今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その2〜

第3回「イキワカレノイモウトとの相利共生」→「イキワカレノイモウト」

https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/s59kaichou/2460/

 新井素子さん( https://ja.m.wikipedia.org/wiki/新井素子)の「生き物を作ってみよう!」のお題で書きました。
 最初は、館林市や多治見市が「日本一暑い街」の名目を争っているのを面白いと思って、架空の二つの自治体が「日本一暑い街」という名称を使うために、気温をあげる架空の生き物を大量に連れてこようとする話を考えました。地方自治体のドタバタを書く社会派コメディを書こうと思ったのです。
 しかし、社会的常識がそこらへんの女子小学生(JS)以下の自分は、いざ書こうとすると自治体の内情なんてよくわからず、調べる時間もない(SF創作講座はひと月で梗概も実作も書かなければいけないため、モノ調べている時間はほぼなかった)し調べても付け焼き刃感満載になるのは確実なため別の話にしようとしました。ここ、最初に立てた方針の「できないことはやらない」を徹底しました。
 そこで思いついたのが、ゲームやアニメに出てくるような理想の妹を擬態して餌をとる寄生生物、という狂った発想でした。たぶん、発想の引用元は「ちょこっとSister( https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ちょこッとSister )」ではないかと思われます。
 まぁ、萌えコンテンツの実質って、寂しい独身男性女性に萌えや癒しを与える代わりにお金をとるという相利共生だと思うのですよ。コレ、それを表した立派なそういう社会派小説です。
 この梗概と、「大いなる接触」の実作を読んでいただいた新井素子さんが、笑いながら「こういうのばっかり書く人なんだねw」っておっしゃったの覚えています。
 選出作にはなりませんでしたが、円城塔さん( https://ja.m.wikipedia.org/wiki/円城塔 )にも読んでいただき2ポイントいただいたので自分的には大満足です。
 この作品については、のちに3期生のイトウモさんと梗概交換をした際に、この「イキワカレノイモウト」の梗概で書いてもらったというのが一番ですね。

https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/1pagl1acc/2709/

 これ、単独でも面白いし、自分のと見比べてもらうとさらにすごい面白いです。
 自分の書いた妹は、少年漫画やラノベ的なわかりやすい萌えキャラですが、イトウモさんの書いた妹はほんと官能的で背徳感があって妖しくてヤバいのです。
 のちにこの梗概交換の経緯についてはもう一度ふれますが、とにかくこちらはおすすめです。


 自分の作品に話を戻しますと、このときの授業で大森さんに「そのまんまをタイトルにする」癖を注意されました。第1回のタイトル「AI、無人島を脱出できず」も最悪と言われたりしました。
 1年くらい「なろう」で書いていた後遺症で、タイトルで内容全部説明する癖があったんですよね……というのは言い訳で元々タイトルセンス限りなくゼロなのです。
 もうこの名称センスのなさは如何ともしがたいので、それだけ考えてくれる専属コピーライターを、月一で富士そばおごるくらいでくらいで雇えないかなあと思う昨今です。

 あと、イキワカレノイモウトの性別がオスなのは、3期の大賞に輝いた琴柱さんにいただいたアイディアです。その節は本当にありがとうございました。


第4回「10文字以内で述べなさい。(ただし、句読点は含みません)」

https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/s59kaichou/2552/

 円城塔さんのお題、「拘束下で書きなさい」にて書いた、章によって文字制限が変わる小説です。このお題で文字数制限はベタかと思ったのですが、意外とかぶりませんでした。
 このお題で、まず目指したことは「メタ的に面白くなること」です。
 制限があることを読む側が意識することによって制限がない状態より面白くならなければならない。これ、制限がなければもっと面白い小説だったよね。と言われては身もふたもないなあと。
 よって、会話文といっしょに作者(つまりわたくし)が書く地の文も制限されることによって登場人物と同じ苦しみを作者(つまりわたくし)も味わい、かつ作者(つまりわたくし)の苦しむ姿を読者が想像できるようにするということになればいいなと思いました。作者のつらさが見えなければ読者も「ふーん」と文字数制限を大して面白がってくれないだろうし、逆に読者が作者(つまりわたくし)のつらさを想像してくれれば面白いだろうなと。小説でありながら「水曜どうでしょう」のようなロケバラエティ作ってるノリでした。
 いや、本当に苦しかったのでこんな作品は二度と書きません。
 物語を面白くするために、主人公には「文字数制限」という枷をはめた状態で何か課題を背負ってもらわなくてはと思ってまして、その課題として、これもベタに「愛の告白」としました。ただ、男女関係での告白はベタすぎて文字数なんぞ越えて伝わってしまいそうなので、女の子の女の子への告白としました。自分史上初めての百合です。
 途中、展開につまって、自由に文字数が使えるキャラ(執事)を入れました。こいつに煽ってもらうことによって、主人公をイラっとさせ、それを見た読者が楽しめるようにしました。どうでしょうで大泉洋煽ってるヒゲの役割です。
 結果、実作は法月綸太郎さん( https://ja.m.wikipedia.org/wiki/法月綸太郎)に多くポイントを入れていただき、その回の最優秀作品をとることができ、なんと!!このとき猛者揃いの3期生の中でポイントレーストップに立ちました。


