進藤尚典

進藤尚典

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『推しの三原則』のできかた(終)

前回はこちら  以前も書いた通り、私が通っていたアイドル現場はただの一つしかありません。  それは元々声優志望のコたちを集めてつくられた声優アイドルグループでしたが、そのアイドルグループの話を別のアイドルヲタにすると「あそこのヲタク怖いですよね」と恐れられるようなやんちゃ者が集まる現場でした。  なぜそんなアイドルグループの現場に私が通うようになったのか。  あるとき私は友人とゴールデンウィークに麻雀を打つ約束をしようとLINEで連絡をしました。が、その友人からアイドルのラ

    • 第3回阿波しらさぎ文学賞一次選考落選作品「ボーダーエッジ」

       私はショウコ。プロゲーマーだ。そして生まれ故郷は香川県高松市だった。  おー、ここでだいたいみんな思うだろう。「香川県出身でプロゲーマー?そんなことがあり得るのか?って」まるで、イギリス出身のシェフや、ドイツ出身のコメディアンを見ているような顔をしてなあ。  まぁ、世間様たちがご存知の通り、香川県では条例でゲームは1時間以内と決められている。もし1時間を1秒でも過ぎるとうどんで絞め殺される。でも逆に言うと1時間以内ならばゲームは可能なんだ。だから私の親は私にゲームを1時間ま

      • 『推しの三原則』のできかた(3)

        前回はこちら  自分は少年マンガが大好きであり、自分が思う最高の「少年マンガ」を生み出している作家さんとして藤田和日郎先生がいます。藤田和日郎作品は『うしおととら』『邪眼は月輪に飛ぶ』『黒博物館』と名作揃いなのですが、その中でも最も自分が好きなのが『からくりサーカス』です。  今回は『推しの三原則』が、この藤田和日郎先生の『からくりサーカス』をかなり参照しています。というお話です。  まず、AIヲタクのファーストシリーズに関してですがあれは露骨に「最古の四人(レ・キャト

        • 『推しの三原則』のできかた(2)

          前回はこちら  というわけでヲタクが死滅したディストピアでヲタクであろうとする少女のモデルはどんちゃんで決定し、どんちゃんの名前「宮下真実」を少しだけ変えた「木下あみ」が誕生しました。(梗概を読んでいただくとわかりますが最初は「木下まみ」という名前にしていて、あまりに本人まんまでマズいと思って、実作執筆の際に変えました)  話の構成として最初からあみ視点で話が進むのではなく、最初はAIヲタクを作りだすアイドルが主人公として書かれ、彼女がのちにラスボスとしてあみの前に現れるこ

        『推しの三原則』のできかた(終)

          『推しの三原則』のできかた(1)

          Happy Birthday Happy Birthday おめでとう自分 ♩Happy Birthday/電気グルーヴ  というわけで、自分の5年ぶりの新作『推しの三原則』が発売されたよ!!この小説、もとはといえばゲンロン大森望SF創作講座にて、最終実作として書かれたものなのです。←いままでのあらすじ  『推しの三原則』のアイディアの発端はツイッターでした。うろ覚えなのですがこんな内容のツイートがありました。「コンビニとか民度が低い客が多いから、店員をAI化するより、も

          『推しの三原則』のできかた(1)

          創作ミルクボーイ「本田未央」

          「うちのおかんがね、好きなデレマスのアイドルがいるらしいんやけど。その名前をちょっと忘れたらしくてな。色々聞くんやけど全然わからへんねんな」 「わからへんの。ほな俺がな、おかんの好きなデレマスのアイドルいっしょに考えてあげるから、どんな特徴言うてたか教えてみてよ」 「島村卯月や渋谷凛とユニット組んでるピンクのジャージ着たアイドルやって」 「それ本田未央やないかい。その特徴はもう完全に本田未央やがな。すぐわかったよこんなもん」 「でもわからへんのよな」 「何がわからへんのよ」

          創作ミルクボーイ「本田未央」

          読み、合わせる

          ※注意 この話は「読み合わせカフェ」(ツイッターアカウント;@yomicafe)の存在を知ってもらうために書いた小説です。 ですが「読み合わせカフェ」の存在と話に出てくる台本以外はすべてフィクションで実在の人物や出来事は出てきません。 ですが作者の私が感じた「読み合わせカフェ」の雰囲気を出来るだけ忠実に再現しようとして書いた話ではあります。 よろしくお願いいたします。  うん、私はふつうの高校一年生で、ふつうの陰キャだ。間違いない。  友だちは少ないけど決してぼっちではなく

