『推しの三原則』のできかた(1)

Happy Birthday Happy Birthday おめでとう自分

♩Happy Birthday/電気グルーヴ


 というわけで、自分の5年ぶりの新作『推しの三原則』が発売されたよ!!この小説、もとはといえばゲンロン大森望SF創作講座にて、最終実作として書かれたものなのです。←いままでのあらすじ
 『推しの三原則』のアイディアの発端はツイッターでした。うろ覚えなのですがこんな内容のツイートがありました。「コンビニとか民度が低い客が多いから、店員をAI化するより、ものすごく礼儀のいいAIの客を導入したらどうだろうか。そしたら店員の精神の安定も保たれる。あ、でもそうなるといずれAI以外の客が駆逐される未来しかないな」
 このツイートにものすごく納得するとともに思いついたのです。たぶん世界でもっとも客との距離が近い接客を必要とし、客とのやりとりにもっとも心を左右される職業に「AI化された優良な客」が導入される話を。その職業とは、他でもなくアイドルでした。
 というわけで最終実作はアイドルの話に決定しました。講座の第二回で書いて2度とアイドルSFは書かないと思っていたのにです。
 品行方正なAIのヲタクによって、人間のヲタクの存在が許されなくなり、迫害され、それに対抗するためにレジスタンスが組織されるというディストピアSFのテンプレに沿ったストーリーはあっという間に思い浮かび、主人公はそりゃ、ディストピアと化した世界で、どうしてもヲタクになろうとする人間だよなあというのももう必然的に思い浮かびました。
 そのとき私の頭に、女の子の姿がフラッシュバックしました。「在宅は死ね」と書かれた黒いキャップを被った女の子の姿が。

 その女の子の名前は宮下真実。どんちゃんという愛称で知られ、現在はレティクル東京座という人気劇団で活躍しています。
 谷尻まりあさんというアイドルをきっかけに演劇を見始め、演劇にハマり始めたばかりの自分はある日「演劇人フリマ」という演劇の関係者さんが参加するフリーマーケットに行きました。
 そこで、Switchを机の上に置き、一回300円でお客さんとマリオカートで対戦していた女の子がどんちゃんでした。
 私がもの珍しさで近寄ってみると、どんちゃんは「ぜひ対戦してください」と声をかけてくれました。
 マリオカートで対戦しながら、どんちゃんは私に話しかけてくれました。演劇よく観るんですかあと。元々アイドル好きでそこきっかけで演劇を見始めたばかりですと答えると。私もアイドル好きで昔アイドルの現場で物販とかしてたんですよおと言い、さらに、この勝負に私が勝ったら今度の舞台見に来てくださいねえ、と言いました。
 どんちゃんはマリオカートがめちゃくちゃ上手く、Switchのマリオカートをほぼやったことがない私はめちゃくちゃに負けました。そしてそののち演劇(ガールズオンファイヤー)を観に行きました。
 それが自分とどんちゃんの出会いです。

 その次の演劇人フリマでもどんちゃんはSwitchを置いて、マリカーをやっていました。そのときどんちゃんは「在宅は死ね」と書かれたキャップを被ってました。私はどんちゃんに果敢に挑戦しました。五回くらい。全部負けました。最後は30秒くらいハンデもらったのに負けました。どんちゃんはマリオカートがやばい強いのです。そこで私は、本来どんちゃんにマリカーで買ったときの賞品としてもらえるはずのソロチェキをお金を出して買いました。それがこちらです。

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 私はこれがきっかけで会社の後輩からSwitchを借り、マリカーを購入して本気で練習し始めましたが、それ以来どんちゃんへのリベンジの機会は訪れていません。

 どんちゃんは、なんというか自分が思う「女の子」の像にぴったりとハマる子なのです。
 愛嬌があって、素直で、少しわがままっぽいところがあって、自己嫌悪に陥りやすいところまで含めて、なんか全てが「女の子」なのです。

 どんちゃんは「活丼」というブログを書いているのですが、その文章のうまさがやばいのです。
 下品な言葉はガンガン使っているけど、めちゃくちゃ可愛らしくて切実で、すらすらと読めてしまう。とにかくどんちゃんの文章が好きで好きでしょうがなくブログを読みあさっておりましたよ。一番好きなのがこれ。そしてこれとかもほんと良い。
 そしてどんちゃんのような文章を書きたい、と思ってどんちゃんの文体をもろに真似して書いたのが『推しの三原則』の2章以降だったりします。いや、わしの書いたやつとかどんちゃんの文章の超劣化コピーに過ぎなく、どんちゃんの方が一億倍文章がうまいのでぜひわしの小説なんか読まず、どんちゃんのブログ読んでください。ただし、わしの小説は買ってください。

 話が前後しますが、こうして自分はどんちゃんを主人公として、最終実作を書くことを決めたのです。(つづく)

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