 そのときのスクショです。
 後に、ほかの3期生の皆が有名な作家になったとき、コイツらは今でこそ偉そうにしているがかつては俺の下にいたんだぞと、このスクショを見せつけとや顔をしたい。そういう老害に私はなりたい(なりたくない)。

 あと、この作品の思い出として、法月さんに、最後の地の文の文字数足らずで作者も穴に落ちたことが伝わってすごい嬉しかったこと。
 一期の卒業生でプロデビューされた櫻木みわさん( http://kodansha-novels.jp/1812/sakurakimiwa/)に読んでいただいて「主人公可哀想だった」と言っていただいことがあります。(自分、自作の登場人物に酷いことするの大丈夫な人です)


第5回「宇宙駆ける釣りケーキ」

https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/s59kaichou/2611/

 法月倫太郎さんのお題「来るべき読者のための「はじめてのSF」」にて。
 自分は子供の頃ズッコケ三人組が大好きだったのです。
 小学生時代、毎週水曜日はスイミングスクールの日で、スイミングスクールに行く時間まで、家の近くの「まちかど図書館」にいつもいたのですが、だいたいそこで読んでいたのはファミ通かズッコケ三人組でした。
 図書館行くと、まずズッコケ三人組シリーズの棚からズッコケ三人組のどれかをとって読んでました。「文化祭事件」が一番好きでした。ズッコケ三人組は何度も何度も読み、何十周も読みました。自分そういうところありまして、小学生時代、レンタルビデオ屋でビデオ借りて観るのが好きでしたが、大長編ドラえもん以外のものを借りたことがありませんでした。とにかくレンタルビデオ屋に行くと、自動的に大長編ドラえもんの棚に行くことは規定事項で、そこから大長編ドラえもんのどれを借りかを考えるだけの人生でした。「大魔境」が一番好きです。
 そんなわけで、このお題で最初に思ったのが、ズッコケ三人組でズッコケ三人組のような、子供たちが大人に頼らず自活する話を書きたいということでした。ズッコケ三人組の何がよかったって、小学生が大人に頼らず、冒険であったり難事を解決するところだと思うのですよね。
 自分ケーキはなんでも好きです。スイーツ男子です。あと、昔から釣りに対する憧れがあります。自分で釣った魚、自分で起こした火で焼いて食べるってすごいカッコイイなと昔から憧れていました。なのにいまだに釣り堀以外で釣りをやったことはありません。やれよ俺。よって、自分の願望、ケーキ食べたい。釣りを沢山やりたいを直列させました。
 あと、子供のころの、秘密基地欲しかったという自分自身の願望、というより秘密基地は男の子全般の願望です、を是非書きたいというのがありました。
 秘密基地となる宇宙船内にトイレつけました。自分として秘密基地にトイレは必須でした。催したときに秘密基地いちいち出てなんか公衆トイレとか行くのすごい覚めるし嫌なので。
 だから秘密基地にトイレはすんごい強引に付けました。「秘密基地にトイレ欲しい」を意見交換会で他の皆にわかってもらったのがすごく嬉しかった。
 主人公を三人組ではなく二人にしたのは、短編では三人をちゃんとは書くのは無理だろうという判断です。
 この話も第1回の「海を越えたくて」と同じくお金を稼ぐ話です。自分はどうやら、自立=自分でお金を稼ぐだと、捉えているところがありますね。ズッコケ三人組でも、三人組が釣り客にラーメンを売ってお金を稼ぐ話があるのですが、彼らがちゃんとお金を稼いで終わるのが好きなんです。「子供が金稼ぎとか汚らわしい」みたいなよくある視点じゃないのがすごい好きなのです。ちなみにドラマ版のズッコケ三人組は、そういう話になっていたので「あーあ」と思った覚えあります。
 「釣りケーキ」は大森さんに「福島正実記念SF童話賞作品( https://www.iwasakishoten.co.jp/news/n10464.html)」に出すよう薦めていただきました。無論出します。
 そして、この小説を読んだ大森さんから「SF向いてない」のお墨付きを得ました……。
 いや、これ、自分もそうだろうなあと思ってました。というのも、SFはいかに設定に対して細やかに突き詰めるか、が一つ焦点だと思うのです。いかに自分が設定した舞台やギミックに詳細に向き合うか、がSFらしさのひとつだと思うのですが、自分はこっちの展開の方が面白そうってことだけで、設定をうっちゃるところがあって、釣りケーキは特に、自分の少年の部分の好きなことやるために、詳細なんざぼろぼろにして突き進んだため、まぁSF読みの方は、まぁ真面目につきあっとれんわという感じでしょうなあ。
 ここから、では自分なりにどうやったらSF書けるんや、SFファン楽しませることできるんや、と日々考えていたり、いなかったり。

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