島田洋輔

大阪の片田舎で農業を営み、天上人生活を楽しむ自由人。東京都立大学大学院修士課程(社会学…

島田洋輔

大阪の片田舎で農業を営み、天上人生活を楽しむ自由人。東京都立大学大学院修士課程(社会学)修了。精神分析学と社会システム論の愛好者。現代社会における人間の自己家畜化を憂い、全く新しい未来社会の可能性を模索中。https://twitcasting.tv/shimazo0315

最近の記事

新たな人類の脳【集合知】としての高次AIがもたらす未来の人間社会

人間の知能を遥かに超えるようになったAIは、人類の新たな脳【集合知】として、人間社会を新たな枠組みで統合しはじめるかも知れない。 過去の時代であれば、「人間がAIに支配されるなど絶対認められない」となったのだろうが、人間の自己家畜化が進行する現代社会において、仮に社会生活や心身の最適化(精神の安定や健康の維持)がAIによって完璧になされるとなれば、どうだろう。 多種多様なストレスによる情緒不安定や生活習慣病から完全に解放され、常に快活で多幸感に溢れ、若い頃はもちろん老

    • 人間の自己家畜化は何をもたらすのか? AIに自ら支配されることを望む未来はありうるのか?

      人類のここ3000年の歴史は、『人間の自己家畜化』の実現過程と言えるかも知れない。 『自己家畜化』 すなわち、自身を「(自然界への適応ではなく)人間社会にとって役立つ生き物」へと作り変えていく、というプロセスだ。 実際、この3000年で人間の脳は、増大するどころか縮小しているという。これは、オオカミが犬へ家畜化されたときにも生じた生物的変化とのことだ。 一体、われわれ人間に何が起こっているのだろうか? 人間は、社会的動物である。 つまり、人間同士でコミュニケーション

      • 理想の田舎暮らし実践考察 その5

        「都市は、いかにして構築されていった(そして、いる)のか?」 田舎生活を考える上で、その問いは避けて通れない。 結論から言えば、それは「経済的合理性や生活の利便性向上のための生態学的選択である」と言える。 つまり、「物質的に豊かな生活」を追求するのであれば、社会機能を集約した都市が好ましい、ということだ。 田舎生活の復権を唱えるのであれば、どうしてもこの「物質的豊かさ」に置き換わる新たな価値を見出さねばならない。 でなければ、「都市より田舎の方が住みやすい」という話

        • 理想の田舎暮らし実践考察 その4

          「オンラインのまちづくり」と「リアルなまちづくり」のクロスオーバー。 その理想形はどこにあるのだろうか? メタバースという言葉が世に流通しはじめてかなりの年月が経過したが、まだ人が仮想空間に常駐するような時代には到達していない。 やはり、人はリアルな人間関係、リアルな体験に多くを求めていて、そこから離れることはできないのだろう。 が、リアルな人間関係を作り、リアルな体験を行うには、多大な時間と金銭、労力が必要だ。 『移住して田舎暮らしをする』 そのためには、地域に

        新たな人類の脳【集合知】としての高次AIがもたらす未来の人間社会

          理想の田舎暮らし実践考察 その3

          そもそも「理想の生活」とは何だろうか? 『毎日が楽しく、心身ともに快活で、充実している』 その状態が幸福であることに異論の余地はない。 が、われわれの現実の社会生活は、なかなかそこに到達できずにいる。 人類史上類を見ないほどの豊かさと安全性を兼ね備えたこの社会に生きているにも関わらず、だ。 その要因は一体何なのだろう? 物質的な豊かさは、幸福の必要条件であって、十分条件ではないということなのだろうか。 結論から言うと、人間は、自分が生きている意味を主体的かつ能動

          理想の田舎暮らし実践考察 その3

          理想の田舎暮らし実践考察 その2

          『田舎のまちづくりは、合理的にやってはいけない』 これが長らく地域活動をしてきた私の帰着点だ。 どういうことか。 そもそもの話、戦後、社会の合理性(つまり経済性や利便性)を追求した結果が、現代の日本社会の姿なのだ。 雇用を生み出し、人口を増やし、インフラを整備し、より快適で住みやすいまちを創る。 まさしく、それが「都市」だ。 田舎とは、そういう社会の合理化過程で排除、淘汰されてきた(そして、現在進行形でされている)社会空間という側面を強くもっている。 だから、同

          理想の田舎暮らし実践考察 その2

          理想の田舎暮らし実践考察 その1

            7年間の東京暮らしを経て、25歳から生まれ故郷に戻り、そこから長らく地元のまちづくりに取り組んできた。  正直、うまくいかなかったことがほとんどで、帰郷当初から続いている活動と言えば、生業である農業と地域の子どもたち向けのボランティア活動くらいだ。  まちづくりに強い情熱を持って一緒に活動をしてくれる仲間はなく、優秀な子はみな都会に出てしまうので育たず、結果、ほとんどのことは自分一人でやっている。  好条件と言えば、家が地主家系で、築100年以上の古民家に加

          理想の田舎暮らし実践考察 その1

          有機農業は、日本農業の分断と対立、危機を乗り越えられるか?

          世界的な環境保護意識の高まりとともに、有機農業や低環境負荷農業が注目されているが、国内における有機農業の展開は、まだまだ不透明な情勢だ。 そもそも、環境保全と経済活動には、数多くの対立的要素があり、「どちらかを立てれば、他方が成り立たない」という事態も多い。 当然、そのような対立を抱えたまま無理に有機農業を推進すれば、その対立が先鋭化し、いずれどこかで両者ともに破綻する危険もある。 ここでは、有機農業や環境保護における「分断と対立の問題」に焦点を当て、それらをいかに克服

          有機農業は、日本農業の分断と対立、危機を乗り越えられるか?

