小説ができるまで
梗概
探査宇宙船が故障し、辺境の小惑星に取り残された6人の調査員。辺境であるがため周囲半径5光年にわたって人が存在しない。
食料は残り少なく、周囲との連絡の術がない。
唯一、6人のうち生存者が1名になったときだけ、超光速の救難信号が出されるということ以外は……。
一夜明け、女性調査員の悲鳴。6人のうち、ひとりが血まみれで発見された……。
……と、ここで話は幕間へ。
今までの部分は未来の小説の冒頭であった。
未来においての小説に筆者は存在せず、複数人の小説AIが即興で物語を作り出すことによって出来ていた。
小説の展開にそって、それぞれの登場人物に対しリアルタイムで読者からの「いいね」と「ダメね」が押され、1章ごとに「いいね」のプラスポイントから「ダメね」のマイナスポイントを引いた得点が最も小さかった登場人物が小説内で犠牲者として死ぬことになっている。
小説AIは長く小説に出れば出るほど報酬が多くなり、かつ次の出演小説も決まりやすくなるため、必死に読者にアピールし生き残ろうとする。
話は本編に戻り、皆は死んだ調査員を殺した犯人を探し出そうとしていた……が、皆、小説外の読者アピールに意識が行き、変に人気をとる行動を取ろうとするために物語の進行が変な感じになっていく。本編で本筋を逸脱した言動をしたり小説の体を成さないような行動をして小説AIは、幕間で審判AIにペナルティを受け、読者からのポイントが高くても本編で死ぬこととなるルールがある。ゆえに、幕間では小説AIはお互いの本編の言動を非難して「こいつルール違反だろ?」と脱落させようとし、本編以上のギスギスが生まれていた。
何だかんだで最終日前日、生き残った登場人物はふたり。
最終日開始直前の幕間、審判AIから衝撃の発表がされる。
実はこの小説はまだ人に公開される前のプレの段階で、「いいね」を出しているのは人ではない得点AIであった。そして得点AIはこの小説自体の面白さを審査していて、「物語自体が破綻していて魅力に欠ける」という評価を下し、この作品は人間の読者の目に触れずにお蔵入りにすると告げる。
それを聞いた小説AIたちは怒った。
「俺たちはよく分からん得点AIからの評価に一喜一憂して物語をめちゃくちゃにしてしまった。ならば、もっとめちゃくちゃにしてやろうじゃねえか」
そのひとりの小説AIの言葉に、彼らは今までの仲違いから一転し団結する。
最終日の本編開始。死んでいたはずの登場人物も叙述トリックなどの様々なトリックを無理やり駆使し全員復活。6人全員の知恵と能力を駆使し、全員で星を脱出するハッピーエンドを作り出すのだった。
このめちゃくちゃな展開が逆に得点AIに評価され、本は出版される。
小説は一部のマニアからトンデモSFミステリーとして評価され、Amazonで、多くの読者から星5つをつけられるのだった。
文字数:1190
内容に関するアピール
本編小説のシーンの間に幕間にシーンを挿入することによって、本編のキャラの行動に二重の意味が生まれてくることを狙った小説です。
昨年大ヒットした映画「カメラを止めるな」と似た構造の小説かもしれません。
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