【研究ノート】中山間地における持続可能な営農とは?【2】

▼「不利」を「有利」に変換する独創性

結論から言うと、中山間地における持続可能な営農について、「これが正解」「こうやればうまくいく」という一般論的回答はない。

なぜなら、一般論化できてしまう解決案とはどこでも実現できるものであり、どこでも実現できるなら固有性はなく、固有性がなければ優位性もなく、優位性がなければ競争に勝ち残れず持続できない、ということになるからだ。

「ゆるキャラを作って村おこし」という試みも、あちこちで同じことをやりはじめれば目新しさはなくなり、次第に世間の興味は薄れ、一過的なブームと化し、いずれ下火となる。

必要なのは、その地域の特性や固有性、環境を深く理解し、他地域の模倣ではなく、「ここでしかできない営農」を独創的に突き詰めていくという発想だ。

その気概なくして、不利な条件を覆すことはできない。ここでは不利を有利に変える独自の戦略が必要となる。

では、不利を有利に変える戦略とは具体的にどのようなものか。

改めて現在の中山間地農業の環境をまとめると…

1)過疎化で人がいない

2)耕作放棄地で溢れ返っている

3)ひとつひとつの農地が小さく、いびつで、作業を効率化できない

こういった一見不利に見える要素を、肯定的に捉えることは可能だろうか。

人がいない→人目を気にせず自由な営農ができる。

耕作放棄地が多い→地代ゼロで借り受けることができる。

細切れの農地→圃場条件ごとに多様な作物を栽培できる。

主要産地では、「自分だけが周辺農家と違う作物を独自の方法で作る」という営農が難しい。

隣接農地すべてが慣行栽培を行っている中、自分だけが無農薬栽培というわけにはいかない。

このように、農地利用の自由度という点では、中山間地の方が勝っている。

▼はじまりは独創性ある人物の登場から

一般にビジネスは、成功した事例を水平展開し、事業をより大きく、より効率化していくことで成長していく。

フランチャイズはその好例と言える。

が、中山間地の営農では、水平展開という方向性に活路はない。他地域では実現困難な独創性や固有性こそが武器であり、そこをいかに突き詰めるかが成功の鍵となる。

最大の問題は、その独創性や固有性を「誰が」発揮するのかという点だ。

そもそもの話、地理的優位性を犠牲にしてまで独創性を発揮したいという農業者などいるのだろうか?

「自分にしかできない営農方法」を独自に研究し、実現したいという志のある農業者などいるのだろうか?

だが、すべては、このような人物が登場しないことにははじまらない。

これは制度や仕組みによって意図的に発生させられることではない。それゆえに偶発的であり、社会的に見れば「特異な現象」とさえ言える。

『中山間地とは、地域特性を最大限活用した独創的な営農方法を研究し、実行する絶好の舞台である』

そういう解釈が広まれば、あるいはこの環境に飛び込んでみたいと感じる者が現われるかも知れない。

すでに確立された営農方法をコピーするのではなく、自ら新しい営農方法を開拓していく。

中山間地とは、そういう「現代の未開拓地」として最定義されるべきだろう。

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