          【研究ノート】日本における有機栽培農業の展開戦略②

          ▼有機農業推進のための二つの道 有機農業を推進するという課題を掲げた場合、その方策は二つあると思われる。 つまり、「大きくやるか」「小さくやるか」だ。 前者は、政府や全国組織が、有機農業の諸々の基準(栽培法や農業資材の使用基準)を定め、その条件をクリアしたものに認証を与え、流通販売にまつわる各種プラットフォームを整備し、消費者意識を高めるPRを行い、その拡大を目指すという方法だ。 つまり、全国一律で大々的に展開するという方式。 一方後者は、農家が個人もしくはグループ

          【研究ノート】日本における有機栽培農業の展開戦略②

          【研究ノート】日本における有機栽培農業の展開戦略①

          アメリカにおける2020年のオーガニック商品の市場規模は、600億ドルを超え、うち青果が182億ドルを占めている。これは有機以外の農作物を含む青果市場全体の15%以上であり、アメリカ国内で有機栽培の野菜果物が定着しつつあることを示唆している。 世界的にも、有機食品市場は10年で2倍になるなど、近年急激に成長をしており、環境問題の高まりとともにさらに拡大してくことが予想される。 一方、日本国内での有機農業の栽培面積は、2018年時点で全体の0.5%程度であり、有機食品の市場

          【研究ノート】日本における有機栽培農業の展開戦略①

          【思考実験】日本農業が大再編される未来はあるのか?

          日本の農業総産出額は、近年8兆円規模で推移しており、今後減少が見込まれるものの、国内において大きな市場を形成している。 日本の農業は、小規模な自営農家が大多数を占める産業構造をしており、企業的経営が主体である他業種に比べて異質である。 企業による農業参入も近年増加しているが、気象条件に大きく左右される収益性や集約された農地確保の問題等、企業型経営が優位に働かない要因も多く、撤退する事例も多い。 今後、企業の農業参入が本格化する社会条件が整い、大企業主体の農業経営が当たり

          【思考実験】日本農業が大再編される未来はあるのか?

          【思考実験】 日本の農業全体を一つの株式会社として再編した場合、未来は拓けるか?

          日本の農業は、小規模な経営体の集合体だ。 近年、規模拡大を進める経営体が急増しているが、それでも農家一戸あたりの経営面積は欧米のそれに遠く及ばない。 現在、高齢農家の離農が進み、今後、主業農家による農地集約大規模化等により、農業全体の構造転換が進んでいくと予想されるが、日本の農業を巡る情勢は、労働力不足や資材燃料肥料費高騰など先行き不透明な部分が多く、浮沈の予測が難しい。 このような状況下、「日本の農業全体」を一つの経営体、例えば一つの大企業として再編できたと想像した場

          【思考実験】 日本の農業全体を一つの株式会社として再編した場合、未来は拓けるか?

          【研究ノート】小規模多品目栽培における営農コスト削減方法とは?【1】

          一般に農業における生産コストは、単一作物を集約された農地で大規模に栽培することによって最小化することができる。 大規模化すればするほど大型機械を導入するメリットが高まり、播種、植付、収穫等の作業にかかるコストを低減させられるからだ。 生産コストを低減することは、価格競争で優位に立てるということであり、営農の大規模化は経営戦略上の大きな要となる。 が、大規模化が困難で、生産の効率化が図れない営農環境においては、その方向でのコスト削減が非常に難しい。 ここでは、大規模化と

          【研究ノート】小規模多品目栽培における営農コスト削減方法とは?【1】

          【研究ノート】中山間地における持続可能な営農とは?【4】

          ▼『パズル営農』の可能性 農業もビジネスである以上、市場におけるシェアを上げ、競合他社を引き離す独自の技術や商品の開発ができなければ、経営の優位性を確保できない。 だが、農業分野において、それは現実的な経営戦略とは言えない。 一つの経営体で、ある品目の全国シェアの○%を握るというのは不可能だし、それを可能とするような技術や商品などないからだ。 消費者側から見て、「車はあのメーカーの○○ばかり乗っている」はあっても、「キャベツはあの生産者の○○の品種しか買わない」はない

          【研究ノート】中山間地における持続可能な営農とは?【4】

          【研究ノート】中山間地における持続可能な営農とは?【3】

          ▼「生産性の向上」に拠らない所得向上 農業で高い収益を上げるには、生産性を向上させることが最短の最善手だ。 生産性の向上には、1)広大な農地あるいは高価な施設、2)大型で高性能な農業機械、3)潤沢な労働力が必要だが、中山間地でそれらを駆使した高生産農業を行うのは難しい。 農地面積が小さく、大型機械が導入しづらく、労働力も集まりにくいという事情があるからだ。 これらの条件を鑑みると、必然的に小規模な営農手法に拠らざるを得なくなるが、家族経営を主とする零細農家の所得水準は

          【研究ノート】中山間地における持続可能な営農とは?【3】

          【研究ノート】中山間地における持続可能な営農とは?【2】

          ▼「不利」を「有利」に変換する独創性 結論から言うと、中山間地における持続可能な営農について、「これが正解」「こうやればうまくいく」という一般論的回答はない。 なぜなら、一般論化できてしまう解決案とはどこでも実現できるものであり、どこでも実現できるなら固有性はなく、固有性がなければ優位性もなく、優位性がなければ競争に勝ち残れず持続できない、ということになるからだ。 「ゆるキャラを作って村おこし」という試みも、あちこちで同じことをやりはじめれば目新しさはなくなり、次第に世

          【研究ノート】中山間地における持続可能な営農とは?【2】