今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その1〜

 どうも、進藤です。
 ライトノベルの賞を取り、念願の作家デビューを果たしたものの、その後一冊も本が出ず鳴かず飛ばずであった自分が迷い込んだのが、「ゲンロンSF創作講座( https://school.genron.co.jp/sf/ )」でした。
 もともと東浩紀さんのファンで、ゲンロンのイベントを現地で直接見たり、動画をニコニコで見たりしていた自分。実は「ゲンロンSF創作講座」も出来るときから知っていて、キックオフイベントも現地で参加していたりしました。
 SF創作講座大いに興味があり、1期での参加も迷ったのですが、結局「SF」という自分の門外漢の分野なことに気後れし、参加せずにいました。それから2年が経ち、作家として二作目を出す糸口すら見えない自分は、「SF門外漢とか4の5の言ってられねえ」と3期での参加を決めたのでした。
 ゲンロンSF創作講座で自分は梗概を10本、実作を9本書きました。
 SF創作講座受講すると決めたときから、修行のためと出版関係の方に名前を覚えてもらうため梗概選ばれなくとも毎回勝手に書き続けようと勝手に思っていました。1回実作を断念した回がありましたが、なんとか準皆勤賞を達成しました。やったぜ。
 これから作品を1個1個振り返って参りますが、まず自分の作風は、SFという言葉から感じられる重厚さとははるかにほど遠いライトな作風です。まぁずっとラノベ書いていたので。
 これもSF創作講座を受講する際に考えていたことですが、自分のようなSF無知(受講期間中に始めてヴォネガット読みました)が、付け焼き刃でSFらしいSFを書いても絶対に見破られるので、自分がまぁ得意と言えるモノ(キャラクターのかけ合いとか、ポップな題材とか)で戦うことを決めていました。あわよくば、受講中にSF力を高めていき、最終の頃には「SFらしいSF」を書けるようにと思っていましたが、結局それができたかどうかはめっさ疑問です。
 それでは、1個1個紹介をして参ります。

第1回「AI、無人島を脱出できず」→「海を越えたくて」
https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/s59kaichou/2206/

 東浩紀さんのお題、「AIあるいは仮想通貨を題材に短編を書け」で書きました。
 第1回なので力を入れて、仮想通貨についての本も買って読んで勉強をしました。そして仮想通貨とAI両方の要素を入れた梗概を当初書いていたのですが、「仮想通貨をつくるAIがいました」という内容を書いただけで梗概1200字埋まってしまい、(当初は梗概1200字を守ってた。みんな守ってなかったので、そのうち守らなくなる。なお、4期から1200字厳守になる模様)これ両方入れるのダメだと思いました。
 そんなとき思いついたのが、「AIが砂漠とか無人島とか隔離された環境から脱出する」というアイディアでした。付け焼き刃の仮想通貨知識はすべて捨てました。
 自分結構ナショジオのサバイバル的なのが好きです。普通そういう脱出劇で閉じ込められるのは人間なのですが、それをAIでやると面白いかなあと思いました。
 最初はもっとサバイバル的なのにするつもりだったのですが、そこのところの詳細が思いつかず、いつのまにか「100万円貯める」という金額目標達成を目指す話になりました。間違いなく、昔見た「電波少年」の懸賞生活とかの企画のノリです。AIが隔離環境で100万円貯めるにはどうすればと考えたとき、その頃会社の後輩が異常に自分にバーチャルユーチューバーを薦めてきたことに由来し、そうだ、バーチャルユーチューバーやらせて100万円稼がしゃいいやん、と思いつきました。
 自分、結構ログライン大事にしていて、「無人島に閉じ込められたAIがバーチャルユーチューバーになってお金を貯めて脱出しようとする」というログラインができたときに、あ、これウケそう、イケるやんと思いました。
 この梗概を提出して、皆の梗概読んで、すべてを後悔しました。他の皆が「うんSFってそうだよね」という理知的なギミックやアイディアに溢れていたのに対し、「無人島に閉じ込められたAIがバーチャルユーチューバーになってお金を貯めて脱出しようとする」という自分の梗概はSFをナメているとしか思えませんでした。
 すんごいしょんぼりと受講当日を迎えた自分。ダールグレンラジオ(1期や2期の方がやっている受講生の応援ラジオ https://scifire.org/series/dahlgren-radio-season3/) でいい評価をちょっと得て少しだけ元気になった自分ですが、尊敬する東さんが開口一番、「AIが人間と会いたいとかようわからん」「AIじゃなくて犬ならわかる」とおっしゃったので、またしょんぼりしてました。小さくなりました。
 ところが大森さんがひとこと「今回出された梗概の中で一番ストーリーがいい」と評価をしていただき、まさかの実作選出となりました。正直、このときの大森さんの評価がなければ最後までモチベーションが続かなかっただろうなあと。
 そして、自分はこの梗概をもとに、実にふざけた実作を書き、それを社会性とエンタメ性を両立させているSF作家の重鎮、藤井太洋(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/藤井太洋)さんに読んでいただくという究極に恥知らずなこととなりました。
 AIのポゾは想定よりずっとおばかなコになりました。やはりSFバカにしてるようなゆるーい作品になりました。
 でも、この作品を維嶋津/いしましんさん。(第1回の最優秀者得点者、すんごい頭がよく面白い作品(https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/isimasin/2215/ 書いてて、絶対この人が3期の大賞だろうなあと思ってた。そしてこの人とは絶対最後まで仲良くなれないだろうなあと思ってた。)が大好きだと言ってくれたり、マンガ教室にも通われていた今井曖昧さんにポゾのイラストをかいていただいたり(現在の自分のツイッターのアイコンです)、演劇人フリマ( http://l-amusee.com/saravah/schedule/log/20180727.php )というイベントで、俳優の星秀美さん(  https://twitter.com/star_hh?lang=ja )に「自作の小説です」と朗読してもらって変なファンとして覚えてもらったなど、色々と思い出に事欠かない作品になりました。


