【研究ノート】小規模多品目栽培における営農コスト削減方法とは?【1】

一般に農業における生産コストは、単一作物を集約された農地で大規模に栽培することによって最小化することができる。

大規模化すればするほど大型機械を導入するメリットが高まり、播種、植付、収穫等の作業にかかるコストを低減させられるからだ。

生産コストを低減することは、価格競争で優位に立てるということであり、営農の大規模化は経営戦略上の大きな要となる。

が、大規模化が困難で、生産の効率化が図れない営農環境においては、その方向でのコスト削減が非常に難しい。

ここでは、大規模化という手法以外でのコスト削減を図る必要があるが、それはどういうものであるかを検討したい。

【土壌や肥料という観点から見たコスト削減】

1)輪作の最適化

同一作物の連作は、土壌を酷使し、病害虫を蔓延させ、生産性を悪化させる。それら弊害を克服するため、土壌消毒をしたり、土壌改良剤を投入したりすることで、必然的に営農コストがかさんでしまう。

これを避けるには、輪作することが望ましいが、輪作とはつまり複数品目を栽培するということであり、経営上、合理的と言えない場合もある。

例えば施設栽培では同一作物を作り続ける方が収益性が高く、そのため定期的な土壌消毒が必須となる。

では、仮に輪作が有効である営農環境にあるとした場合、理想的な輪作体系とはどのようなものだろうか。

水田の裏作にキャベツやタマネギを栽培する、あるいはじゃがいも、小麦、てんさい、豆類を交互に栽培するなど、産地として輪作体系が既に出来上がっている場合は、話は簡単だ。それを踏襲しつつ、状況に合わせてアレンジしていけば良い。

が、一から輪作体系を組み上げていくとなると、さまざまな要素を考慮する必要が出てくる。

その土地の風土に合った品目や品種、作型の選定や、それぞれの作物の販路確保などだ。

当然、圃場が細かく点在している場合などは、圃場ごとの作付け計画等も必要となり、同一圃場で同一作物を同一時期に栽培するよりも遥かに細やかな栽培計画が必要で、作業の手間も増える。

ゆえに、輪作によるコスト増減の計算にはシビアであるべきで、輪作の非効率な部分(デメリット)を上回るメリットを見い出していかねばならない。

輪作を取り入れることで逆に営農コストが上がり、販売が振るわなくなるのであれば、本末転倒だ。

これは一般論として考える案件ではなく、「自身の営農環境における輪作の最適解を探し続ける」という姿勢そのものが大事だと言える。

2)緑肥の活用

緑肥は、肥料コスト削減のための基本戦略の一つとして考えられている。

緑肥の種類は多岐にわたるが、条件によっては適さない作物もあり(過湿に弱い等)、目的や効果を意識した選定が必要だ。

エンバクは、過湿に強い部類に属し、作型も幅広く、根こぶ病を軽減する効果もあることから、アブラナ科主体の栽培圃場では積極的に活用したい緑肥の一つだ。

また、緑肥の鋤き込み時に石灰窒素を施用することで腐熟が促進される効果があり、また、夏場の害虫発生を抑える効果も期待されるので、ぜひ活用したい。

3)肥料の過剰投入の回避

農業の売上は、基本的に収量と品質に比例する。

そのため、収量を上げ、品質を確保するために、どうしても肥料と農薬の投入が過剰になる傾向がある(肥切れや病害虫による売上損失の方が、農薬肥料代よりも遥かに大きい)。

肥料の過剰投入は、土壌の成分バランスを崩し、作物の生育に悪影響を与えることになるが、これを避けるには定期的な土壌診断とそれに基づいた減肥が必要だ。

ただ、小規模多品目栽培の場合、圃場ごとのデータを細かく取り、次作に合わせた綿密な施肥設計をせねばならず、これは相当な手間となる。

簡易的、かつ低コストな方法で、これを実現し、適宜、必要最低限の肥料を追加していく営農ができるかどうか。

耕作者の勘と経験という部分だけではない、客観的な手法の開発が期待される。

4)有機肥料の活用

有機肥料は、化成肥料よりも多量に圃場に投入する必要があり、その分、手間と労力がかかる。

有機肥料そのものの価格が安くとも、それら運搬等の費用を含めると化成肥料よりも割高になることもあり、適切なコスト計算が必要だ。

その点を考えると、発酵鶏糞は安価で肥料効果の高い有機肥料ではあるが、使いどころを誤まれば、作物にダメージを与えたり、生育不良を引き起こす危険がある。

特に過剰投入は、肥やけやカルシウム過多を引き起こすので注意が必要だ。

また窒素供給も環境によって不安定で、かつ、一カ月程度で無機化しなくなってしまうなど、使い勝手の悪さが目立つ。

有機肥料は全般的に肥効が不安定で、化成肥料のように「効かせたいポイントでしっかり効かせる」という使い方が難しい。

ゆえに使いこなすには、相応の知識や経験が必要であり、肥料費の削減もそれらを習熟しなければ達成できない。

以上の点から、肥料面での営農コスト削減にはいくつかの方法があるものの、経営合理性から見てコスト削減売上向上に結び付くとは限らないものもあり、自身の営農環境に即した最適な方法を独自探究していくことが求められる。

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