今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その3〜

第6回「始まりの花嫁」

https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/s59kaichou/2673/


 ひたすらテンションの高いバカみたいな恋愛小説が書きたい。
 秋葉原の神田明神あたりを歩きながらRADWIMPSの「前前前世」を聞いているときにこんな気持ちが湧きました。
 とにかく何度生まれ変わっても絶対この人と結ばれる的なテンションの高い、この曲みたいな、脳内麻薬ドバドバ出てるバカラブストーリーが書きたかったのです。
 ちな、自分「前前前世」が聴いてたのは、親愛なる谷尻まりあさんがライブで「なんでもないや」をよく歌い、それがマジで好きなので、その影響で聴いていました。
 谷尻さんの歌う「なんでもないや」ほんとエモくて好きなのです。
 で、試しに梗概を書いてみたら、意外といい感じにテンションの高い話が書けました。実作書き始めたときも、前々作の文字数制限や、前作の少年少女向けとは違い、パロディ満載の自分が得意な作風なので快調でした。これは上手くいく!!と思いきや、後半みるみる失速していき、結果、何だかなあという出来で終わりました。
 意見交換会で、いしまさんから「進藤さん疲れてる?」って言われたの覚えてます。
 この作品自体後半失速していきましたが、この辺りでSF創作講座全体に関しても自分は失速し始めていました。1年間終始梗概と実作を書き続けるゲンロンSF創作講座、この頃、自分が持っている武器ほぼ全部出し尽くして、無理やり何とか言葉紡いでる感満載でした。
 今振り返っても、自分の後半戦ダメダメだったなあという印象ばかりです。事実、後半戦、提出ポイント以外1ポイントも取れなかったですし……。
 後半戦のダメさから、自分が最終候補に残るかどうか、客観的に見てもすんごい微妙だなあと自覚していて、最終書いてるとき、「ここでいいもの書かなきゃ残れないわ」とめちゃ追いつめられていたのは、これよりちょっと先のお話。


第7回「時計の国、二人の忍」→「白虎夜」

https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/s59kaichou/2708/


 梗概について。とにかく忍者を出したかったのです。
 guizillen( http://guizillen.under.jp )という劇団の「センチメンタルジャーニーズ」という演劇を見たとき、前説で俳優の篠原正明さんがずっと「世界忍者戦ジライヤ」( https://ja.m.wikipedia.org/wiki/世界忍者戦ジライヤ )」について話していて「世界中に忍者がいて、で、忍者って、隠れなきゃいけないはずなのに、世界大会があって、フランスの忍者とかすげえ派手」みたいな話がめちゃくちゃ面白かったのです。
 確かに忍者に対する人々の共通認識ってすごくて、忍者ってほぼ魔法使い並みに色々できて、強く、かつ多様性があるやつらと見られています。そして本来あいつら隠れてこそこそしてなきゃいけないはずなのに、目立ってカッコイイ奴とかもいてっていうなんかよくわからん変なギャップも相まって、忍者おもしれえという感情が湧きました。
 で、忍者の梗概書きました。以上。もうこの梗概について話すことはゼロです。
 個人的にもこの梗概、すんごい出来悪いと思っているので。

 この回に関してはとにかくイトウモさん( https://school.genron.co.jp/works/sf/2018/students/1pagl1acc/ )との梗概交換の件がクリティカルだったと思います。
 以前、SF創作講座の卒業生によるラジオとして、ダールグレンラジオを紹介しましたが、もうひとつゴッドガンレディオ( https://m.youtube.com/watch?v=DdrQdLHpoqQ )というラジオがありました。
 ダールグレンラジオは梗概の中から優秀作を選んで取り上げるラジオなのに対し、ゴッドガンレディオは選出外の実作の自主提出作品を読み、取り上げてくれるラジオでした。
 我々3期生の何が恵まれていたかというと、この2つのラジオがあったことです。成績優秀者をさらに底上げしてモチベーションを上げてくれるダールグレンラジオ。選出外で地道に自主提出を書く『劣等生』のモチベーションを維持してくれるゴッドガンレディオ。この2つのラジオがあることで、上のラインは上がり、下の脱落者は少なくなり、ものすごくいい環境となっていました。
 現に自分はゴッドガンレディオがなければ、自主提出を続けることができなかったのは確実です。
 ともかく、毎回自主提出をしている自分とイトウモさんはゴッドガンレディオの常連で、『ゴッドガン勢』として認定もされていました。
 ゴッドガンレディオにおいての自分とイトウモさんの評価は真逆。自分は「リーダビリティ高いけど、読んでいて残るものが弱い」イトウモさんは「読んでいて残るものはめちゃくちゃあるが、敷居が高い」
 で、梗概交換してみたら?と冗談めかして言われたことがきっかけでした。
 イトウモさんがノリよくツイッターで「交換しますか?」と言ってくれて、いや、そんな楽しそうなことやるでしょって感じでやりました。
 自分はイトウモさんの文章すごい好きなんですよ。イトウモさんの文章って常に静かで冷静なんですが、その裏でははちゃめちゃな大事件が起こりまくっていて、でも文章で冷静さが保たれているギャップがたまらないのです。あと、イトウモさんの設定は突飛に見えて、実はひとつひとつパズルのピースのように意味や意図が隠れているのも魅力です。
 で、イトウモさんの「白虎夜」の梗概を読んで、書き始めるとき、自分はまず、梗概からストーリーもキャラクターも設定も全く動かさないことに決めました。自分のイメージでは、自分は原作から映画監督になるでもなく、ノベライズするでもなく、役者になることに決めました。いかにイトウモさんの筋でいい話を書くかと。
 ちょうどこの「白虎夜」を書くとき観たのがくによし組の「サンタクロース(仮名)の死」( https://stage.corich.jp/stage/95342 )という演劇でした。
 このときくによし組さんの演劇を初めて観たのですがすごいよかったです。めちゃくちゃシュールな展開を、合間合間のギャグでお客さんを引きつけながら駆動していき、最後に胸に寂しさが残っているというつくり。あ、これだって思いました。
 だから「白虎夜」については、キャラクター同士のやり取りではとにかく笑わせに行こうと書きました。その裏で、メインテーマはイトウモさんの梗概にあるメッセージをひたすら読んで考えました。台本を読み込む役者の作業です。
 自分が「白虎夜」に対してこうだなと思ったメインテーマは、何というか、あの作品に出てくる虎は、人が誰しもが持っている個性のことであり、それが凄くその人にとってアドになることがあるけど、同時にその人を不幸にし、孤独にする。で、死ぬまで人はそれにつき合って行かなきゃいけない。良かれ悪かれ、という。
 そのテーマに沿って書いた、楽しいけど何となくつらいお話。で、そこから、つらいけど希望もあるよ、ってラストも書けた気がするので、自分的にはSF創作講座で書いた作品で一番好きやもしれません。

 で、今後、ぜひぜひSF創作講座現受講生の皆さまは梗概交換とかどんどんやって欲しいなあと思ってます。
 交換する当人同士も、深く相手のもつテーマや作風を考えるって行為はかなり面白いし、周りから見てても個性の交換ってとても面白いエンターテイメントなので。
 是非是非

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