第2回「大いなる接近」→「大いなる接触」

https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/s59kaichou/2323/

 この話は、世界を自由に左右できる神的な存在(オーバーロード)が日本の地下アイドルにハマり、本当は滅ぼすべきであったその世界を滅ぼすことができない、というお話です。
 実は、自分がこの話で最も書きたいと思っていたことは「中島由貴というアイドルの凄さ」です。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/中島由貴_(声優)

 自分は約半年間、アーススタードリームというアイドルグループの現場に通っていました。
 中島由貴はそのアイドルグループの中心的存在であり、自分の初めての「推し」と言える存在でした。
 アイドルとかよくわからん状態で会った彼女は、恐ろしいくらい頭の回転が速く、自己プロデュース力に長けていました。それから何人かのアイドルに会いましたが中島以上に頭の回転の速いアイドルには会ったことがありません。
 何というか、ヲタクは「恋愛」の匂いをアイドルから嗅ぐと、離れていったり、変に叩いたりすることがあるのです。なんかちょっと男ウケするようなファッションしただけで叩いたりします。けれど中島は、「ゲーム大好きのほほんおてんばボーイッシュっ子」を自己プロデュースしていて、そういうモノから上手く逃げていました。顔が良いコなので「モテる」という匂いを消すのすんごい大変そうなのですが、それを見事に消してやっているので、半端ねえなこのコと思ってました。
 そしてこのコはお客さんがどうしたら喜ぶっていうのを全部把握してる。自分は実は、接触ほとんどしなかった隅っこのヲタクなんですが、それでも彼女は顔を覚えていてくれました。一度自分の前に並んでいたヲタクの方の接触見ていたら、中島はそのヲタクの方に「あれ?いつも帽子かぶってるから今日雰囲気違いますね」と声をかけていて、そのヲタクの方すごい嬉しそうにしていました。
 また、自分が彼女と握手したとき、思いのほか握手時間が長くて、手持ちぶさたでつい、握ってない方の左手で彼女の手の甲をぽんぽん叩いてしまったのですが、即座に彼女は左手で自分の手の甲をぽんぽんと叩き返してくれました。
 とにかく彼女は会うと気持ちがいいコです。その気持ちの良さは、彼女の頭の回転の速さに由来していて、すんごい色々考えておもてなしと自己プロデュースしてるのが見てて自分はわかっていました。(←厄介なヲタク)
 だから、彼女への自分の想いは「好き」というより「尊敬」が近く、他人と接するのが苦手な自分は、一時期彼女の所作や言動を真似して取り入れていたことがあります。もうもはや「師匠」なのです。
 で、そんな中島ならば自分に敵意持ってる上位世界の神とかでも、気持ちよくして家に帰してくれるはず。と思って書きました。
 アピール文に「紺屋高尾」という落語の話を書きましたが、立川談志の演る「紺屋高尾」の「何考えてるかわからないけど、とにかく客を気持ちよくして返すコ」という自分の中島像を作品に書き、すげえコだなあと皆に思って欲しかったのです。
 結果、あんまりそれは伝わらなかったみたいで「アイドルのコの魅力がよくわからない」といろんな人に言われたので意気消沈しました。
