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昨夜、金縛りにあいまして。それはいいけど残された軽い謎。

深夜1時。わたしの掛け布団の上に、何かがのしかかった。
明らかに重たい。
しかも、一部分だけ重いのではなく、人にのしかかられている感覚。

実は飼い猫が………、とそういう可愛い話じゃない。
第一、自分の部屋でひとりきりで寝ているのだから。
しかも、繰り返すけど自分の部屋でひとりで寝ていて、深夜にこっそり部屋を訪ねて布団に入って来るようなお相手も特にいない。
書いていて残念で仕方ないけど。


────── おもたい ──────

身体をまったく動かせない。
その時のわたしは、右腕だけをほぼ真っ直ぐ頭の上へと伸ばした状態。布団から完全に出た右手は、床の上で掌を天井に向けていた。
なんでまた、そんな姿勢で寝ていたのか自分でもよくわからない。

その掌を、トコトコトコトコ……、とはっきりとつつかれた。
人の指が二本、わたしの掌の上で踊るようにリズミカルに動いた感じだ。
もちろん、深夜に部屋に入ってきて掌をつっつくような鳥なんかもいない。

──── なんなの……うるさい…────

怖いというより何か悪戯をされている気がして、それを面倒に思う感情の方が大きかった。

相変わらずわたしの身体は全然動かない。右手を含めて、動かそうにも完全に固まって動かないのだ。



金縛りの正体をご存知だろうか?

科学的な説明だと、
『 身体、特に筋肉が眠っていて、脳だけが起きている。だから、身体を動かす指令を脳が出しても身体が反応しない状態 』
らしい。

スピリチュアルとか目に見えないものの方を完全に信じるなら、幽霊的な何かの仕業なのかもしれない。


どっちでもいいけど、煩わしいのでとりあえず追い払うことにした。

自分ではかなり大きな声のつもりで、
「 邪魔だからどいてください! 」
と言ったのだ。

冗談でも話を盛っているのでもなく、実話です。

といっても、全然言葉になっていない。
何しろ身体が機能しないのだから、口だってうまく動かない。
何を言っているのかわからない喚き声が、自分の耳から入ってくる。
脳は起きているので、それは自分でよくわかる。

諦めずに、同じような言葉を口から数回発してみた。
どっちかといえば、幽霊さんを追い払うというより、身体の一部を無理矢理にでも動かすことで、眠っている身体の機能を叩き起こす目的だ。

だから、追い払うと言っても除霊とかそういうもんじゃない。
極めて科学的方法で金縛りをとこうとしたのだ。

何度か声を出すと、ようやく喚き声がそれなりの言葉の形になって聞こえるようになってきた。

──── そうして、ふっと気がついた。


わたしは掛け布団などかけておらず、敷布団の上で失神していたらしい。
枕元にスマホが転がっている。

寝ぼけながら身体を一度起こす。

………… 何だったんだ …………

そう思いながら掛け布団の下に潜り直し、今度は何事も起こらないまま眠りについて今朝を迎えた。




今回のこれがただの夢だったとして、よくわからないことが一つだけある。


こういう時の、
『 身体が感じる感覚 』だ。

金縛り的なことは説明がつくとしても、身体が感じた重みや掌を突かれた鮮明な感覚は、いったい何だったのか?
実は、以前から、夢の中で誰かに抱き締められたり、誰かに触れたりして、人肌やその温度をはっきり感じて起きた後でも鮮明に残っていることがある。


例えば、おねしょをしてしまった時、同時に夢の中でも『 トイレに行きたいのに間に合わなくて…… 』というシチュエーションだったりすることがあると思う。

また、夢の中で鳴っている目覚まし時計を何度も何度も止めようとしてるのにまったく止まらず、現実でも枕元で目覚まし時計が鳴り響ている、とか。

暑い砂漠のようなと所にいて汗だくでたまらない夢を見て起きてみたら、暖房が効きすぎて実際に汗をかいていた、とか。

でも、それらは間違いなく、身体が実際に感じている状態とリンクするような映像を、脳の中で夢として見ているにすぎない。だから、そんなに不思議に思わない。

けれど、そういうことではなくて、わたしがたまに感じる感覚、特に触覚的なものは、現実とまったリンクしないのだ。
でも、起きた時、あるいは今回のように夢うつつの状態で、触覚としてはっきり感じて残っているものがある。

これらは一体、何に由来するのだろうか?


もともと夢は、日中に脳が受けとった情報を整理するための見るという説がある。
だから、映像的にどんなに不思議な夢を見ても、脳内で情報整理した結果なんだと理解はできる。

そもそも、わたし達人間が『 見ているもの 』は、眼球のレンズに写った物体や映像などが目の底の神経で信号に変換され、神経を伝わり脳内に送られ、そこで『 見ているもの 』として復元された脳内の映像にすぎないらしい。
だから、人に『 見えているもの 』とは、実際に目に写った映像のみならず、脳の中で補完、復元、再生されたもの。
だから、眠っていても、夢という映像を見て記憶に残るのだ。

でも、それと、肌が実際に何かを感じる、というのは違うだろう。
もしも手を叩かれたら、その叩かれた箇所が受けた刺激が脳に伝わって痛みと感じるはずだ。
だから、まず何らかの肌に対する物理的な刺激が必須なんじゃないのだろうか。


と、考えてもよくわからないけど、今のところそれで困ったりしているわけじゃない。

メタなんかがもっと発達したら、メタの世界の中で触れたものを、実際に感じることができたりするのかね?

そうしたら、生身の人間の人肌なんてなくても淋しいことなく、幸せに生きられるかもしれないよね。



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