          読み、合わせる

          小説ができるまで

          梗概  探査宇宙船が故障し、辺境の小惑星に取り残された6人の調査員。辺境であるがため周囲半径5光年にわたって人が存在しない。  食料は残り少なく、周囲との連絡の術がない。  唯一、6人のうち生存者が1名になったときだけ、超光速の救難信号が出されるということ以外は……。  一夜明け、女性調査員の悲鳴。6人のうち、ひとりが血まみれで発見された……。  ……と、ここで話は幕間へ。  今までの部分は未来の小説の冒頭であった。  未来においての小説に筆者は存在せず、複数人の小説AI

          小説ができるまで

          be a Hero

           未来。人々のそばにはヒーローがいた。これは比喩ではない。人々の横には常にヒーローがいた。  この時代の人は物を持つ必要がなくなっていた。スマートフォンすら持つ必要がなくなっていた。身体に埋め込まれた原子集積装置と3Dプリンタにより、どんな複雑な機構であってもすぐに具現化できる。手ぶらで具現化できる。  そう、ヒーローですらも。  グレイ坂学院はエリート校だった。学院につながる灰色の坂を、長くしなやかな髪の毛を風に揺らしながら、白く長い脚をすらすらと動かして歩く女生徒がいた

          be a Hero

          梗概  未来。超小型の元素集積装置と3Dプリンタを組み合わせた、自分だけのヒーローをいつでもそばに具現化できるデバイス【be a Hero】が普及していた。  【be a Hero】で具現化できるヒーローは、姿形、能力に至るまで各々が自由にカスタマイズすることができた。中高生すらも【be a Hero】を所持しており、お互いのヒーロー同士を戦わせる【Hero battle】が行われ、世の中の決めごとや地位はそれにより決められるようになっていた。  多くの者は自分のヒーローを

          今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その4〜

           前回、書き忘れたのですが、第7回のイトウモさんとの交換実作の際に、「今回の梗概は出来が悪いので過去の僕の奴から選んでください」と言ったら「じゃあ『10文字以内……』で」と言われたので、「それはやめとけ!!」と即刻言い返しました。  というわけで、引き続きふり返って参ります。   第8回「恒久永年女皇伝エイガ」 https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/s59kaichou/2760/  もうここらへん付近の自分

          今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その4〜

          今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その3〜

          第6回「始まりの花嫁」 https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/s59kaichou/2673/  ひたすらテンションの高いバカみたいな恋愛小説が書きたい。  秋葉原の神田明神あたりを歩きながらRADWIMPSの「前前前世」を聞いているときにこんな気持ちが湧きました。  とにかく何度生まれ変わっても絶対この人と結ばれる的なテンションの高い、この曲みたいな、脳内麻薬ドバドバ出てるバカラブストーリーが書きたかったの

          今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その3〜

          今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その2〜

          第3回「イキワカレノイモウトとの相利共生」→「イキワカレノイモウト」 https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/s59kaichou/2460/  新井素子さん( https://ja.m.wikipedia.org/wiki/新井素子)の「生き物を作ってみよう!」のお題で書きました。  最初は、館林市や多治見市が「日本一暑い街」の名目を争っているのを面白いと思って、架空の二つの自治体が「日本一暑い街」という名称

          今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その2〜

          今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その1〜

           どうも、進藤です。  ライトノベルの賞を取り、念願の作家デビューを果たしたものの、その後一冊も本が出ず鳴かず飛ばずであった自分が迷い込んだのが、「ゲンロンSF創作講座( https://school.genron.co.jp/sf/ )」でした。  もともと東浩紀さんのファンで、ゲンロンのイベントを現地で直接見たり、動画をニコニコで見たりしていた自分。実は「ゲンロンSF創作講座」も出来るときから知っていて、キックオフイベントも現地で参加していたりしました。  SF創作講座大

          今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その1〜

          私のお友達の愛原ありさも出演します

           2018年1月21日、江古田の小さなライブハウス、【クラブドロシー】で行われた「アイドルでもアニソンでもどんとこい!vol52」というイベント。  それほどメジャーではないアーティストや声優たちが、ライブパフォーマンスを披露する定期イベントである。  この日のことを私は終生忘れられないと思う。  それは、私がファンである谷尻まりあが、事務所から退所し、最初にひとりで立った舞台であるからなのだが、単純に彼女が次のステージに足を踏み出したという感動と同時に、あの日のイベントのも

          私のお友達の愛原ありさも出演します

          谷尻まりあが細胞プロミネンスを歌った

           2018年3月25日、渋谷で行われた上月せれなのライブにゲスト出演した谷尻まりあは、3曲めに細胞プロミネンスを披露した。細胞プロミネンスは谷尻が以前所属したアイドルグループ、アーススタードリームの代表曲のひとつであった。この曲は正確にいうと、アーススターエンターテイメントが製作したアニメ、ミリオンドールの劇中歌で、彼女たちのオリジナル曲ではない。が、オリジナルの歌い手である声優の伊藤美来がこの曲を歌うことはもはやなく、アーススタードリームがライブのたびに披露する曲であるがた

          谷尻まりあが細胞プロミネンスを歌った