 また、そのときは二度とアイドルを題材にした話は書かないと思っていたので、自分が半年間通ったアーススタードリームの現場の情景をアルバムのように詰め込みました。あの恵比寿クレアートや、国立音楽院の情景です。なん年後かにこれ読み返したとき、アーススタードリームのこと思い出せるようにと(ホント自分のために小説書きすぎやろコイツ)。いや、ホントにあのときはアイドルSFなんて二度と書かねえと思ってたのですよ。
 ちなみにタイトルが梗概から実作で「接近」から「接触」に変わっているのですが、それはゲンロンSF創作講座の主任講師大森望先生の著作「50代からのアイドル入門( https://www.amazon.co.jp/50代からのアイドル入門-大森-望/dp/4860112822/ref=sr_1_1?adgrpid=51988095983&gclid=EAIaIQobChMI-sWJ74Si4wIVR3RgCh274QcWEAAYASAAEgKqtPD_BwE&hvadid=338522329347&hvdev=t&hvlocphy=1009280&hvnetw=g&hvpos=1t1&hvqmt=e&hvrand=10847331922727180774&hvtargid=aud-758806828496%3Akwd-333305923802&hydadcr=3854_10903719&jp-ad-ap=0&keywords=50代からのアイドル入門&qid=1562476053&s=gateway&sr=8-1 )」に、アイドルと握手やチェキをとることを「接触」と書いてあったからです。自分のまわりは「接近」っていうことが多かったのですが、主任講師の大森さんが書いていることなので慎んで直しました。ちなみに「50代からのアイドル入門」は自分がSF創作講座に通って最初に購入した参考書です。あと、実はですが、大森さんにゴマをするためにひっそりハロプロの曲(主にモー娘。のプラチナ期の曲「なんちゃって恋愛」とか)を聴いていたりしました。「SEXY BOY 〜そよ風に寄り添って〜」は今ではカラオケの十八番です。
 大森さんはA応P( https://ja.m.wikipedia.org/wiki/A応P )の番組は毎週録画しているのに、アーススタードリームについては名前すら知らなかったことが、自分が1年間創作講座に通って唯一大森さんに落胆した点です(それ以外は感謝しかない)。A応Pとアーススタードリームは同じくらいの格の声優アイドルで、一緒にライブとかしているのになぜかと。まぁA応Pにはおそ松さんの曲とか有名アニメの曲やってるけど、アーススタードリームが主題歌やっている一番有名なアニメはてーきゅうだから仕方ねえかと思ったり。
 なんだか、自分の作品の話をしているのか、中島由貴及びアイドルの話をしているのかわからなくなったので、そろそろ〆ようと思いますが、最後に一番好きな中島のエピソードを一つ。

20歳成人式イベントで天津向からきたビデオレターの「今日、イベントで着物を着ているそうですが、エロい詩吟などはしないように」というセクハラまがいのフリに即座に「いやー、ないと思います」と返した中島。

ほんと、どんな頭の回転の速さしてるんだ。


つづく

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