/高山羽根子』

本棚は段ボール Vol.26 『暗闇にレンズ/高山羽根子』

 面白いが、難しい。
すっきりと理解して楽しむ類の話ではない。
読んでいてしんみり、じんわり、面白いなあと感じるもの。

現実をぼかす、嘘の混ざったもの、または嘘そのものを現実と思い込ませる。
高山羽根子さんの小説にも、似たようなところがあり、SFなのに本当にあったことのように感じる文章です。
だから、この本で言えば、高山羽根子さんの小説は、映像的なのかもしれない。

本棚は段ボール Vol.25 『そして、バトンは渡された/瀬尾まいこ』

本棚は段ボール Vol.25 『そして、バトンは渡された/瀬尾まいこ』

 幸せかどうか、不幸かどうかは自分で決める。人にとやかく言われる筋合いはないが、自分で感じる自分の幸、不幸の度合いを、他人にぴったりと当てられると、その言葉には愛を感じてしまうなあと思う。
 きっと私のことをよく見ていてくれていなければ、それはわからないことだから。
 私は娘の立場で読んで、なんだか結婚がしたくなった。結婚、離婚したとしても、素敵だ。一緒にいようと決めること。それってすごいことだし

もっとみる

本棚は段ボール Vol.24 『被覆と身体装飾の社会心理学/B.B.カイザー』(上、下巻)

 小難しい本を読みました。

卒論で使うために買って、使うところだけちょろっと読んで、放置していた本。

 つまりは、服が人間を動かし、また人間が服を動かしていくということ。

 着るものは、自分を表し、また、人からカテゴライズされる大きな判断材料となること。
それを利用した戦略も取りうるということ。

本棚は段ボール Vol.23 『うどん キツネつきの』/高山羽根子

本棚は段ボール Vol.23 『うどん キツネつきの』/高山羽根子

2024年、はじめに読了したのは本書でした。

高山羽根子さんは、日常を描くのがうまい。日常に、SFが紛れ込んで、物語が終わっても登場人物の生活は続いていく。

SFなのに、心にすっとなじんで、入り込める。
SFの加減もよい。ちょうどよい、不思議さ。

人と人とのつながりを、確かめていくような気持ちになれるあたたかくて笑顔になれるようなお話ばかりです。

本棚は段ボール Vol.20 『そうしないことはありえたか? 自由論入門』/高崎将平

本棚は段ボール Vol.20 『そうしないことはありえたか? 自由論入門』/高崎将平

 自由論、「人間は本当に自由なのか?」それとも、決定論、「全てははじめたから決まっている」のか。

考えたことはあったけれど、責任や他の概念との関連で考えていくと、ますます分からなくなるのが、奥の深いテーマだと思う。

ただ私個人としては、そもそも自由という概念自体人間の想像から生まれたもので、自由論も決定論も、人間の考え出した「時間」という概念の過去が変えられないということに起因している気がする

もっとみる
本棚は段ボール Vol.21 『ヒトでなし 金剛界の章』/京極夏彦

本棚は段ボール Vol.21 『ヒトでなし 金剛界の章』/京極夏彦

人間は、自分のことを考えるときに、正直になりすぎたり、突き詰めすぎてはいけない。

突き詰めすぎると、自分が他のヒト科ヒト属のホモ・サピエンスと人間が分類した他の動物たちと同じような特徴を持つ動物でしかないことが分かってしまうからだ。

文明や社会、感情で構築されたコミュニティに属することをヒトと呼ぶのであれば、自分について突き詰めて正直になりすぎたときに、逆説的にヒトは全員、ヒトでなしであり、単

もっとみる

本棚は段ボール Vol.18 『歌集 滑走路』/萩原慎一郎

共感、確かに共感はあったと思う。
ただ、「ああ!そう!」という驚きと感情を伴う共感までは得ることができなかった。
もう少し長く社会人と来て働けば、沁みるようになるだろうか。
わからないけれど、その驚きを得ないことを含めて、極めてリアルな感情が表現されていたのではないかとは思った。

本棚は段ボール Vol.19 『ママからの伝言 ゆりちかへ』/テレニン晃子

なんで娘への手紙を本にして大勢のその他に見せようとしたのだろうと、読む前は不思議だったのだけれど、読んでみたら分かった。

病気は怖い。できれば元気なまま最期を迎えたい。長生きしなくてもいいから、元気なときに最期が来たらいいなと私は思う。

子供、結婚、家族、とても難しいなと思う。

本棚は段ボール Vol.17『八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。』/天沢夏月

青春小説など、生まれてこの方読んだことが殆どない。
ともだちと、合わなかった本とか、読んでほしい本とか、交換しようよの会で、貰ったので読んだ。
初めは「ふーん」とナナメ読みしていたが、最後にはぼろぼろ泣いてしまった。
私は泣かせるものには泣かせるものだと分かっていても必ず泣いてしまう。
あとがきに、10冊目の出版と書いてあって、すごいなあと思った。